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第百○八話 告白

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いつしか家の中にいたのだった。
窓を開けると朝である事を知った。

ピンポーン。

「は~い」

ガチャッ…。

「おはよう!椎名あれ?制服は?今日から学校だよ?」
「春…どうして?」
「?…熱でもあるのか?」

春樹の顔が近づくとおでこにくっついてくる。

「ん~?熱はなさそうだけどな~」
「春樹…あのっ…」
「ほらっ…早く準備しなよ!」
「あぁ、そうだな…」

学校へ向かうと何もない普通の日常が待っていた。
春樹はあの強烈な出来事を覚えていないような態度だった。
あれは夢だったのか?
起きた時に首にかかっていたネックレスは向こうで春樹が渡してきたものだ。

こちらの世界では鑑定など使えない。
指でコツコツといじってみる。

するとポンッと音がしてゲーム画面みたいな表示が現れた。

 世界のカケラ
異世界を渡ってきた遺物。
願いを一回だけ叶える力を有する。
強い力で抑え込まれた力によってどんな願いをも叶える事ができる。

「なんだよ…これ…」
「椎名~ん?どうしたんだ?これ…誰かから貰ったのか?」

変わった形のネックレスに春樹は首をかしげるが、椎名は愛おしそうに
眺めるとしっかり握りしめた。

「あぁ、大事な人がくれたんだ…春、ちょっといいか?話が…」
「あっ、ごめん…ちょっと用事があったんだった…」

動揺したような顔を見せると教室を出て行ってしまう。
椎名は一瞬躊躇ったが、すぐに後を追いかけた。
いつも何かあると屋上に行く癖がある。
それを思い出すと屋上へと向かった。

「はるっ…」
「なっ…なんでくるんだよ…」
「春、聞いて欲しい事があって…」
「聞きたくない!何も聞きたくない!」

耳を塞ぐと蹲ってしまった。
そんな春樹をそっと後ろから抱きしめると震えているのに気がついた。

「ね~春樹、ちゃんと聞いて?俺は…これまでもずっと春樹が好きだった
 んだ…それとね…これをくれたのは春樹なんだよ?」
「へっ…そんなの知らない…」
「知らなくても俺は覚えてる。きっと記憶がなくても春樹が教えてくれた
 から。俺はちゃんと伝えたいんだ、俺がどれだけ春樹が好きだって事。」

いつも明るい春樹の泣き顔を向こうの世界で何度見ただろう。
いつ見ても綺麗だと思ってしまう。

口づけすると、驚いたように震わせた。

「もっとキスしたいし、その先もしたい…」
「俺は…男だし、そんな事…」
「男とか女とか関係ないだろ?俺は春樹だから好きになったし…どんな姿
 でも、どこであっても、春樹だけが好きなんだ。俺と付き合ってくれる
 か?」
「それは…っ…」

春樹の頬に触れるとビクっと震えたがゆっくりとキスをして首筋に舌を這
わせた。
向こうではよくしていたっけ…。

耳朶を甘噛みすると目を瞑って震えていた。
彼が耳が弱い事や、乳首を弄られるとすぐに勃起してしまう事は知り尽く
している。
だからこそ、ゆっくりと制服をはだけさせると初めて彼の肌に触れた。

向こうでは何度も触れた場所でも、ここでは初めてだった。

「舐めてもいい?」
「どう…して?」
「春樹のおっぱい舐めたいから?」
「えぇっ…ちょっ…まって…!!」

ペロっと舐めるとチュッチュと吸い上げた。
やっぱりこっちの春樹も感じているようだった。

「やめてっ…椎名って…」
「嫌なら突き飛ばせばいいだろ?もっと吸って欲しい?」
「やぁっ…あっ…あんっ!」

弱いところを刺激してやればすぐに甘い声を出す。
布越しに股関を触ると硬くなってきていた。

流石にここでは手を出すつもりはないのでそこで止めると服を整える。
気持ちよかったのか、途中で止められたのが不満なのか潤んだ瞳で見返
してくる。

「彼女いるんだっけ?別れてくれる?俺のになってよ…春…」

椎名の言葉に返事はせず、振り返る事もしないで出て行ってしまった。
耳まで真っ赤になった顔で走り去って行く春樹を見送りながら少し、動揺
もしていた。
本当にこれで大丈夫だったのかと。

少し性急すぎたか?
やり過ぎて、嫌われてない…よな?

悩んでも、もう遅い気がしていた。

床に落ちている生徒手帳を拾うと春樹の後を追った。
そのまま教室に戻るとは思えなかったので反対方面に行くと、何か女子と
話ている春樹を見つけた。

後ろから近づくと、気まずそうにしている春樹の腰にそっと触れると引き
寄せた。

「ひゃっ!」
「悪いんだけど、俺、春樹の事君よりずっと前から好きだから!俺に譲っ
 てくれない?」
「なっ…椎名ぁ!何言って…ちがっ、誤解だから…」
「いいんです!そういう事なんですね!わかりました!私達、別れましょ
 う!でも、ずっと見てますから。」

彼女だと思っていた女性はそのまますぐに立ち去ってしまった。
あれ?違ってたのかな?

「さっきのって…?」
「あぁ、彼女だった子だよ。いきなり何を暴露してくれてんだよ!」

怒っていると思ったら真っ赤になりながら見上げてくる春樹に今も心臓が
高鳴っていたのだった。
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