間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

文字の大きさ
62 / 113

第六十二話 勇者の資格

しおりを挟む
聖女を睨みつけると威嚇した。
椎名にとっては聖女は敵判定なのだろう。

「待って下さい、春さんを回復しなかったのではなく、出来なかったのです。あ
 の時、その場にいた人全員にかけたヒールが彼だけ弾かれて効かなかったので
 す。言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、本当にヒールをかけたんです」

必死に訴えるが椎名は聞こうともしなかった。

それどころか剣を抜くと聖女の首に当てた。

「このまま切り殺されたいか?それとも今すぐ消えるかどっちか選べ」
「それは…」
「聖女様。今は引きましょう。明日また来ればいいんです」

聖女の腕を引くと天野が離れさせた。
椎名は本気で殺す気でいたが、天野に免じて鞘を納めた。

「その不愉快な顔を二度と見せるな!」
「手厳しいな~。でも、俺は椎名くんの手伝いをしたいんだ。春樹は俺にとっても
 大事な友人なんだ。手伝わせてほしい…明日また来るから…」

そういうと帰っていった。
椎名は壊れかけた部屋へ戻ると家具の中から自分の荷物を取り出そうとして溢れて
来た荷物に尻餅をついた。
いっぱいに詰め込まれたお金やアイテムは春樹がイベントリに入れていたモノだっ
ったのだ。

「どうしてこんなところに…?俺の為にか?なら、どうして…襲撃を知っていたん
 だ?春…お前に会いたいよ…」

居なくなってしまった温もりを探すように手を伸ばすが空を切って何も掴めはしな
かった。

椎名はその日のうちに壊れかけの宿を出て街外れのボロ屋へと来ていた。
そこは剣を鍛え直しているダイナの家だった。

「お前か…まだ時間がかかるぞ?」
「あぁ、その間ここで待たせてもらう」
「…そうか…」
「…」
「昨日は外が騒がしかったが何かあったのか?」
「…魔王がきた…街の1/3が倒壊したかな…」
「大変だな~…ん?」

手を止めるとダイナが振り返った。
そして外へと走り出すと久しぶりに街を見下ろした。
すると至る所が倒壊しており、何者かの襲撃にあったというのを信じる気になった。

「魔王が襲撃してきたってぇ~のか?」
「そうだ…だから早く修理してほしい」
「おめぇ~勇者だったのか…」
「今は称号を剥奪されたが…そんな事はどうでもいい。春を助けないと…」

椎名にとっては一刻も早く春樹を取り戻す事が最優先だった。
それまで気にしていなかった事だったが、魔王への怒りを露わにするといつの間にか
勇者としての称号が戻っていたのだった。

武器さえ手に入ればすぐにでも奴のところへと乗り込んでやると息巻いているのを
眺めて、ため息を零した。

「もう一人の兄ちゃんはどうした?」
「…!」
「今日はいね~のか?」
「魔王の奴が連れて行ったんだ…ひと月だけ待ってやるから…強くなってかかって来
 いと…言われなくたって行ってやる…」
「仲間も無しで行く気なのか?信頼できる仲間は大事だぞ?」
「俺には関係ない!足を引っ張るような奴らは仲間とは言えない!ましてやあいつを
 見殺しにした奴らなんか…」
「他にも事情がありそうだな…まぁ~出来上がるまでゆっくりと考えるがええ」

そういうとダイナはそれ以上の詮索をしなかった。

勝手にダイナ家を使わせてもらって寝起きをすると、昨日会いに来ると言っていた
天野が来る事はなかった。



聖女の興奮を少しでも、落ち着かせる様に椎名から離れるとまずは宿屋へと泊まり
落ち着かせる。

「少しは落ち着いた?」
「…えぇ。ですが…勇者様にあそこまで敵意を向けられると…さすがに…」
「それは…仕方ないよ。聖女様にはわからないかな~?俺も大事な幼馴染が王宮の
 奴等に陵辱されたと聞いた時怒りで狂いそうになったよ。勝手に召喚しておいて
 勇者じゃなければ何をしてもいいと思ってる奴らを皆殺しにしてやろうって。で
 も、その前に…自ら命を絶ったあいつを考えると…自分すら許せなかった。」
「天野様…貴方のせいじゃありませんわ…」
「でもね、思うんだよ。椎名くんはきっと今、自分をも許せないんじゃないかって」
「…」
「きっとね、勇者って俺と椎名くん以外にも、もう一人いるんだっけ?」
「はい、そのように聞いています。」
「なら、力を合わせれば魔王討伐だって夢じゃないよね?今は早く春樹を取り戻す事
 を優先してやらないと、きっと椎名くんは壊れてしまうよ。」

天野は自分の過去にやってきた行為を思い出しながら語り始めた。
今まで何十、何千と人を殺し続けた理由。そしてただ自分への八つ当たりと、気づい
てあげられなかった事へと贖罪を込めて聖女の前で懺悔した。

「もう後悔して反省したのです。わたくしはもう、自分をも許していい頃だと思いま
 すよ。聖女の命にかけて天はお許しになっていると…」

天野をぎゅっと抱きしめるとそっと背中をさすってやる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...