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第三章
6話 見殺しにされた父親
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おじさんと呼ばれた男は船が目的だったのではないか?
ネリウスの父親が死ねば子供の面倒と一緒に船が手に入る。
海の男にとって船は大事な商売道具なのだ。
「彼の父親の船なのだから、貴方にどうこうする権利はないですよね?
それに彼の面倒を見ていると言ったが、俺にはそうは見えない。なん
で、そんなに太っている人に育てられた子供がガリガリで今にも飢え
そうな体格なんだ?」
おじさんの体格を見るに、たらふくご飯を食べているのがわかる。
が、ネリウスはどうだろう?
明らかに食事をきっちり与えているとは思えなかった。
「それは…そのガキが悪さするからな…躾だ、躾!」
「なら、もう面倒も見なくていいですよ。その代わり船ももらって行き
ます」
「なっ!何を!」
「そうよね~、この子の世話してれば船も貰えるなら、貴方が面倒を見
る理由はないわね~。どっちも貰っていくわ」
そういうとイリアがネリウスを抱きしめた。
その前にケイルが立ちはだかると、顔を真っ赤にしていた。
「そうだ、言い忘れてたけど、これ!」
ケイルが冒険者証を見せると手に持っていた鈍器が滑り落ちていた。
B級冒険者に盾つこうと思うものは普通はいない。
いくら若くて弱そうでも、冒険者は見た目では判断できないからだ。
「お兄ちゃん達、すごーい!」
「あぁ、俺たちは強いからな!」
そういうと船へと乗り込んだ。
操縦の仕方が分からないので、ネリウスの説明を聞きながら言われた
通りに舵を切っていく。
「おぉ、動いた!」
「当たり前だろ。船ってのはこうやって動かすんだからな!」
「一人前に言いやがって~、でも、助かったよ」
「こっちこそ、兄ちゃん達がいなかったらあのまま出られずにいた
から…」
「向こうには母親がいるんだよな?」
「うん、もうすぐ妹もできるんだ。だから楽しみなんだ~」
嬉しそうなネリウスを横目にイリアが真後ろに来ていた。
「メーザス領地ってどんなところなの?昔は魔物も人間も普通に暮ら
していたはずなんだけど…」
「うん、昔はそうだったみたいだけど、今は少し違うかな。大体が僕
みたいな人間と魔族ハーフが住んでるんだ」
「ハーフなのか?なら、母親って…」
「うん、純粋ではないけど魔族だよ。魔法も使えるって言ってた」
ケイルは改めて鑑定をかけると確かに間違ってはいなそうだった。
…船乗りの少年ネリウス。
父親は人間、母親は魔族のハーフ。
メーザス領地にて療養中。
「あのさ~、ちょっと聞きたいんだけど、お母さんって何か病気なのか?」
「え?そんな事ないよ?一年前に送り出した時は元気だったよ?」
「そうか…ならいいんだ」
鑑定結果に不備があるなんて聞いたことはない。
となると、実際に起きているという事になる。
ネリウスの母親はなんらかの病気で療養を余儀なくされている事になる。
こちらにはイリアがいるので回復もあるし、きっと大丈夫。
そう思っていたのだった。
海での航海は順調に進んでいた。
真っ直ぐに進んでいるようでいつしか、戻っていたというにはよくある
事らしい。
時折り羅針盤を覗きながらネリウスが方向を確認していた。
「こっちであってるのか?さっき結構曲がらなかったか?」
「兄ちゃんは心配症だな~、大丈夫だって~。」
「そうか!ネリウスは頼もしいな?」
「任せろって、これでも海の男からだな!」
食事は持ってきた異空間収納から出すのでいつでも新鮮なものが食べれ
た。
「それすごいな~、ちょっと触ってもいい?」
「あぁ、いいぞ」
ネリウスが触れても中は空っぽで何も出てこない。
「あれ?なんで?さっきはあんなに…」
「これには魔法がかかってて、入れた本人以外は取り出せないんだ。それ
に燃えない素材でできていて、盗難防止にもなっているんだ」
「へ~すごいね~」
「だろ?イリアお手製だぞ?」
「お姉ちゃんすごい人だったんだね!」
ネリウスは目を輝かせて航海中ずっとイリアに付き纏っていたのだった。
メーザス領地に着いた時には残念そうな顔で見送ってくれた。
「元気でな!」
「兄ちゃん達も…イリア姉ちゃん、やっぱり僕の分も作ってくれない?」
「いやよ、絶対いい事に使わなそうだもん。私、他人は信じない事にして
るのよっ」
「はははっ、まぁ、諦めろって」
「兄ちゃんはいいな~」
「ほら、お母さんに会いに行くんだろ?」
「うん、じゃ~な!また会おうね~」
手をブンブンと振りながら走っていく。
「この船どうするかな~」
「それなら私が貰い受ける事になってるわ」
「は!いつの間に?」
「さっきよ、もう向こうに行く事はないからって言ってたからね」
そういうと、袋の中にあの大きな船が入ってしまう。
「そういえば、ネリウスには作ってやらなかったんだな?」
「当たり前じゃない。前に一回仲良くなった子に渡したことがあったのよ。
でも、その子…窃盗に使ったのよ。あの袋は入れた本人しか取り出せない
から証拠もなくてね…」
「それ…どうなったんだ?」
「まぁ、他にも取り出す方法はあるんだけどね」
イリアが仲良くなる人とはどんな子だろう。
そして、それ以上聞くんじゃなかったと後悔する羽目になった。
「持ち主が死ねば中身は全部外に出るのよ」
「そ、それは…」
証拠がなくて疑われていた友人を始末したのはイリアだったらしい。
ネリウスの父親が死ねば子供の面倒と一緒に船が手に入る。
海の男にとって船は大事な商売道具なのだ。
「彼の父親の船なのだから、貴方にどうこうする権利はないですよね?
