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第六十四話 怒りと再会
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崖の上にのぼり切ると絶景が広がっていた。
上から眺める景色は本当に美しかった。
あの騒ぎで倒壊した家屋がなければ、素晴らしい景色だろう。
その景色を一望できる場所に建っているのがオンボロ小屋だった。
ここまで外観を裏切らない内装もなかなかないだろう。
「すいませーん?誰かいますか?」
声をかけても誰の返事もなかったのでドアに手をかけると鍵が開いていた。
「不用心だな?」
「そうですわね。誰かいらっしゃいませんか?」
「誰もいないのか?」
中を開けると蜘蛛の巣が至るところにできていて、人が住んでいるのかさえ怪
しく感じた。
武器を作る環境ですらない。
中はのぬけのからでほこりをかぶっていた。
「マジか…また振り出しかぁ~?」
椎名もここに居たらいいなという淡い期待を込めてきたのだが、それは期待薄
だった。
帰ろうとすると、奥の方で物音がした。
静かに近づくと奥に降りていく階段が見える。
そこにはほこりはなく、今も使われているようだった。
「いっそ、降りてみるか…」
「大丈夫ですの?家主の許可もなく…」
「ダメだったら謝るって」
天野は笑いながら階段を降り始めた。
降り始めてから数分。だいぶんと下まできた気がする。
そこは鍾乳洞をくり抜いて作られた自然の要塞だった。
反響する空間に鉄を打つ音が響いてきていた。
「ここで合ってるみたいだな…」
「そうですわね」
奥へと続く空間を進むとひとりの髭もじゃの男が一心不乱に剣を打っていた。
それも見覚えのあるものだった。
椎名が手にしていた武器だ。
ゲームとかにも出てくるエクスカリバー。
伝説級の武器だった。
「やっぱりここに彼もいるんだな…」
あたりを見回しても椎名の姿はなかった。
声をかけようにもあまりにピリピリした空気に話しかける事も出来ずに暫く
見ている事にしたのだった。
流石に3時間も同じ作業を見続けると飽きてくる。
「ちょっと外の空気を吸ってくるわ」
「わたくしも行きますわ。」
外に出ると、ちょうど帰ってきた椎名と出くわした。
「椎名くん…よかった~探してたんだよ…」
「なぜここに来た?殺されたいのか?それとも俺を殺すか?」
「違う、話し合いに来たんだ。この前の事は誤解なんだ。聖女様も、悪気が
あってやった訳じゃないんだよ!」
「あぁ、そういえばわざわざヒールで刺客を回復させて殺させようとしたん
だったか?」
「違います。わたくしがしたかったのは…天野様に言われて部屋の中の人間
全員にヒールをかけただけですわ。」
「あいつだけは除外してか?また俺の大事な者を死なせる為か?」
椎名は春樹の事を言っている。
目の前で死んでいくのを目の当たりにしてあれほど酷い事はなかったと思って
いるのだろう。
でも、今回だけは違う。
「回復が効かなかったんだ。彼は特別なんじゃないのか?何かが違っているん
じゃないのか?魔王と呼ばれた奴に何で生きたまま連れて行かれたんだ?本
当は何かあるんじゃないのか?」
「…」
黙ったままの椎名は拳を握りしめならが震えているのがわかる。
「黙れ…お前らに何が分かるんだ…いきなり襲って来られて…手も足もでなくて
反撃する前に全てが壊れて行って…目の前にいたはずのあいつが…」
「行くのか?」
「剣が直ったらすぐにでも助けに行く。」
「俺たちも手伝うよ。春樹は俺にとって友人なんだ」
「…足手まといはいらない。特にその女は信用できないからな…春を殺すかも…」
「そんな事は…信じて下さい。」
椎名はそのまま何も言わず、ボロ家へと入って行った。
下へと降りていくと食事を広げてさっきまで一心不乱に槌を打っていた職人に
呼びかけた。
「もう、そんな時間か…もうすぐで完成じゃ。明日にはできるぞ」
「分かりました。お代はこれでいいか?」
麻袋には金貨が詰まっていた。
「おいおい、こんなには要らんよ。素材もお前さん達が取ってきた奴だしな。
他にもいっぱい鉱石を頂いちまったし。」
「それは、春が…」
言いかけたが途中でやめた。
「分かった、ならこれを置いていく。それくらいは受け取ってくれ」
大量の鉱石を持ってきた荷物から取り出した。
部屋に置いて置いたのを回収してきたのだった。
金貨は鞄にしまうとそれ以外に魔物などからとれた素材も含め取り出した。
「こんなにもっ!お前さんは一体どんだけ強いんだ?」
「ここに来るまでに出くわした魔物のやつだ。そんなに苦労はしてない」
「それにしても群れで生息してる奴らばかりで、この量となると凄い値打ちが
あるんじゃが…金貨以上の価値じゃわい。全く、融通が効かんのう」
「俺には必要ないものだからな」
「そうか、なら貰っておくとするか。またこの街へ寄った時はワシに会いに来
いよ、凄いもん作って待っとるわい。もう一人の坊主も連れてこいよ!」
「あぁ、勿論だ。あいつは俺が生きる理由だからな…」
