間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第四十二話 冷石

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ずっと登り続けること半日、やっと先が見えてきた気がする。
さっきより標高も上がって暑さも増したが上が晴れて見えるようになって
来ていた。

「俺らはあそこを目指してるんだよね~。マジでこんなところにダンジョン
 なんて作るなっつーの!」

天野は暑さに耐えきれず愚痴をこぼす。
みんなだって暑くても我慢してきたが流石に限界が近かった。

「テントで休みましょう。このまま出発は皆さん厳しそうなので」
「さんせ~」

テントを出すとそこに冷石をつけて魔力を入れると一気にクーラーが効いて
いる部屋に入ったかのように涼しくなった。

「生き返りますわ~」
「あっじぃ~、さすがにこの石のおかげだな~」
「春っ、少しは自重してっ…じゃないと、ここで襲っちゃうよ?」

春樹は服の前をはだけると中に風を入れていたが椎名に言われて服を着直した。

「椎名くんってそう言う事しちゃう人なんだ~」
「春がいいなら俺は見られても構わないよ?」
「構うわ!」

天野が茶化すように言うと椎名は平然と言って退けた。

「あのさ~この辺からだと後どのくらいかかるんだ?」
「そうですね~今のペースですと…後5時間くらいで着きますね」

春樹のちょっとした質問にメイアはちゃんと答えてくれたのだが、みんな
にとっては聴きたくなかった返事だった。

「マジかよ~、聖女様は大丈夫ですか~?女性にはきついでしょう?」
「いえ、大丈夫ですわ。わたくしも聖女としてSランク冒険者と一緒にダン
 ジョンに同行したこともありますし…」
「へ~そうなんだ~、強いのか?」
「いえ、今の勇者様達に比べたら…」

天野はSランク冒険者が気になるようだった。

「勇者じゃなければ簡単にSランク冒険者になれそうだな?天野はなりたか
 ったのか?冒険者にさ~」
「まっさか~。俺も春樹と同じく帰りたいんだよ。椎名くんはそうでは無さ
 そうだけど?」
「そんな訳ないだろ?な?椎名…」
「…あぁ」
「椎名くんはここにいた方が堂々と春樹と一緒にいられるだろう?元の世界
 に戻ったら春樹を他の誰かに取られるかも知れねーもんなぁ?」
「…」
「そんな事ねーって。俺ら仲よかったし」
「春樹はそうでも、椎名くんはどうだかな~って思っただけだよ。」

そんな話をしているうちに冷石が小さくなって弾け飛んだ。

「そろそろ休憩を終えて行くとしましょう」

メイアが言うとみんな片付けをすると自分のペンダントに冷石をはめて
出発した。

陽も暮れた頃にやっと重厚な扉の前にたどり着いた。
夜は逆に冷え込み始めてきていた。

「早く行こうぜ?」
「メイア、気をつける事はあるか?」
「いえ、ございません。先に言った通りでお願いします」
「おっけ~」

前に椎名、後ろに天野を置き、中央は春樹、聖女サラ、メイアを配置した。
聖水はたっぷりといただいたので替えはある。
まずは一個の瓶を開けると椎名の剣に聖水を纏わせ切れ味をよくさせた。

「これでよしっと。お客さんがきたぞ?」
「任せろ。春そこで見ててくれ」
「おう、行ってこい」

春樹も聖女も動きを鈍らせたりと魔法を温存しながら援護していく。
春樹は椎名の、聖女は天野の援護を担当した。
メイアは単騎で剣を振るった。

「さすが勇者の祖先だな~、筋力も並じゃねーよ!」
「確かにな…だがまだ弱いな…」

レベルは春に近いので椎名達からしたらそうなのだろう。
しかし、ここまで上げるのだって大変だろうと思う。
奥までびっしりと湧いてくるゾンビの群れに流石に疲れてきた。

倒しても、倒しても奥から出てきてキリがない。魔石が取れるので回収して
行く…が後ろからも湧いてくるので休ませてもらえなかった。

「なんとかならないのかよっ…このままじゃ…」

疲れた方が負ける…。

上からタラ~と液が垂れてくる。
列の真ん中、春樹の側に黒い影が落ちて来ると春樹の懐から白いものが飛び
出した。
天井に張り付いたゾンビに噛み付くと白い炎で焼き切った。

「フェン!ありがとな!」

春樹の横に出ると毛を逆立てて腰くらいにまで大きくなった。
さっきまで子犬程度だったのが嘘のようだった。

「なんですか!これは…」
「ん?フェンは俺らの仲間だ。な?」

わぅんっ!

真っ白な艶のある毛並みに聖女が触ろうとすると歯を抜き出しにして威嚇した。

ガルルルルルッ…。

「なっ、何ですの!しつけくらいちゃんとして欲しですわ」

本当は触りたかったと言うのを隠すと、冷たい態度を取った。

「春樹に懐いてるんだもんな~?春樹を敵対視してるとガブってやられちゃい
 そうですね~」

他人事のように言うと天野は次の弓をつがえる。
フェンが参戦して一気に前に炎を吐くと前にいたゾンビが全て燃え尽きてしま
った。
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