異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第二章

15話 入団試験

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朝から列を作っているのが、今回騎士団採用試験の会場前だった。

まさにお祭り騒ぎになっていた。

「うわぁ~屋台出てるじゃん」
「そうね、ケイルは本当にいいのね?」
「イリアは嫌だったか?一カ月だけだし、自分の実力が分かるかなって
 思ったんだけど…イリア?」
「ケイルがそうしたいならいいよ。待ってるね!」
「おう!すぐに帰って来るからな!」

ケイルは早く強くなりたいと思っている。
イリアにだってそれは分かる。
いつまでもイリアの側にいては実感が湧かないのだろう。
イリアの強さは桁が違うのだ。

ケイルが必死になって戦っていた相手を、お腹すいたから食事にしよう。
の一言で全滅させて食事にするなど、さっきまでの苦労はイリアには一瞬
で終わる程度なのだと何度も思い知らされた。

魔法の使えないケイルにはちまちまと一匹ずつ倒すしか無い。

イリアに頼めば、業火で一瞬で吹き飛ぶような雑魚でもケイルには攻撃を
くらえばただでは済まない相手なのだ。

今ままで、常に強化バフをかけ続けたイリアにはケイルを一人送る事は心
配でならない。

「危ないと思ったら逃げるのよ?別に逃げる事は恥じゃないわ」
「分かってるって、イリア、俺を信じて?」
「うん、分かったわ」

ちょっと買い物でも行くかのように手を振って会場に向かった。

試験会場は関係者以外は入れないようになっていた。
ケイルはそのまま受験番号を受け取ると入っていく。

会場は結構広い場所だった。
人数も結構いる。

「こんなに多くの人が入れるんだ~」
「そんな訳ないだろ?今からふるいにかけられるんだよっ」

後ろからかかった声に振り向くと二人の青年が立っていた。

「俺はノック、こっちはナシスだ。」
「俺は、ケイル。昨日この街に来たんだ」
「なら俺らが教えてやるよ。初めてだろ?」
「そうだけど…君たちは…」

慣れていると言いたげな言い方に不思議に思うと、ノックが自慢げに言い
出す。

「ナシスの兄ちゃんが騎士団にいるんだよ。今年17になったから俺らもこ
 の試験に挑むんだよ」
「17?年齢制限があるのか?」
「ん?まさか知らなかったのか?」
「あぁ、そうか…どうしよう」

ケイルはまだ15だった。

「まだ幼いと思ったが年下かよ…落ちるの確定じゃん」
「落ちるのか?」
「そりゃ~な~、大人相手に戦えるかよっ。怪我する前に帰っとけ」

さっきまでの態度がいきなりそっけないものになった。

「待ってくれ、説明だけ頼む…」

頭を下げるケイルに少し考えてから渋々話だした。

「ここにいる人数はまずは資格を受ける人間なんだ。まずここで半数になる。
 ふるいにかける方法はさっき渡された番号あっただろ?あれの奪い合いだ。
 何をしてもいい。相手をダウンさせて奪ってもいいし、怖ければ番号を差
 し出せば何もされねーよ。そして、番号を失った奴はあの場所、あそこか
 ら退場って訳だ」
「なるほどね。なら、全員気絶させれば終わるんじゃないか?」

ノックはケイルのその考えに爆笑した。

顔に傷があるノックは何度も危険な場所へと行ったのだろう。
防具も使い込まれており、新品同然のケイルとは全然違う。

「お前、貴族のボンボンか何かか?そんな甘くね~んだよ。まずは生き残って
 みろよ。話はそれからだ」
「ありがとう」

笑顔でお礼を言うケイルに調子が狂ったのか、何か思惑があるのかケイルの横
に座って来た。

「仕方ねーから、一緒に戦ってやるよ」
「え…別にいいよ?僕だけでも戦えるし?」
「僕たちね、コンビで戦うつもりなんだ。僕はノックほど体力もないし、力も
 強くないから。だから一緒に戦えば足りないところをカバーできると思うよ」

多分善意でいてくれるのだろう。
この二人はあえて協力し合うようだった。

イリアに鍛えられたケイルは一人で戦う事のが多かったので、人を気遣って戦っ
た事などなかった。
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