異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第二章

3話 怪我厳禁

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今いるのは少し大きめな港街だった。
活気があって飯が美味い。

見た目もイリアに追いついて来たせいか、周りからの視線も少し
変わりつつある。

討伐依頼を済ませてギルドに戻ると達成報告をする。
もちろん受けた依頼は薬草の採取依頼だったがついでに討伐もし
ておいたという具合に、戦闘依頼の側にある採取依頼ばかりを狙
って取っている。

「今日も戦闘になったんですか?気をつけてくださいね?この前
 も冒険者の数人が帰らぬ人になったんですからね?」
「はい…気をつけます」
「それより、どうですか?この後?」
「えっ…あの、俺はちょっと…」

受付の女子に誘われるのはいつもの事でもあった。
そして後ろのイリアの機嫌が悪くなるのも、ここ数日ずっとだった。

「俺、この後イリアと飯だから…」
「お姉さんと四六時中一緒じゃ息が詰まらない?」
「だ、だいじょうぶです…よ?あはははっ…、では、これで…」

受付を離れるとイリアの手を掴んで出ていく。
ここの女性は積極的で困る。

一人だったら嬉しい誘いだけど、イリアと一緒ではそうも行かない。

「ケイル~何をデレデレしてたの?」
「してないからっ!マジで勘弁してくれよ~~~」

部屋に戻るとクリーンの魔法で綺麗にする。

「じゃ~飯行くか!」
「その前にお風呂行こう~」
「えっ、ちょっと、待って!ここって混浴しかないし…ほら、やめ
 よう?」
「いいじゃない、いつも一緒なんだから良いじゃない?」
「ダメだよ、年頃の娘がそんなはしたない…」
「はしたない?ケイルはいいの?ねぇ~どうなの?」
「いや、それは…その…」

まさか寝静まった後で一人で行っているのがバレていたのか?
やっぱり日本人ならお風呂は湯に浸かりたいと思ってしまう。

そしてこの世界でも湯に浸かる文化がある。

肩までしっかり疲れるほど湯が多くはないが、確かに浸かれる場所が
あるにはあるのだが…それが混浴しかないのだ。

だからイリアを連れていくのは周りの視線が気になって一緒に行っ
ていないのだ。
イリアは全く気にしていないのだが、俺が気になる。

イリアの裸を他の男に見せるのは絶対に嫌だ。
これは男として、家族として絶対に譲れない事だった。

「昔はあんなに一緒に居たのに…背中流しあったり、おっぱいに埋も
 れて…照れてデレデレしてたのに…」
「おい、そこ!違うから!」
「顔、真っ赤にしてたじゃん?」
「してない!変態みたいに言うな!」

イリアの顔が近づいて来るとドキッと心臓が高鳴る。

パチッと音がすると、防具を止めていた金具が外れる。
胸当てを外すと床に転がった。
そしてコテを外していく。

「あの…ちょっとイリアさん…?」
「食事にこんな物…要らないわよね?脱ぐんでしょ?」

イリアに迫られるとどうしても逆らえない。
寝床に押し倒されると武器を止めてあるベルトを外された。

「も…もう…いいだろ?」
「まだ、だーめ…」

布の服を捲り上げると鍛え上げられた筋肉が目につく。
まだ、しっかりと鍛えられてはいないが、この年齢にしてはいい出来
栄えだと思う。

ゆっくりと肌に触れるとイリアの指が肌の上をゆっくりと滑っていく。

「うっ…ちょっ、本当に、もうやめっ…」

真っ赤になって降参するケイルにイリアの指が止まった。

「これ、なに?」

最近は回復魔法も体力回復だけにとどまっていた。
そのせいか、傷を負っても自己申告しなければヒールはかけない。

もちろん、自己申告はケイルの判断に任せている。
が、こうやって身体を調べられるとすぐにバレてしまう。

「傷…できてる…ケイルの肌に傷が…」
「ご、ごめん、今日転んだ時に…」
「あのトカゲ野郎がっ、ケイルの綺麗な身体に傷をっ…」
「ちがっ、これは俺が勝手に…だからあえて言わなかったんだ…」

「ダメ!」

イリアは大声で叫んだ。
イリアにとって俺はすごく大事らしくて、怪我一つさえ、許せない
くらいらしい。

この前にイリアに振られた腹いせに俺に突っかかって来た冒険者な
どは討伐依頼の最中に行方不明になったと聞く。

あの時は俺も叩きのめして帰って来たが、少し切り傷をつけられた
というだけでイリアが怒って出て行ったのを覚えている。

「イリア、本当に大丈夫だから」
『ヒール』
「あ、ありがと…」
「まだ下は見てない。早く脱いで?」

流石にイリアの目の前でズボンを脱ぐのは抵抗が…
なんて言っていられなかった。
問答無用に脱がされるとイリアの指が太ももからゆっくりと触って来る。

俺は一体何の試験を受けているのだろう。
女性にまじまじと見つめられ、触られると精通したばかりの身体には酷
な事だった。

パンツの上からひたっと触れられると、ビクッと反応してしまう。

「これも…脱いで?」
「それだけは勘弁してくれ…イリアだって恥ずかしい場所くらいあるだろ?」
「んーーー…ない。ケイルになら見せれるよ?今から見せっこする?」
「もう、勘弁してくれ…」
「…分かった。でも、傷を隠してたバツ。お風呂に一緒に行こう!」
「なっ…」

さすがに夜中という約束で何とか落ち着いたのだった。
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