間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

文字の大きさ
58 / 113

第五十八話 ダイナの想い

しおりを挟む
飛び起きるようにダイナが目を覚ますと春樹はにっこりと笑って挨拶した。

「おはよう、ダイナさん。あなたに依頼したい武器の修繕があるんです」
「ふぇ?わしはもう、仕事はせん。帰れ!」
「そうはいきませんよ?他の職人さんにはもう、断られちゃったんです。」
「ん?ここがどこだか分かって言ってるのか?小僧。」
「もちろん分かってますよ。ドワーフの街、地下都市ベイルでしょう?」
「なら…わかんだろ?わしじゃなくても剣くらい誰でも打てる。ましてや
 こんな老いぼれよりよっぽど腕のたつやつがいる街だぞ?帰れ、帰れ!」

話すら聞く気はないようだった。

「椎名剣出して!」
「おぅ…」
「これを見ても修繕する気はない?」

一振りの剣を出すと、ダイナの顔付きが変わった。

「おいっ…これはどこで手に入れたんだ?」
「教えたら修繕してくれる?」
「これは流石に難しい…いや俺なら…いや、やめておこう」
「魔王が復活したと巷では噂になってます。勇者として椎名が召喚された
 のに、武器がこの状態じゃ困るでしょ?ドワーフってそんな無責任な人
 だったんですね~。勇者が負けて死ぬような事があったら誰のせいなん
 ですかね~?」

わざとらしく春樹が言うとダイナは渋い顔をした。

「分かった直してやる。ただし、アダマンタイトの鉱石を取ってこい。
 ここにゃ~道具はあるが鍛える為の鉱石がないんだ」
「分かった。それは俺達が持ってくるよ!」
「また、こいつにお目にかかる日が来るとはな~」

懐かしそうに剣を眺めていた。
それ以上は何も話してくれなかったが、引き受けてくれた事には感謝
しなくてはと思う。

アダマンタイトの鉱石はどこを探しても売ってはいなかった。

「兄ちゃん達、アダマンタイトの鉱石は岩盤の脆い鉱山にあるんだ。
 掘るのも命懸けだから誰も取りに行かねーんだよ。しかも、今では
 扱えるのが限られた職人だけで、飲んだくれのダイナくらいじゃね
 ーかな~?」
「ダイナさんってそんなにすごい職人なんですか?」
「あぁ、なんでも昔の勇者様の剣を打ったのがダイナの親父さんなん
 だよ。魔王討伐が成功して一躍騒がれたほどだ。だがそのあと岩盤
 事故でな~、帰って来なかったんだ。」
「どうしてそんな…」
「なんでも勇者様の剣がボロボロになったとかで修繕しようと素材を
 取りに行ったって話だ。もう、それを直せるのはその息子のダイナ
 くらいなもんさ。他の職人はアダマンタイト鉱石なんてあぶねーも
 んは使わねーからな。取ってくるのも命懸けだが、加工もそれ以上
 に難しいんだ…」

地盤が脆いと言われる鉱山へと行くと確かに通っているだけでもぽろ
ぽろと砂が崩れて来ていた。

「生き埋めになったら洒落にならないぞ?」
「椎名は~俺と一緒に生き埋めになったらどうする?」
「えっ…それは…/////」
「今、やらしい事考えただろ?」

真っ赤になって否定する椎名の耳元で春樹がボソッと囁いた。

『俺はいいよ。椎名と一緒なら…いっそ繋がったまま死ねたらいいのに』

悪戯っぽい顔で言うと椎名が動揺するのが分かる。
この世界へ来てから動揺してばかりな気がする。
あんなに冷静な椎名がここまで取り乱すのは面白い。

そしてベッドの上での獣じみた顔も春樹を本気にさせた。

「早くとって帰ろうぜ?今日は寝かせてやらないからさっ…」
「そ、それは…」

春樹の魔法で坑道の中を一瞬で凍らせてしまった。
奥まで行くと堀りかけの道具と滑落した跡が見受けられた。
それ以降は掘られていないようだった。

「でも、これからどーするんだ?」
「そんなの決まってるだろ?掘るんだよ。こうやってな!」

春樹は覚醒してから魔法の操作が楽になった気がする。
今ならなんでも出来ると確信していた。

岩盤を頑固な氷漬けにしたと思うと前にある氷ごとイベントリへ入れて砂
や岩を元に戻してまた行先を固める。
その中の鉱石は全てイベントリに収納され、ガッポガッポと掘り進めてい
けるのだった。

道具要らずの魔法とイベントリの活用だった。
魔法の熟練度がどんどん上がっていく。
スキル擬態も覚えたようだった。

「なんか…本当にチートって感じの使い方だよな~」
「生き埋めのリスクを回避してるんだから、いいだろう?それともここで
 生き埋めになったら今夜の約束は反故って事でいいのか?」

ベッドでの事情を言うと椎名はすぐに首を横に振った。

「アダマンタイト鉱石はなかなかないんだな~、もっと奥へ行くか!」

掘り進めること1時間。やっと数個のアダマンタイト鉱石を手に入れた。
二人は満足するとダイナの元へと行った。

「おい、嘘だろ…どーやってこんなに早く掘って来れんだよ!」
「それは秘密です。でも、これで修繕してくれるんでしょう?」
「あぁ、わかった。6日間くれ。それまでにしっかり鍛えておいてやる」

ダイナはやる気を出すと工房にひさしぶりに火が灯った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...