間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

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第百○七話 魔王の死

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現実に戻ってきたカエデが最初に見たものは、蔦に絡まりながら笑顔で笑って
いる、聖女と天野の姿だった。

蔦を切ってもすぐに絡まっていき、彼らの身体に突き刺さっていく。
これでは、切った分だけ蔦は深く潜って行く。

「埒が開かない…椎名くんは?」

大きな穴が近くに空いている。
流石に落ちたらやばい気がするので、そこは放置して城の中を見て周る事にした。
あの時、ハルという青年を鑑定したとき、樹であると鑑定では出ていた。

顔も全くの別人なのに、鑑定だけは樹なのだ。

ちゃんと生きていた?
なら、樹はどうなってしまったのか?

あの青年はカエデにスキルの使い方や色々と教えてくれたけど、もしかしたらそれは…。

今はまだ分からないけど、椎名がいないのなら、まだ死んではいないのだろう。
各部屋はがらんとしていて静かだった。

そして、わずかながら声がする部屋へ来ると、嫌なことを思い起こさせられた。
樹を犯していた奴らと同じ寒気を感じてゆっくりと部屋を伺った。

そこで行われていた事を目にした瞬間、一気に怒りが噴き出していた。
ドアを一気に開けると手近にあった剣を掴むと椎名の上に跨っていた青年に突き刺して
いた。

椎名の叫びが何を意味していたのかは知らない。
ただ、敵と判断した。
そして…この手で…。

近くには樹だった人の死体が転がっていたのだった。

「これでいいんだよね?樹…」
「ハル!!ハル!!目を覚まして…ハル…」

椎名と目が合うと青年を抱きしめながら殺意をあらわに睨みつけてきた。

「どうして?それは敵…だよね?」
「敵?敵はお前だろ?」

椎名の剣がカエデの胸に届く前に身体が透けていき、消えて無くなっていた。



ー数時間前ー

楓が蔦から逃れる前、椎名は春樹にそっくりな魔王を抱いていた。

もちろん、魔王だと思っている。
でも、心の中では目の前のこの青年が春樹だと確信を持っていた。

朝まで彼の身体を貪るように激しく抱いていた。
疲れてベッドに寝転がる頃には、魔王である青年が椎名を自らの胸に押し当てて来る。

「逃してやるよ…好きにしていい。これを持って行け」

自分の首にかけていたネックレスを手渡した。

「後で鑑定してみろ?」
「なんで…?」
「言っただろ?俺はお前が気に入ったって…」
「…」

椎名はベッドから降りると壁にかかっている剣を手の取ると近くの鳥籠の中の春樹を
眺めると一気に檻ごと真っ二つにした。

「なっ…どうして?」
「もう、どうでもいいだろ?春はここにいるんだからさ?」
「分かってたのか?」

分かってたのならなぜ?
疑問が浮かんだが、すぐに消え去った。

「春がどんな形であれ、生きてたのに嬉しくないわけないだろ?」
「でも…椎名の手で殺して欲しかっ!」

椎名に抱き寄せられると、最後まで言わせては貰えなかった。

「んっ…ふっ…んんっっっ!」

口を塞がれて乱暴に口づけをされるともっと欲しくなるし、もっと一緒にいたくなって
しまう。

お願いだから、早く殺してくれ。

願う事は誰かに殺されるくらいなら、椎名がいい。
椎名以外には殺されてなんかやらないという気持ちだった。

「ずっとここで二人で暮らしたらダメか?」
「ダメだろ?ずっと帰れないままがいいのか?人間達は全員死滅するぞ?」
「それでもいい、春樹以上に大事なものなんてないだろ?」
「どうして…お前は…」

椎名の腕の中で決心が鈍る。
まだ、このまま一緒に居たいと思ってしまうではないか…。

椎名を力を付くで押し倒すとその上に乗った。

「椎名…お前を助けさせてくれよ…向こうでまた会おう?」
「ここで死んでも…会えるのか?」
「分からない…だからこれを託したんだ…向こうではさ、俺彼女いたんだぜ?」
「…!」
「椎名がきっと振り向いてくれないって思ってたからさ…だから俺に伝えてよ
 俺の気持ちはそのまま椎名と一緒だって!きっと告る勇気もないからさ?」

涙が溢れ落ちる。
軽い口づけを交わすと、ドアが勢いよく開いてさっき椎名が立てかけて置いた剣
を掴むと侵入者はベッドの上に目がけて一直線に向かって来ていた。
そして椎名の目の前で血が飛び散っていた。

春樹の胸目がけて突き刺さると一気に引き抜いた。
椎名の身体の上に倒れ込んで行くと息も荒く魔力も弱々しくなって行く。

「ハル…嘘だろ…ハル目を覚まして…?」
「大丈夫ですか?…椎名さん?」
「どうしてこんな事を…許さない…」
「どうして?それは敵…だよね?」
「敵?敵はお前だろ?」

椎名の怒りに満ちた目が殺気を孕んだ。
剣を握るとカエデを切り付けるつもりで振り下ろしたが、透けて消えていった。

「まっ…まさか…」

椎名の身体も段々と薄くなって行く。
春樹の身体を抱きしめていたかったのに、もう触る事もできなくなって来ていた。

薄れゆく意識の中で手を伸ばすが椎名に触れる事ができない。
悲しそうに見つめる先で、椎名の姿は消えていった。
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