その話を聞いていた天野と聖女はそのまま宿へと戻って行ったのだった。
上から眺める景色は本当に美しかった。
あの騒ぎで倒壊した家屋がなければ、素晴らしい景色だろう。
その景色を一望できる場所に建っているのがオンボロ小屋だった。
ここまで外観を裏切らない内装もなかなかないだろう。
「すいませーん?誰かいますか?」
声をかけても誰の返事もなかったのでドアに手をかけると鍵が開いていた。
「不用心だな?」
「そうですわね。誰かいらっしゃいませんか?」
「誰もいないのか?」
中を開けると蜘蛛の巣が至るところにできていて、人が住んでいるのかさえ怪
しく感じた。
武器を作る環境ですらない。
中はのぬけのからでほこりをかぶっていた。
「マジか…また振り出しかぁ~?」
椎名もここに居たらいいなという淡い期待を込めてきたのだが、それは期待薄
だった。
帰ろうとすると、奥の方で物音がした。
静かに近づくと奥に降りていく階段が見える。
そこにはほこりはなく、今も使われているようだった。
「いっそ、降りてみるか…」
「大丈夫ですの?家主の許可もなく…」
「ダメだったら謝るって」
天野は笑いながら階段を降り始めた。
降り始めてから数分。だいぶんと下まできた気がする。
そこは鍾乳洞をくり抜いて作られた自然の要塞だった。
反響する空間に鉄を打つ音が響いてきていた。
「ここで合ってるみたいだな…」
「そうですわね」
奥へと続く空間を進むとひとりの髭もじゃの男が一心不乱に剣を打っていた。
それも見覚えのあるものだった。
椎名が手にしていた武器だ。
ゲームとかにも出てくるエクスカリバー。
伝説級の武器だった。
「やっぱりここに彼もいるんだな…」
あたりを見回しても椎名の姿はなかった。
声をかけようにもあまりにピリピリした空気に話しかける事も出来ずに暫く
見ている事にしたのだった。
流石に3時間も同じ作業を見続けると飽きてくる。
「ちょっと外の空気を吸ってくるわ」
「わたくしも行きますわ。」
外に出ると、ちょうど帰ってきた椎名と出くわした。
「椎名くん…よかった~探してたんだよ…」
「なぜここに来た?殺されたいのか?それとも俺を殺すか?」
「違う、話し合いに来たんだ。この前の事は誤解なんだ。聖女様も、悪気が
あってやった訳じゃないんだよ!」
「あぁ、そういえばわざわざヒールで刺客を回復させて殺させようとしたん
だったか?」
「違います。わたくしがしたかったのは…天野様に言われて部屋の中の人間
全員にヒールをかけただけですわ。」
「あいつだけは除外してか?また俺の大事な者を死なせる為か?」
椎名は春樹の事を言っている。
目の前で死んでいくのを目の当たりにしてあれほど酷い事はなかったと思って
いるのだろう。
でも、今回だけは違う。
「回復が効かなかったんだ。彼は特別なんじゃないのか?何かが違っているん
じゃないのか?魔王と呼ばれた奴に何で生きたまま連れて行かれたんだ?本
当は何かあるんじゃないのか?」
「…」
黙ったままの椎名は拳を握りしめならが震えているのがわかる。
「黙れ…お前らに何が分かるんだ…いきなり襲って来られて…手も足もでなくて
反撃する前に全てが壊れて行って…目の前にいたはずのあいつが…」
「行くのか?」
「剣が直ったらすぐにでも助けに行く。」
「俺たちも手伝うよ。春樹は俺にとって友人なんだ」
「…足手まといはいらない。特にその女は信用できないからな…春を殺すかも…」
「そんな事は…信じて下さい。」
椎名はそのまま何も言わず、ボロ家へと入って行った。
下へと降りていくと食事を広げてさっきまで一心不乱に槌を打っていた職人に
呼びかけた。
「もう、そんな時間か…もうすぐで完成じゃ。明日にはできるぞ」
「分かりました。お代はこれでいいか?」
麻袋には金貨が詰まっていた。
「おいおい、こんなには要らんよ。素材もお前さん達が取ってきた奴だしな。
他にもいっぱい鉱石を頂いちまったし。」
「それは、春が…」
言いかけたが途中でやめた。
「分かった、ならこれを置いていく。それくらいは受け取ってくれ」
大量の鉱石を持ってきた荷物から取り出した。
部屋に置いて置いたのを回収してきたのだった。
金貨は鞄にしまうとそれ以外に魔物などからとれた素材も含め取り出した。
「こんなにもっ!お前さんは一体どんだけ強いんだ?」
「ここに来るまでに出くわした魔物のやつだ。そんなに苦労はしてない」
「それにしても群れで生息してる奴らばかりで、この量となると凄い値打ちが
あるんじゃが…金貨以上の価値じゃわい。全く、融通が効かんのう」
「俺には必要ないものだからな」
「そうか、なら貰っておくとするか。またこの街へ寄った時はワシに会いに来
いよ、凄いもん作って待っとるわい。もう一人の坊主も連れてこいよ!」
「あぁ、勿論だ。あいつは俺が生きる理由だからな…」
その話を聞いていた天野と聖女はそのまま宿へと戻って行ったのだった。
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