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第八十一話 カエデのスタイル

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勇者パーティーはカエデを加えて4人になった。
天野は槍も使おうと色々とく苦戦していた。

「天野さんってさ~弓のが得意なんでしょう?なんで槍も持つんですか?」

カエデは素朴な疑問を持った。
天野の槍術は初心者に毛が生えたものだったからだ。
弓にはちゃんと魔力を通した攻撃ができるのに、槍を持つと極端に攻撃力が
下がるのだ。

「得意な方を伸ばすべきでしょう?」
「それでも矢がなくなったら俺はさ~」

天野が愚痴るように言うが、カエデには理解できなかった。

「スキルで補いえないの?例えばさ~矢も魔力で作れない訳?そうすれば付与
 も可能なんじゃないの?」
「え…っ!」

考えた事もなかった。
天野はスキルと言っても命中をあげるスキルや、連射を可能にするものしか知
らない。
確かに試す価値はありそうだった。

天野にとっては弓のがしっくりくるので、近距離などしたくはないのが本音だ。

「それに、天野さんってさ防御力少なくない?」
「なっ…」
「それはわたくしがすぐに回復させますので、心配入りませんわ」
「それって甘えだよね?」

回復をもらう事のなかったカエデにとって防御力は大事な事だったのだ。
天野に聖女が付き従うように、自分が回復をかけるから必要ないと言うのには
納得行かなかった。

「それって、回復がかけれない状態になったらどうするんですか?」
「そんな事はなりませんわ。わたくしの回復は部屋全体にかける事だって容易
 ですわ」
「自慢するのもいいんだけどさ~、それは聖女である貴方が生きてるという
 過程で成り立っている事で、回復が最初に狙われて瀕死だったらどーする
 んですか?」

カエデの質問は的をいていた。
聖女が先に殺されるなどなった時に、そう崩れではないかと言われれば、その
通りだ。

「だろうな…」

椎名は頷くとカエデの意見に同意した。

「ですよね?回復は自分でもできるようになっておかないと後で後悔します
 よ。それに回復スキルなら自力で取れますよ?」

カエデが言っているのは自動ヒーリングの事だった。
ダメージを負うと、ゆっくりだが自動で治って行く効果だった。
ポーションで回復するのとは違ってゆっくりだが、避け続けれれば治って行
くので便利な機能だった。

椎名には武器に付いた自動回復があるので困りはしない。
カエデにはパッシブスキルに自動回復がある。

これは村のクエストをこなしていた時に偶然身につけたものだった。
『瀕死で15分間逃げ続ける』ということができれば自動的に勇者であれば、
パッシブスキルとして獲得できるものだった。

「マジか!そんな事でいいのかよ!」
「でも、貴方はそれすらやってないでしょ?」
「おっ、俺もそれ取れてるな…」

椎名が自分のパッシブスキルを見るとしっかり入っていた。
ないのは聖女天野だけだった。

殆どが椎名がタゲを取っているので瀕死の状態で15分も逃げ回る事などなか
った。
逃げる前にタゲが変わり、回復をかけてもらっていたからだ。

しかし、今はパッシブスキルに興味が出てきた。

「次のダンジョンボス一人でやらせてくれ!」

と頼んだのだった。
天野が一人で魔物と戦うのは久しぶりだった気がする。

ゴブリン相手なら遠くからヒットさせて、近づかせる前に全部倒し終わって
いるくらいだが、ボスとなると話が違う。

限られた空間で、しかもタゲも持ったままとなるとどうしても距離を詰めら
れる。
もちろん近距離の職業ならそれでもいい。
が、天野は違う。
椎名やカエデからアドバイスを貰いながらも、ボス部屋まで行くと一人で中
へと入った。カエデからはあらかじめ、槍は持って入るなと言われた。

「なんでだよ~。近づかれたら仕方ねーじゃん?」
「上手く使えないなら、持ってても無駄だと思いますよ?槍のスキル何か持っ
 てるんですか?」
「それは…これから…」
「弓を中心に使っていたのだから、それに特化させるべきです。それに近づく
 のが怖いなら、尚更じゃないですか?」
「…」

カエデに言われて自覚する。
確かに椎名と一緒にいても前へ出る勇気はない。
チャンスだと思っても、一歩引いてしまうし、椎名のように飛び込んでいく
勇気もない。

カエデもチャンスと思えば、危険を顧みず飛び込んでいく事ができるが、天野
にはそれがない。

多分それは、度胸というか経験なのだろう。
武器の特性上近づかなきゃいけないと思っているので、チャンスを逃さず行け
るのかもしれない。

しかし、天野にはそれはない。
遠距離で攻撃できて、威力もそんなに落ちる事がないので、危険を冒してまで
前に出る必要がないので余計に引いた場所で攻撃をしてしまうのだ。
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