間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第三十七話 光魔の杖

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椎名の攻撃を剣で弾くと後ろに吹き飛ばされる椎名に代わって天野の矢が
魔力を帯びて飛んでいく。

剣で弾くが、そこで爆発した。

煙を上げてその場に釘付けになるが、収まっても傷ひとつ見られなかった。

「おいおい、こいつ魔王よりは弱いんだよな?」
「そうだろうな…だが倒すまでだ」
「つーか、魔王ってどれだけ強いんだよ。俺達で戦えるのかよっ!」

椎名が走り出すのに合わせて天野も矢をつがえる。
ギルが攻撃態勢をとると足元の氷がそこだけ溶けて沈み込んだ。
そのタイミングで椎名が剣を振るう。
腕を楯にする様に剣の前に突き出すが、その腕に剣が弾かれる。

予想外に頑強な腕に剣ですら傷が入らない。次から次へと連撃を重ねるが、
ことごとく阻まれる。
すると椎名の剣を腕で受け止めたタイミングで打った天野の矢が脇を掠めた。
刺さりはしなかったが皮膚を掠め傷がついた。

「まさかっ…おい、聖女あんた暇だろ?もう一回全体回復をかけたらすぐに縁
 を通って奥の部屋が見えるだろ?そこの宝箱があるはずだから杖を取ってこ
 いよ。今のよりは効率がいいだろ?」
「な…こんな時にそんな事…」
「こんな時にだからだろ?今すぐにいくぞ!」

戦闘をしている後ろから回り込むように走り出した。
一番近くになった時に二人に回復を入れると一気に走る。
本当ならこんなに走るなんて聖女はしないのにと愚痴りたいところだが、今は
そんな事を言っている場合ではなかった。

春樹も一緒になって奥に滑り込む。
戦闘はやっぱりこっちが圧倒的に不利だった。

何か使えそうなものが入っていないのかと奥の部屋へときたのだが、そこには
金貨と杖の収まった箱が置いてあるだけだった。

布雑巾みたいな汚い毛皮が転がっていたが聖女はそれには目もくれず掴むとポイ
っと投げた。

コロンっと転がると足がぴょんと出た。

「ん?これは?」

春樹が手を伸ばすと薄汚れた毛皮がビクッと動いた。

「生きてる?」

すぐに回復をかけると春樹を見上げて小さく鳴いた

くぅ~~ん。

「ありましたわ!これですわ」

聖女が見つけ、手に取ったのは光魔の杖だった。
魔を打ち消して光をもたらす杖とされている。

春樹はその小さな毛皮を懐にしまうと何かないか漁るが使えそうな物は見当た
らなかった。
仕方なく、金貨を全部イベントリに入れると戦況を見た。

かろうじて戦えているという感じだった。

「魔を払え!」

聖女の杖が光ると一斉に光が敵を貫いていく。
椎名を吹き飛ばし、その光に耐えるギルは攻撃が止んだあとでも、HPが減った
様子はなかった。

「嘘でしょ…」
「同時に攻撃してくれ、奴が無効にできるのは片方だけだ!」

春樹の声に合わせるように椎名と天野、そして聖女の攻撃が一斉に畳み掛ける。

「くそっ…あの女ぁっ…お前は許さんぞ~!」

先に来た天野の矢を剣で吹き飛ばすと聖女の魔法を無敵で受け止めた。
その後に振り下ろされた椎名の魔力を帯びた剣が振り下ろされるとさっきみたい
に腕では受けなかった。
後退する様に初めて避けたのだ。
追撃を喰らわすと擦り傷ができていく。

「いける!」

どんどん畳み掛けるといきなりギルの足元がズルっと沈んだ。
そして一気に固まった。

「なにィッ!」

氷の下を電気がビリビリっと伝うとまともに食らってHPが減り始めた。
天野の弓が皮膚を抉るように刺さると勇者同士が呼応する様にどんどん削って
いく。

受けるので手一杯というところで、再び聖女の魔法が放たれた。
どうしても聖女の魔法は受けたくないのか無効にしていた。

「光って事は聖魔法が苦手なのか…おい、もっと…」

後ろを振り返ると聖女が魔力切れで真っ青になってしゃがみ込んでいた。

「もう、限界ですわ…」
「マジか…このままじゃ…」

まだHPは30%も残っている。
今聖女の魔法がなくなれば、苦戦する事になる。
それに回復も春樹は側まで行かないとかけれないので遠くからでは援護ができ
ない。

「くっそぉ~ほかに手はないのかっ…!」

必死に考えている間も戦況は不利になっていく。
春樹が光魔の杖を握ろうとするとバチッと音がして弾かれてしまった。

「所有者を選ぶのかよ…でも、このままじゃ…」

椎名と天野が追い込まれていく。
回復魔法は使えても聖魔法は使えない。
これは流石に聖女だからだろう。もしくはこの杖の力かもしれないが…。

大きな振動とぶつかる音がして横の壁に飛ばされて来た椎名が壁にめり込んで
いた。

「すぐ治すからなっ…」

手をかざしありったけの魔力を注ぐと一気に回復した。

「春っ…!」
「えっ…ぐっ…かはっ…」

同じく床に倒れ込んだ天野を見る前に椎名の驚くような声と顔が一瞬目に映った。

振り返る前に首を掴まれるとキリキリと締め付けられた。
春樹の身体が宙を浮き、必死にもがくが苦しくなっていくばかりだった。

「あっ…くっそ…ぅっ」
「春を離せっ…この化け物が!」
「このままへし折ってもいいんだぞ?まぁ、俺の嫁になりたいって言うなら命だ
 けは助けてやるがな、魔王様復活の供物にでもいいかもしれんな…どうしたい?」
「誰がっ…てめぇーなんかに…」
「そうか…残念だったな…」

ギルの手に力が込められた瞬間、春樹の懐から灰色の物体が飛び出してきた。
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