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25話 ギルド職員の憂鬱
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冒険者ギルドでは少し困った事が起きていた。
先日王都では皇子の殺害が続いていて、2日で末っ子のケイル皇子、
次の日に長男のハイド皇子が続けて亡くなったのだ。
犯人はまだ捕まっておらず、それが漆黒の魔女だという噂が勝手に
広まっているのだ。
まるで誰かが故意に広めている様にしか思えなかった。
ギルドでも調査を依頼されたが、手の施しようもないほどに無惨な
状態のケイル皇子に関しては身元も分からぬ程に焼かれ、無惨に骨
もぼろぼろに砕かれていた。
「あきらかに怨恨としか思えないな…」
ギルド長のため息混じりの声が秘書官に助けを求めた。
「ちゃんと仕事してください」
「だってな~、こんな非道な事ができるか?普通…、しかもまだ7歳
だって言うのに…」
銀糸の髪が数本風に舞っていた。
「しかも珍しい銀糸の髪に真紅の瞳だって言うじゃないか?珍しいっ
て言うので、屋敷からは出してもらえなかったんだろ?王家も何を
考えたんだかな~。さぁ、もう一人の方も見にいくか!」
「そうですね」
もう一人の方は、長男のハイド死体だった。
こっちはきちんと保存されていた。
が、心臓をひと突きで殺されていたのだ。
しかも、骨もろともスパッと刺されている。
大の大人ですら、骨で一旦刃が止まるのだが、そんな感じはなかった。
綺麗に骨も綺麗にすっぱり切れていたのだ。
「どんだけ切れ味が良ければこうなるんだよ…」
「これは、普通の刺し傷じゃないですね」
「当たり前だ!こんなの普通だったら、困るぞ!」
いくら調べても、証拠もなければ、忽然と犯人は消えている事になる。
窓から入ってきて、窓から出て行った。
足跡も残さずにだ…
人間の仕業とは思えなかった。
そして、それ以上に頭を悩ませたのが、その次の日に冒険者登録をした
姉弟だった。
受付の人手が足りず、急遽秘書が受付業務につくと、見慣れない女性が
登録に来たのだ。
そして弟もと言うので、見るとなんとも可愛らしい子供だった。
まだ幼く、7歳だと聞いて、末の皇子の死体を思い浮かべてしまった。
きっと可愛かったのだろうと思うと、余計にこんな事はさせたくなかった。
が、本人もやる気だったので採取クエストを勧めておいた。
そして帰ってきてみれば、採取に加えてゴブリンの巣ごと殲滅したと言う
のだ。
「まさか…貴方は弟くんを連れて行ってませんよね?」
「え…?連れてくに決まってるじゃない?置いてくのは危険でしょ?」
「それは…ってそう言う事じゃなくて…、あれほど危険な場所には行かない
って言ったのに、なんで勝手に行ってるんですか!」
「まぁまぁ、いいじゃん。終わった事だし?ね?」
この保護者は信用できないと認識を改めたのだった。
それでも家族なら、危ないからと言って引き剥がすわけにも行かなかった。
「もう、これからは気をつけて下さいね」
「はいはーい、ってわけで、今度このクエスト取りたいんだけどいいよね?」
出してきたのはベノニウム鉱石の採掘だった。
危険度Aのクエストだ。
「ダメです!さっき言った側から何を言い出すんですか?貴方達はまだ駆け出
しのFランク冒険者なんですよ?」
「でも、今回の依頼でEに上がったでしょ?違う?」
「それは…」
確かに今回のゴブリンの巣の殲滅と数から言ってもEに昇格だった。
しかも耳だけ持って帰ってきてくれればいいのに、死体までご丁寧にギルドホ
ールに並べてくれたせいで、後で掃除する羽目になったし…
「Eには昇格しますけど、それでもAランクのクエストはダメです!いくなら彼
を置いて行って下さい。危険すぎます」
「それは嫌。ケイルちゃんをあんたみたいな人に預けるなんてもっと嫌。仕方
ないな~、これでいいよ。」
薬草の採取クエストを引っ張ってくると提出した。
が、出ているもの全部とってきた様で結構な量になる。
「あの、失敗したらどうするんですか?」
「え?失敗なんてしないし?これならいいんでしょう?」
職員は呆れるように大きなため息をつくと、渋々了承した。
今日は何度目だろう。
最近ため息の吐きすぎで、幸せが逃げている気がする。
外で一人で待っていたケイルくんが窓からこっちを覗いていた。
やっぱり可愛いなと思いながら顔がついニヤける。
が、いきなりどこから寒気の様な嫌な予感がした。
これでも今は秘書をしているが、前は冒険者の端くれだった。
こういう予感は大事にしている。
咄嗟に感じた嫌な予感を思い出しながらすぐに入り口へと向かった。
入り口付近にはケイルくんが不思議そうに眺めていただけだった。
「ケイルくん、ここにさっきまで誰か居なかった?」
「いないよ?僕だけだよ?イリアお姉ちゃんにここで待っているように言われ
たの」
「そう…それならいいんだけど…、ちょっと中に入って待ってようね?」
