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第七十五話 宝物庫のお宝

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この男がこの世界に呼ばれた事から始まり…
その時ちょうど好きな女に告白していた事。
そして、一緒に来た時にその女を連れて行かれて、今も会えていない事を詳
しく話し出した。

「それで、彼女はどうなったんだ?」
「あぁ、首だけになってさらされてたって訳だ。この世界の人間ってのは
 どーにも度し難い連中ばっかりでな…だから国ごと潰してやったんだよ。
 そしたら、国の宝物庫にだな…おっと、またわいてきやがった」

兵士達がわらわらと集まって出て来る。

「手を貸そうか?」
「おい、嬢ちゃんに何が出来るんだ?」
「そうだな…このくらいしかできないけど…役には立つだろう?」

春樹が手を地面にかざすと下から槍が無数に構築されて宙に浮いている。
そして次の瞬間、前に出てきて構えている兵士に向かった一斉に飛んでいく。

命中しても止まることを知らず、壁へと突き刺さっていく。

土煙を上げて兵士を貫き壁へと刺さった無数の槍に男は目を見張った。

「おいおい、嬢ちゃんそれは…すげーな!魔法って訳かい?」
「まぁ~そんなところだ。」
「ますます気に入った。俺の女にしたくなった」
「無礼な!このお方に触れる事は私が許しません!」

ララが身構えると、男は盛大に笑った。

「あんた良いとこの貴族かなんかか?桁違いの強さだ、度胸はあるしで最高
 だぜ。」
「ふんっ、ララ大丈夫だから、落ち着いて」
「ハル様…このような人間にハル様を穢させる訳にはいきません。見るのも
 穢らわしい…」

ララの言い方がだんだんと口が悪くなっていく。
よっぽど気に入らないのだろう。
舐めるようにハルを見る男を睨みつけるようにずっと警戒している。

「その護衛のねーちゃんはいつまで殺気を出してるつもりだ?」
「その薄汚い視線をハル様に向け続ける限りです」
「ふ~ん、ハルちゃんね~。可愛い名前じゃん?」
「先へ行くんだろう?」
「あぁ、そうだな…」

男はどんどん城の奥へと降りていく。

「宝物庫に何があるんだ?」
「ん~?お宝だよ…お、た、か、ら…ひひひっ」

下卑た笑いを浮かべながら先を進んでいく。
広い広間に出ると紅い絨毯が奥へと続いている。
まるで謁見の間の様な作りに見えた。
先には豪華な衣装に身を包んだ髭の老人が座っている。
その周りを頭が堅そうな年配の男達が取り囲んでいた。

「何者だ!」
「おぉ~これは王様であられますかー?」
「何やつだ!誰がここまで入れたんだ!」
「おい、兵を呼べ!すぐにだ!」

慌ただしく叫ぶが誰も駆けつける事はない。
門をくぐって入り口にたどり着く前に何十人という兵士が死体となって転が
っているからだ。
いくら呼んでも、来られる生きた兵士はもう居ないのだろう。

「おい、どーなっているんだ?兵はどうした?」
「分からん、なぜ来ない。こっちが聞きたいくらいだ。おい、大臣、お前呼
 んで来い」

喧嘩する様に年配の男達は見苦しく責任を押し付けあっている。

「おいおい、あんた達いいのか?俺はそっちの王様に話があるんだぞ~?」
「無礼者!頭を下げんか!王の御前だぞ!」

大臣と言われた男が声を荒げると侵入者の男は笑いながら大臣の首を一瞬で
跳ねて見せた。

一瞬の事に誰も見えていなかったのだろう。
首が転がり足元へ来るまで誰も声を発っせなかった。大臣の身体がぐらりと
倒れ血飛沫が上がってからやっと、悲鳴があがった。

「な、な、な、貴様なにを…」
「だーかーらー、邪魔をするとこうなるってみせしめ?ってやつだ。そうそ
 う、俺を怒らせるとこうなっちゃうよ~、ねーおうさま~」

足をガタガタと震えさせると椅子の間から水が滴り出てきていた。

「お漏らしでもしちゃったかな~?恥ずかしい奴だな~」
「な、なにをしに来たんだ…なんでも叶えてやる。早く言うがいい」

声が上ずっている。
よっぽど恐れているのだろう。

「宝物庫に欲しいものがあるんだよね~ちょーだい!」
「ほ、宝物庫だと…いかん!それは…ヒィッ!!」

一瞬断ると、大臣の頭部を男はなんの躊躇いもなく踏み潰した。

グチャッというひしゃける音がして骨と中身が一瞬にして飛び出してきて
いた。
その飛び出した中に目玉の部分が王様の足元へと転がって悲鳴を上げて震
えていた。

流石にここまですれば、恐怖に感じるだろう。
春樹はただ眺めるようにみていると、そのあと宝物庫へと王様自ら案内し 
ていた。

「おい、女ついて来いよ~」

その男は春樹を振り返ると笑い手招きしてきたのだった。


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