異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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11話 探し人

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真っ暗な中で何かが動いた気がして目を覚ました瞬間誰かがいる気がした。

「リーさん?こんな夜中になぁに?」
「悪かったな?そのリーさんじゃなくて。さよならだ」

どこかで聞き覚えのある声に目を見開くと、口を塞がれると冷たい刃物が首
に当てられた。

ヒヤリと汗が吹き出る。

月明かりに照らされる様に目が合うと、顔を見て驚いたのだった。

「けい…こ…」

刃物に力を込めようとした瞬間、手が止まった。
本当に小さな呟きだったはずの声が聞こえたのだろうか?
きっと彼女は送られてきた刺客なのだろう。
だが、これは偶然だろうか?

探していた人物だったのだ。
ずっと死んだと思っていた妹の圭子。
まさか、こんな形で会えるとは思ってもいなかった。

「どうしてその名前を知っている?」
「…」
「言えっ!今すぐに言えッ!」
「生きていたんだ…良かった…」

ただ嬉しくて涙が出てくるといきなりドアが開いて、リーさんが入ってきた。
凄い形相で圭子に飛び掛かるとスカートの中からナイフを取り出すと投げつ
けていた。

「くっ…邪魔が入ったか…」

窓を突き破る様に割ると圭子は出て行ってしまった。

「ケイル様、ご無事ですか!」

駆け寄るリーさんに心配されながら、去っていった後を眺めていた。
首にナイフによる擦り傷ができていたらしい。
リーさんによって手当されると今はのんびりとくつろいでいる。

もちろん庭にも出してもらえなくなった。

兵士が配備されてそう簡単には入れなくなった様だった。

せっかくの手がかりがなくなってしまって、少し落ち込むと、暗殺されかけ
たせいで落ち込んでいると思われて、変わるがわる兵士達が見にきていた。

そんなある日、兵士の一人が面白い噂を持ってきた。

「ケイル様~知ってますか?漆黒の魔女の噂!」
「漆黒の魔女?」
「そうです、この前大きな依頼でどこかの屋敷に入ったら、暗殺対象に反撃
 されて初めて失敗したとか!お偉いさんの依頼だったとかで、結構揉めた
 らしいんですよ~」
「暗殺依頼なんてのもあるんですか?」
「あぁ~、ギルドで斡旋してるのは悪い盗賊討伐とかなんですけど、裏ギルド
 では、しょっちゅうあるらしいんですよ。暗殺依頼って…」

ゴンッと大きな音がすると、おしゃべりな兵士の後ろには剣術の先生が仁王立
ちしていた。

「ケイル様になんて話をしているんだ!この前、怪我を負ったばかりだという
 のに!」
「す、すいませーん」

叫びながら出て行くのを見送りながらプッと笑ってしまった。

「少しは元気が出ましたか?」
「はい、先生のおかげです」
「それは良かった。よろしければ庭にでも行きますかな?ワシが付いておれば
 安心できますぞ?」

わざと、息が詰まらない様にと気を使ってくれたのだろう。
そのお誘いに乗ることにしたのだった。

メイドはリーさんだけなので、この屋敷の規模にしては警護がザルになってし
まうのは致し方ない事だった。

父親の命令で今は剣術の先生が常にこちらの屋敷に滞在することになったらしい。
ということは、暗殺依頼を出したのは母親か、それともハイド兄さんとなるのだ
ろう。

まだ7歳の子供を暗殺したいからって、ここまでするのか?
しかも無能を始末するとか…

それでも王家の血を継いでいるので一回失敗したとあって、警戒されているはずだ。
それでも、諦めないとなると、相当に恨んでいるのだろう。

まだ、7歳の子供を殺したいってどうかしてるだろ?

大きなため息を漏らすと先生の横を付いて外に出たのだった。
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