間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第七十八話 ボスに挑む少女

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最近宿屋に泊まる度に春樹の夢を見る事が多くなった。
椎名は朝起きる度に消失感に苛まれていた。


「おはよう。椎名くん?あれ、なんか顔色悪くね?」
「煩い…」
「まさか溜まってるとか?」
「黙れ!」

最近では聖女と上手くいっている天野がわざとらしく煽ってくる事が多々あった。
隣の部屋から聞こえてくるイチャついた声に苛立ちが募っているのも事実だった。

あの日の引き締まったボディに柔らかい触感の臀部。
触ると嬉しそうに震えて見上げてくる目がたまらなく愛おしかった。
本物の春樹を男でもある姿で抱いた時ほど感動した時はなかった。
ずっと好きだった彼が自分の腕の中で喜び震える姿を見る事になるなんて思いもし
なかったからだ。

同じ気持ちだと言われた時は舞い上がるような気持ちだった。
ずっとこの時間が続けばいいと思っていた矢先の出来事だった。

魔王がいつのまにか復活していたという事実と、大事な人を連れて行かれてしまった
という現実だった。

ひとつき。
そう、奴は一月は待つと言った。
信じていいのかは分からないが、それまでは殺さないでおくと言ったのだ。
それまでにレベルやスキルを上げて強くなって見せる。

フェルが居なくなってしまってからもう何日が経つだろう。
いつの間にかフェルについていたスキルが椎名にも入っていた。
一定時間物理攻撃無効。
対象の攻撃無効ではなかったが、使い用によってはいいスキルだった。

そして今も新たにできたダンジョンへと向かっている。
天野と聖女と一緒にとにかく強くなる為に魔物を多く倒す必要があった。

ダンジョンに着くと早速中へと入っていく。
春樹がいた時は色々な策で手取り早く倒していけだが今は1匹ずつ普通に倒して行っ
ている。

中に進むがなかなか魔物に遭遇しなかった。

「あれ?なんか先客でもいるのかな?」
「そうだな…ここまで魔物が居ないというのも変だしな…」

奥で誰かが戦っている音がした。

大きな扉の向こうで剣が激しく当たる音がしていた。
重い扉を開けるとボスと戦闘をしているのは一人の女性だった。
がむしゃらに打ち込んでいるせいかボロボロで、それでも何度も立ち向かい投げ
飛ばされては剣を握りしめると立ち向かって行った。

両手剣を使うせいでか、生傷が絶えない。
女性の身体だが、戦闘力は見ていて強いと思えた。
スキルを駆使しているせいもあって、ボスの体力を半分以上も削っていた。
しかし、それもここまでだろう。

もうすぐ30%以下になると攻撃パターンが一気に変わる。
一気におしきれなければ、多分…。

人の戦闘に割り入っていくのは失礼かと思い、しばらく傍観する事に決めた。

戦いながらもこちらをチラチラと眺めているあたり、少し気が散っているのだ
ろうか?

こちらが手を出さないと分かったのか、集中力を溜めていく。

一気に決めるつもりか、スキルを貯めると大技を繰り出した。

気を溜めて、一気に放つと連続攻撃を打ち込む。
攻撃が全部気を発していてすごい威力だった。

が、ちょうどそこで30%以下になると、敵の咆哮をまともに喰らうと壁に
突き飛ばされていた。

「きゃっ…かはっ…」

ドサッ…。

地面に叩きつけられると、ピクリとも動かない。

「おい、いくぞ!」

椎名が言うと天野も同じことを考えていたらしく、一気に攻撃を繰り出した。
ヘイトを稼ぐと彼女からは一旦離れさせる。

ここまで戦ったのだから、最後までとどめを刺させてやりたいが、ダウンして
いるんじゃ、仕方がない。

「このまま押し込むぞ!」
「分かってるっ!」

聖女が彼女を回復させに行っている間に、天野は槍に武器を変えて接近戦に入
る。
椎名と一緒に正反対の場所から同時に攻撃を繰り出す。
ヘイトはどうしても椎名に向いてしまうが、タイミングを少しずらしてやれば、
交互にヘイトが来て、攻撃をして少し離れて、また攻撃に入る。
それを繰り返していくとやってボスが倒れたのだった。

起きてきた女性に聖女が声をかけるとびっくりして周りを見回した。

「ボスは!ボスはどこ?」
「ごめんなさい。あなたが危なそうだったのでこちらで倒させてもらったわ」
「そ…そうですか…こちらこそありがとう。」
「大丈夫そうか?」

椎名が近づいて来て聞くと、彼女は頷いた。

「ありがとう。私はカエデ、この地に召喚された勇者なんだけど…いつも上手く
 戦えなくて…お兄さん達は私でも苦戦してたのに、すごいね~」
「俺たちも勇者の称号を持ってるからな~」

天野が答えるとステータスを見せた。

「わー。すごい!レベルも上限超えてる!これってどうやったらこの制限を突破
 できるんですか?」

気軽に聞いてくるカエデという女性に、天野も、椎名も口をつぐんだ。

「貴方には耐えられるかしら?同じ仲間を目の前で犠牲にしたらレベル上限が取
 れてもっと強くなれると聞いたらどう?それでもしたいって思いますの?」

聖女が言った事は真実だった。
唯一間違っていると言えば、異世界人を犠牲にすると言う点だった。

「それは…私には無理かな。それならレベルはそのままでいいや。ある人にスキル
 の大切さを教わったんだ。だからスキルをアップさせていけば、きっと強くなる
 って信じてるんだ」

前向きに捉えるとしっかりとした女性だった。
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