異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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20話 新しい人生

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空を駆けるとあっという間だった。
結構距離がある気がするのだが、それは考えない事にした。

「これ、すごい切れ味だね?ありがと…」
「安物だけど?」
「ん…?」
「だから~それって安物なんだよ?どこにでも売ってる粗悪品」

圭子の言葉にさっきまでの事を思い出す。
スパッと刺さった感覚を思い出すと、決して粗悪品には思えなかった。

「ほら、そこの丸太切ってみればわかるよ」

薪に使うつもりの丸太が家の中に転がっていた。
ナイフを構えると一気に降り下ろした。

ガツンッ!!

刺さるどころか、全く刃が立たない。
刺さる事もできない。

「あれ?さっきはあんなに切れたのに…」
「それはね~、ちょっと貸して?」

圭子が何か唱えると刃に当てた。
すると、さっき渡された時の様に少し周りに膜ができた様に少し光っ
て見えた。

「これは?」
「そのまま切ってみて?」
「あぁ…」

ただ少し刃先が当たっただけでスパッと真っ二つになった。

切れ味がいいというどころではない。

「これは…魔法付与か!」
「正解!やっぱりお兄ちゃん賢いね!」

しかし、魔法付与など、そんな簡単に出来るものじゃない。
それをいとも簡単にやってのけるのだ。

「なんでも出来るんだな?」
「なんでもはできないわよ?第一、人を生き返らせる事はできないもの」
「それは…」
「だからね。絶対にお兄ちゃんには死んでほしくないの!だから私と一緒
 に行動するって事で!いいよね?」
「えっ…それはいいけど。足手まといにならないか?俺は魔法は使えない
 んだぞ?」

属性毎に使えはするが、ただ使えるという程度で攻撃には使えないのだ。

一般的な生活魔法くらいと鑑定が唯一自信がある魔法だった。

「鑑定?そんなの普通使えないよ?」
「そうなのか?人間も鑑定できるみたいだけど…」
「ないない。人を見ただけでステータスが見れるってそっちのが凄いよ!
 それ、絶対に誰かに話しちゃうダメだよ!」
「お、おう…」

レベルの低い遼馬に合わせて、今度ダンジョンを巡るという事で今後の目標
を立てたのだった。

今は、街の方では騒がしくなっていて遼馬の今の見た目はあまりにも目立ち
過ぎるのだ。

「この髪、俺だけなんだよな~」
「染めてあげよっか?せっかく綺麗な髪なのはもったいないけど、目立つも
 んね?その色…」

圭子の魔法はそこまで長くは持たないが、一週間程度なら持続するらしい。

「なら、毎週かけて貰えばいいのか?」
「うん!これも可愛いよ!お兄ちゃん…」

銀糸の髪は茶色に落ち着き、紅い瞳の色は灰色になっていた。

よーく見ると赤っぽいと見えなくもないが、ちょっと話すくらいでは分から
ない。

さっきから、圭子の膝の上に乗せられると抱っこされている。
これでは兄の威厳も何もない。
むしろ愛玩動物の様に思われている気さえする。

「そういえば、圭子は何歳なんだ?」
「ん~?何歳だろう?最初は数えてたけど…100年過ぎると数えるのも面倒に
 なるのよね~」
「1000年前の戦争にも参加したってある漆黒の魔女って師匠とかそう言う事 
 なんだよな?」
「うん?違うわよ?それ、多分私が勇者として魔王を倒して暇しながら、賞金
 稼いでた時だわ、きっと…あちこちの国の傭兵になったもん」

いきなり怖い事を言ってきた。

こんなに強いのだから、味方した方がきっと勝ったのだろう。

金払いを渋ると破滅って危険人物すぎるだろ?

「まぁ、いいや。明日からよろしくな?」
「もちろんだよ。今日は一緒に寝よっか!」
「ちょっ、一人で寝れるからっ!」
「だって、寝床一つしかないし?いいじゃん、いいじゃん!」

半ば押し切る様に連れられて寝床に入った。
これでも一応男なのだけど…
少し情けない気がするが、子供の身体では文句すら聞いてもらえなかったの
だった。
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