偽りの王女に奪われた世界

秋元智也

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月の塔

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そのまま押しきり2体目の衛兵を倒すと残る所、あと1体となった。
「ゼム、そろそろ回復飲んどけよ!切れた時、きついぞ?」
ゼムは今、無双状態だがHPはレッドゾーンのままだった。
無双が切れて攻撃を受ければ即死を免れない状態だ。
「ミナ。一旦代われ。回復飲んでこい」
俺は最期の1体とせめぎ会うミナへと声をかける。
後ろから攻撃をすると、そのまま横へと回り込んで片方の足へと攻撃を連続して当てていく。
そうするとどうしても俺の方へと相手をせざるを得ない状況になるとミナは一気に距離をおくと回復を飲み干し、また参戦した。その間も近くでゼムが問答無用で殴りかかっている。
どんなに攻撃されてもHPが減らない無双状態ってスゲーな・・・と感心しながら、金槌を避けると懐に飛び込む。股の下をすり抜け真後ろに行くと足を切りつける。
今は反対側にミナが回り込むと同時に切りつけているのでダメージは2倍以上でHPをぐんぐん削っている。
すると、いきなりジャンプして距離を取ると回転しながらこちらに向かってくる。
ミナと俺で左右に避けると正面のゼムが囮になる。
回転攻撃を凌ぐとゼムを覆っていた膜が点滅し出したように見えた。
「ゼムっち。そろそろ切れるよ~」
「やっぱり、あの点滅は終了のサインか!」
「そういうこと」
一旦距離を取るために壁沿いを走って逃げるのと対照的に入れ替わるように俺とミナが突進していく。
ゼムは離れてから弓に矢をつがえる。
大きく振りかぶるが地面に当たる瞬間を狙い攻撃を仕掛ける。
「こっちは初見じゃないんでね!」
左右からの両足への強攻撃で一次ダウンするとそこに追加の攻撃を叩き込む。
とうとうHPも尽きてエフェクトが弾けた。
「いや~今回は焦りましたな?」
離れたところからゼム声がしてきた。 
「ひやひやするじゃねーか。ちゃんと犠牲の指輪しておいて良かったな?」
「確かに焦りましたからな。しかし指輪がなかったらと思うとぞっとしますな?」
他人事みたいに話しているが決して他人事ではないのだ。
ここでカールを連れて来なかったことに安心を覚えた。
「これからはカールはボス戦には連れて行かない方がいいな!」
「確かに、それもそうですな。今回のような事もないとは限りませんしな」
「あ、でも巨人の洞穴にはつれていった方が楽じゃない?」
「そうだな。そこだけは連れていってもいいかも知れんな。」
そういうと先へと進んで壁沿いを調べると2ヶ所脆い壁を見つけて破壊すると宝箱があった。
中には回復と香木が入っていた。
上に続く階段を上がると細い通路が続いており、その先でジャラジャラと鎖の音が響いていた。
「そういえばこの先に待ってたねー?どうする?」
「俺だけで行けばいいんだろ?」
「いってらっしゃーい。気を付けてね」
俺、一応リーダーなんだけどなぁ~。スピード重視にステータスを振り分けている為にこういう時は真っ先に特攻するはめになるのだった。
「くっそー。覚えとけよ~」
一気に駆け抜けると途中にいた鎖をつけた囚人が追いかけてくる。そのまま次の部屋に出るとなかの囚人もこちらに気づき向かってくるがそのまま方向を変え、左に飛び込む。すると後ろから追いかけてきた囚人が床に倒れ自爆した。それに巻き込まれる形で綺麗に一掃する事が出来た。
「おーい。いいぞー」
大声で呼び押せるとミナだけが入ってきた。
「あれ?ゼムはどうした?」
「カールを迎えにいったよ」
「あぁ。そういや~いたな?」
頭をポリポリと掻いてとぼけてみる。
「一応同じパーティーなんだし?まぁ、足手まといではあるけどね~」
「って、ミナもそう思ってたんだ?」
「まぁ~ね。でも、あんなについてきたがるわけだし、何か意味があるのかなって?」
「そっちか。確かに、何かあるのかも知れないが、ここから先はまだ危険なんだけどな。鍵を取りに行きたいから下から行こうと思うんだが?」
「だよねー。・・・今のうちにある程度減らしておこうか?」
ミナの意見に賛同すると下への梯子を降りた。一気に滑り降りると犬に向かって切りかかる。
そこにあるセーブポイントで体力を回復させると近くのぽっかり空いた穴にミナは石を嵌め込む。
すると先程まで壁だったところがいきなり扉に変わる。
そこを開けて細い吊り橋を渡るとそこは黒き小人の巣窟だった。
月の女王を慕いし小人だらけの塔であった。
中に入ること横にいた黒い鎧をきた小人が話しかけてくる。
「お主らは奴の使いか?それとも我が月の王女様に仕えに来たのか?さぁ、どちらだ?」
「そうだ。お宅の王女様に仕える者だ」
俺は肯定しておいた。下手な争いは避けておくに越したことはないからだ。
「そうか。お主も王女様に仕える者か。おお。同士よ先に進むがいい。王女様は上でお待ちだ。」
機嫌良さそうに笑顔で送り出してくれた。
奥には小人の死体が山のように積み上がっていた。まるで誰かと戦った後のようだった。
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