案内される様に中へと入った。
そして受付のお姉さんはジュースを差し出して笑顔で笑っているが、何かに警戒
している様子だった。
先日王都では皇子の殺害が続いていて、2日で末っ子のケイル皇子、
次の日に長男のハイド皇子が続けて亡くなったのだ。
犯人はまだ捕まっておらず、それが漆黒の魔女だという噂が勝手に
広まっているのだ。
まるで誰かが故意に広めている様にしか思えなかった。
ギルドでも調査を依頼されたが、手の施しようもないほどに無惨な
状態のケイル皇子に関しては身元も分からぬ程に焼かれ、無惨に骨
もぼろぼろに砕かれていた。
「あきらかに怨恨としか思えないな…」
ギルド長のため息混じりの声が秘書官に助けを求めた。
「ちゃんと仕事してください」
「だってな~、こんな非道な事ができるか?普通…、しかもまだ7歳
だって言うのに…」
銀糸の髪が数本風に舞っていた。
「しかも珍しい銀糸の髪に真紅の瞳だって言うじゃないか?珍しいっ
て言うので、屋敷からは出してもらえなかったんだろ?王家も何を
考えたんだかな~。さぁ、もう一人の方も見にいくか!」
「そうですね」
もう一人の方は、長男のハイド死体だった。
こっちはきちんと保存されていた。
が、心臓をひと突きで殺されていたのだ。
しかも、骨もろともスパッと刺されている。
大の大人ですら、骨で一旦刃が止まるのだが、そんな感じはなかった。
綺麗に骨も綺麗にすっぱり切れていたのだ。
「どんだけ切れ味が良ければこうなるんだよ…」
「これは、普通の刺し傷じゃないですね」
「当たり前だ!こんなの普通だったら、困るぞ!」
いくら調べても、証拠もなければ、忽然と犯人は消えている事になる。
窓から入ってきて、窓から出て行った。
足跡も残さずにだ…
人間の仕業とは思えなかった。
そして、それ以上に頭を悩ませたのが、その次の日に冒険者登録をした
姉弟だった。
受付の人手が足りず、急遽秘書が受付業務につくと、見慣れない女性が
登録に来たのだ。
そして弟もと言うので、見るとなんとも可愛らしい子供だった。
まだ幼く、7歳だと聞いて、末の皇子の死体を思い浮かべてしまった。
きっと可愛かったのだろうと思うと、余計にこんな事はさせたくなかった。
が、本人もやる気だったので採取クエストを勧めておいた。
そして帰ってきてみれば、採取に加えてゴブリンの巣ごと殲滅したと言う
のだ。
「まさか…貴方は弟くんを連れて行ってませんよね?」
「え…?連れてくに決まってるじゃない?置いてくのは危険でしょ?」
「それは…ってそう言う事じゃなくて…、あれほど危険な場所には行かない
って言ったのに、なんで勝手に行ってるんですか!」
「まぁまぁ、いいじゃん。終わった事だし?ね?」
この保護者は信用できないと認識を改めたのだった。
それでも家族なら、危ないからと言って引き剥がすわけにも行かなかった。
「もう、これからは気をつけて下さいね」
「はいはーい、ってわけで、今度このクエスト取りたいんだけどいいよね?」
出してきたのはベノニウム鉱石の採掘だった。
危険度Aのクエストだ。
「ダメです!さっき言った側から何を言い出すんですか?貴方達はまだ駆け出
しのFランク冒険者なんですよ?」
「でも、今回の依頼でEに上がったでしょ?違う?」
「それは…」
確かに今回のゴブリンの巣の殲滅と数から言ってもEに昇格だった。
しかも耳だけ持って帰ってきてくれればいいのに、死体までご丁寧にギルドホ
ールに並べてくれたせいで、後で掃除する羽目になったし…
「Eには昇格しますけど、それでもAランクのクエストはダメです!いくなら彼
を置いて行って下さい。危険すぎます」
「それは嫌。ケイルちゃんをあんたみたいな人に預けるなんてもっと嫌。仕方
ないな~、これでいいよ。」
薬草の採取クエストを引っ張ってくると提出した。
が、出ているもの全部とってきた様で結構な量になる。
「あの、失敗したらどうするんですか?」
「え?失敗なんてしないし?これならいいんでしょう?」
職員は呆れるように大きなため息をつくと、渋々了承した。
今日は何度目だろう。
最近ため息の吐きすぎで、幸せが逃げている気がする。
外で一人で待っていたケイルくんが窓からこっちを覗いていた。
やっぱり可愛いなと思いながら顔がついニヤける。
が、いきなりどこから寒気の様な嫌な予感がした。
これでも今は秘書をしているが、前は冒険者の端くれだった。
こういう予感は大事にしている。
咄嗟に感じた嫌な予感を思い出しながらすぐに入り口へと向かった。
入り口付近にはケイルくんが不思議そうに眺めていただけだった。
「ケイルくん、ここにさっきまで誰か居なかった?」
「いないよ?僕だけだよ?イリアお姉ちゃんにここで待っているように言われ
たの」
「そう…それならいいんだけど…、ちょっと中に入って待ってようね?」
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