間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

文字の大きさ
95 / 113

第九十五話 惨殺された街

しおりを挟む
勇者達一行はそのまま魔王領に入っていた。

村や町には人間はほとんどいなかった。
なので、ほぼ野宿で過ごすしかない。

「はぁ~、急がないと食料が底をつくな~」
「でも、俺達は略奪なんかするわけにはいかないしな~」
「多分してもいいが…称号が消えるかもな?」
「「!?」」

そこに驚いたのは天野とカエデだった。

「称号が消えるってどういう事ですか!」

カエデには意味がわからずにいた。
椎名は一度、勇者という称号が消えたことがある。
それを説明すると、納得したように頷くと諦めるしかない事を知る。

「でもさ~それって勇者である、私達だけだよね?」
「そうだな…それ以外に誰がいるんだ…あ!」

視線が聖女へと向くと、聖女は食べていたものを一気に飲み込んだ。

「ま、まさか、わたくしに聖女として恥じる行為をやれというのですか!」
「見殺しにしても称号は取れなかっただろ?」

椎名に言われると、何も返せなかった。

「それに人を雇ってレイプさせたり、そういえば何度したんだったか?」

椎名の悪意ある言葉に黙ると、天野の前でこれ以上言うなとでも言いたそうに
していた。

「やるのか?やらないのか?どっちだ?」
「ちょっと、椎名くん。聖女様をあまり責めないでくれよっ!」
「いいですわ。わたくしがやりますわ。」
「聖女様って以外に、真っ黒なんだね~」

カエデからしてみれば初めての話で笑ってしまった。

次の街で決行しようという事になり、その日はしっかりと眠りについた。

聖女自身、この旅についていくと心に決めた時点でもう後戻りはできないと覚悟
を決めていた。
こんな事くらいで、音を上げたりなんかしない。

朝早くに霧が出始めた。
門へと一人で行くと、まだ締まったまま閉ざされていた。

街は鎮まり返っていて、誰もいないようだった。

この街はある程度大きく、物資の流通もあるだろうと見込んだのだが、そうでは
ないのだろうか?

朝早くから動く者はいないみたいだ。

こっそりと裏口の木戸を開けるとこっそりと魔法でカンヌキを開けると中へと入る。

そして門の内側の惨劇を見て声を失った。
門番の詰所は血塗れで、乾き始めていた。
家の中も、そしてそこは人間達の牧場のような街だった。
大きな倉庫は人間達の死体が固まって放置されていた。

慌てると魔法を空に打ち上げた。

緊急信号。
すぐに森の茂みで見ていた勇者達に呼びかけるものだ。

「さっき入ったばかりですぐに見つかるとは鈍臭いな」
「仕方ないよ~女の子だもん」

椎名の言葉にカエデがフォローする。

急いで駆けつけるとみんな唖然となった。
魔族も人も誰もが殺されていたのだ。
しかも剣で切られたのではない。
魔法で一気に引き裂かれたと言うのが正しいだろう。

ここまで酷い事をするのは誰なのだろうと考えさせられた。

そもそもこの街は魔族の街ではあるのだが、人身売買が行われていたらしい。
人間達は逃げ惑う前に一気に仕留められ、魔族達に至っては集められてそこで
やられていた。

逃げる様子もなく、殺されているのだ。
まさに顔見知りに呼ばれて、行ったら殺されたという感じだった。

「なんかおかしすぎるよ。これさ~誰かが暴れたにしても反撃さえしてないん
 だもん。」
「そう…だな。」
「まるで…死んでくれって言われて、死んだみたいですね…」
「そんな事できるのか?しかも魔族にだぞ?」

誰もが分かってはいるのだ。
それができるのは魔王自身だろうと。

そんな事をする理由も何もないはずなのに…だ。

「魔王って、悪い人なのかな?」
「何を今更?」
「だってさーこれって倒しに来いっていてるようなもんじゃん?」
「だからそうだって…わざわざ春樹を攫ってまで…たしかに、なんでこんな事」

分からない事だらけだった。

そして椎名の中には信じたくない仮説が一つ思い浮かんでいた。
信じたくないし、こんな馬鹿な事があってたまるかと思っているのだが、どう
しても考えずにはいられない。

春樹を攫った理由。
魔族をことごとく惨殺する理由。
そして、魔王城までの最短ルートが安全過ぎる事。

まるで魔物が一斉に移動して別の場所にでも向かっているかのように静か過ぎるのだ。

「椎名くんはどう思う?」
「あぁ…どうかな…」

頭から離れない。一つの仮定。
春樹に限ってそんな事は…ない。

整理はできていないが、ただ生きて会えればそれでいい。
どこの世界が壊れようが、一緒に生きていく事ができればそれだけでいいと考えてしまっ
ていたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...