異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

2話 適材適所

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森の中は順調に進んだ。
逃げた馬を捕まえて馬車はすぐに治って出発した。

本当は二人っきりの散策だったが、今は業者の代わりにケイルとイリア
が馬を操作している。

「このままでいいのか?」
「そうそう、上手いじゃん。そうやって馬を操作するのよ。もうちょっ
 と肩の力を抜いてみて」
「うん…」
「そうそう、ゆっくり曲がってる時はこっちに引きながら、ゆっくりよ」
「うん、分かってる…」

和やかな会話が中で乗るお嬢様や、執事をも安心させた。
少し乱暴ではあったが、慣れてくると揺れも少なくなった。

「ケイルさん、上手くなりましたね~」
「そうですか?イリアがしっかり教えてくれるおかげですね~」

馬車の中から声をかけられると、一応イリアを誉めておく。
そうしないとすぐに機嫌が悪くなるのだ。

今もそこまでくっつかなくてもいいのだがわざと、ピッタリとくっついて
教えてくる。

腕に柔らかいものが押し当てられている。
さっきから集中力が続かない。

「イリアさん?ちょっと…ね?」
「何かな?ちゃんと言ってくれないとわからないな~」

わざと当てているのが分かるだけに、なんとも言いずらい。
すると、二人の会話がいきなり途切れた。

「止めて…」
「あぁ…ちょっといいか?今から絶対に窓を開けるな!それと絶対に出て
 くるなよ!」

中に声をかけると馬車を止めて、降りた。

「ちょっと、そこの茂みにいるのは分かってるのよ?出てきなさい!」
「…」

鎮まりかえっていて、誰も出て来なかった。

「そう…そんなに火だるまになりたいの?いいわよ、死んで後悔しなさい。
 ケイル横から2人よ」
「りょ~かい!」

すぐに横から飛び出してきた男の首を切り落とすともう一人の胴を真っ二つ
にしたのだった。

その間にイリアは炎を出して前に投げた。

「うわぁぁっぁーー」

悲鳴を上げて男が転げ回った。
魔法で出した火がそう簡単に消えるはずもなかった。

死ぬまで燃え尽くす。
一番辛い死に方だった。

声が聞こえなくなった時には焼けこげた臭いが辺りにしてきた。

それから数人燃やすと、ケイルも切り伏せていた。

あまりに鮮やかさに中で見ていた執事も感嘆を禁じ得なかったらしい。

「終わりましたか?」
「はい、もう大丈夫です」
「あの、もしよろしければうちで騎士になる気はないでしょうか?」
「それはようございます。これほどお強ければこれからも安心出来ましょう」

報酬も弾むと言っていた。

「悪いけど、俺達は旅の途中なんだ」
「では、その旅が終わったらと言うのはどうでしょうか?」

食い下がらないお嬢様にイリアが前に出た。

「条件忘れたの?私のケイルに色目使わないで!誘うのも禁止よ!」
「あの…恋人なんですか?素敵ですね!」
「ま、まぁ~そんなところよ…」

イリアが戸惑いながらいうと、お嬢様は喜んで『二人で来てください』と言っ
てきたのだった。

「イリア…お前…」
「仕方ないじゃない…」

ボソッとこぼした言葉に恋人と自分で言っておいて真っ赤になるイリアの姿が
あったのだった。

何度か野営をしながら魔物を捌きながら焼肉を数日齧り付く生活が続いた。

「肉にも飽きたな~野菜食いたい~」
「そうね~、そういえばこの前野菜の種買ったんだったわ」
「マジ、野菜食おう!」

嬉しそうにケイルが言うとイリアは買った種を手渡した。

ケイルは嬉しそうに種を眺めると地面に植えた。

そこに水を与えて、ゆっくり種に魔力を込め始める。
みるみるうちに目が出てゆっくり大きくなっていく。
赤い身をつけると、熟したトマトがないくつもなっていた。

「美味しそう!さすがね」
「まぁ、これしかできなかったしな…」

そう言うと、生のトマトをくし切りにしていく。
肉の横に添えると、それだけで少し気分が上がる。

「これは、どうやってこんな新鮮なものを?美味しいですわ」
「確かに…肉が食べられるだけいいと思っておりましたが、こんな美味しい野菜
 があったとは…」

口々に褒めていた。

「やっぱりケイルの魔法はすごいね」
「全部の属性が使えるおかげだな」

同じ魔法でもイリアとは全く違っていた。
こんな使い方、イリアにはできない。

逆にケイルにはイリアのように攻撃に使える魔法はからっきしなのだ。

お互い苦手なことを補うようにできていたのだった。
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