間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第十六話 願い

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城に着くとダンジョン攻略の報告とニワトコの杖の回収に成功した事を
報告しに王様に謁見する事になった。

「おぉ、さすが勇者様だ。ダンジョンはどうであった?」
「それほどでもありませんでした。次の情報が有ればありがたいのですが…」
「それは少し休んで待ってもらえば、こちらで用意させよう。まずは食事でも
 どうかな?」
「ありがたく…」
「そうだな…それと少し隣の女性はなんと言うのかな?」
「春ですか?俺の友人なので前回連れてきても良いと言われたので…」
「おぉ、春か…構わん。少しいいかの?皇子が話がしたいと言っておってな~
 この後いいかな?」

王様の命令とあれば聞くのが普通だが、嫌な予感しかしない。

「では、俺もご一緒させてもらいましょう。春は俺の側から離すつもりは
 ないので」

はっきりと言う椎名にトキメキを感じる。

(こいつ~女泣かせだろ!俺を惚れさせてどーすんだよ。もう…)

春は心の中でこの男気のある友人に愚痴っていた。

それから案内された場所で食事を摂り、皇子の部屋へは2人で行く事になった。
その途中でリアナ皇女に会うと、話があると言われた。

「これはリアナ皇女様、話とは?」
「ここではなんなので、後で私室へ来てください。大事な話ですので…」

それだけ言うと行ってしまう。
皇子の部屋へと着くと湯浴みをしていたのかガウン姿で出迎えてきた。

「勇者様まで来るとは聞いていませんが?君、またあったね。さぁ~入ってくれ。
 勇者様は妹に用があると言っていたのでそっちの用事を済ますがいい。」

春に手を伸ばすが椎名によって遮られた。

「それは承諾しかねる。彼女は俺の大事な人だ。悪いが男と二人にするつもりはな
 い。話がないなら帰らせてもらう。春、行こう」
「おい、待てって。その女は置いてけよ!」
「それが本音か?」

勇者である椎名が怒りを露わにしたのは初めて見たかもしれない。

(椎名って怒れるんだな~)

他人事のように眺めながら椎名の後ろで春が感心していると皇子も負けじと反論して
いた。

「その女は勇者と一緒に出かけるより、安全な城にいる方が幸せなんだよ。お前の我儘
 で連れ回すな、そうだろ?こっちへ来るんだ。毎日贅沢させてやるぞ?」
「椎名いいよ。悪いけど皇子様、俺は勇者様と一緒にいるって決めてんだ。何があって
 も、離れる気はねーし、安全なところで高みの見物なんてするつもりもねーんだわ」

拳をぷるぷると振るわせると机を殴りつけた。

「その勇者も最後には狂って死ぬんだぞ?今までの伝承もそうなってきたんだ!例外は
 ない!それでもついて行くのか?勇者の糧になるなら俺が女としての幸せを教えてや
 ると言ってんだぞ?」
「勝手に幸せとか決めんなよ!俺の幸せは俺が決める!他人に口出しさせるかよっ!」
「春、格好いいよ、それ…」
「椎名にばっかり格好いいところ持っていかれたくねーしな!」
「たかが女の癖に…黙って抱かれりゃいいんだよ!」

本音がダダ漏れだった。
いきなり近くの剣を抜くと切り掛かってきた。
振り下ろす直前に避けると椎名は剣の鞘で叩きのめしていた。

「こんなのが皇子かよ~この国大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか?皇女の方はどう言うつもりで呼び出したのか気になるところ
 だが…」
「あぁ、同じようなクズなら国を出た方がいいかもな~」
「そうだな…いっそ冒険者にでもなって各地を回るか~、な?春…」
「それもいいかもな~」

そしてそのまま城を出ようとすると皇女の侍女に会ってしまった。

「皇女様がお待ちです」
「あー。行かなきゃだめかな?」
「だめです。お待ちですので」

侍女は頑なに来るように言ってきた。
仕方なくついて行くとそこは私室というより資料室というのが正しいほどの書類
の山だった。

「お待ちしておりました。兄がきっと、失礼な事をしたんでしょうね…お詫び申し
 上げますわ。わたくしからは情報を…これは伝説の剣が眠っているとされる地域
 と地図ですわ。この国を出て向かわれるのでしたらこちらを。」

そう言って渡してきたのは他国の通貨だった。
国ごとに違うのか数種類あった。
それと大雑把な地図だった。
アイテムの場所も書かれており、詳しい手書きが付け加えられている。

「すげ~こんなに詳しく。それも違う国の情報も…皇女様、ありがとな!」
「いえ。わたくしには勇者様を召喚した責務がありますので、これくらいは…」
「有り難く使わせてもらうよ」
「はい、勇者様!それと…あなたは勇者様と同郷の方ですか?」

いきなり聞かれた事に少し驚いた。
今までそんな質問はされなかったからだ。

「もし、どうしても魔王退治が無理と思ったら…逃げてくださいませ。誰も犠牲に
 してはなりません。それがどんな結果を招くとしても…絶対に逃げて下さい」
「なんかわかんねーけど、危なくなったら逃げさせてもらうよ」
「はい。」

何か大事な事を知っていそうだったが、それ以上は聞けなかった。
聞けなかったというより、皇女自身が言うのを躊躇っているように見えた。

ーなにかを犠牲にしなくてはならない状況になったのなら、どんな使命でも諦めて逃
 げる道も間違いではない、これだけは覚えておいて欲しいー

それだけを何度も言われた気がした。
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