それに彼の面倒を見ていると言ったが、俺にはそうは見えない。なん
で、そんなに太っている人に育てられた子供がガリガリで今にも飢え
そうな体格なんだ?」
おじさんの体格を見るに、たらふくご飯を食べているのがわかる。
が、ネリウスはどうだろう?
明らかに食事をきっちり与えているとは思えなかった。
「それは…そのガキが悪さするからな…躾だ、躾!」
「なら、もう面倒も見なくていいですよ。その代わり船ももらって行き
ます」
「なっ!何を!」
「そうよね~、この子の世話してれば船も貰えるなら、貴方が面倒を見
る理由はないわね~。どっちも貰っていくわ」
そういうとイリアがネリウスを抱きしめた。
その前にケイルが立ちはだかると、顔を真っ赤にしていた。
「そうだ、言い忘れてたけど、これ!」
ケイルが冒険者証を見せると手に持っていた鈍器が滑り落ちていた。
B級冒険者に盾つこうと思うものは普通はいない。
いくら若くて弱そうでも、冒険者は見た目では判断できないからだ。
「お兄ちゃん達、すごーい!」
「あぁ、俺たちは強いからな!」
そういうと船へと乗り込んだ。
操縦の仕方が分からないので、ネリウスの説明を聞きながら言われた
通りに舵を切っていく。
「おぉ、動いた!」
「当たり前だろ。船ってのはこうやって動かすんだからな!」
「一人前に言いやがって~、でも、助かったよ」
「こっちこそ、兄ちゃん達がいなかったらあのまま出られずにいた
から…」
「向こうには母親がいるんだよな?」
「うん、もうすぐ妹もできるんだ。だから楽しみなんだ~」
嬉しそうなネリウスを横目にイリアが真後ろに来ていた。
「メーザス領地ってどんなところなの?昔は魔物も人間も普通に暮ら
していたはずなんだけど…」
「うん、昔はそうだったみたいだけど、今は少し違うかな。大体が僕
みたいな人間と魔族ハーフが住んでるんだ」
「ハーフなのか?なら、母親って…」
「うん、純粋ではないけど魔族だよ。魔法も使えるって言ってた」
ケイルは改めて鑑定をかけると確かに間違ってはいなそうだった。
…船乗りの少年ネリウス。
父親は人間、母親は魔族のハーフ。
メーザス領地にて療養中。
「あのさ~、ちょっと聞きたいんだけど、お母さんって何か病気なのか?」
「え?そんな事ないよ?一年前に送り出した時は元気だったよ?」
「そうか…ならいいんだ」
鑑定結果に不備があるなんて聞いたことはない。
となると、実際に起きているという事になる。
ネリウスの母親はなんらかの病気で療養を余儀なくされている事になる。
こちらにはイリアがいるので回復もあるし、きっと大丈夫。
そう思っていたのだった。
海での航海は順調に進んでいた。
真っ直ぐに進んでいるようでいつしか、戻っていたというにはよくある
事らしい。
時折り羅針盤を覗きながらネリウスが方向を確認していた。
「こっちであってるのか?さっき結構曲がらなかったか?」
「兄ちゃんは心配症だな~、大丈夫だって~。」
「そうか!ネリウスは頼もしいな?」
「任せろって、これでも海の男からだな!」
食事は持ってきた異空間収納から出すのでいつでも新鮮なものが食べれ
た。
「それすごいな~、ちょっと触ってもいい?」
「あぁ、いいぞ」
ネリウスが触れても中は空っぽで何も出てこない。
「あれ?なんで?さっきはあんなに…」
「これには魔法がかかってて、入れた本人以外は取り出せないんだ。それ
に燃えない素材でできていて、盗難防止にもなっているんだ」
「へ~すごいね~」
「だろ?イリアお手製だぞ?」
「お姉ちゃんすごい人だったんだね!」
ネリウスは目を輝かせて航海中ずっとイリアに付き纏っていたのだった。
メーザス領地に着いた時には残念そうな顔で見送ってくれた。
「元気でな!」
「兄ちゃん達も…イリア姉ちゃん、やっぱり僕の分も作ってくれない?」
「いやよ、絶対いい事に使わなそうだもん。私、他人は信じない事にして
るのよっ」
「はははっ、まぁ、諦めろって」
「兄ちゃんはいいな~」
「ほら、お母さんに会いに行くんだろ?」
「うん、じゃ~な!また会おうね~」
手をブンブンと振りながら走っていく。
「この船どうするかな~」
「それなら私が貰い受ける事になってるわ」
「は!いつの間に?」
「さっきよ、もう向こうに行く事はないからって言ってたからね」
そういうと、袋の中にあの大きな船が入ってしまう。
「そういえば、ネリウスには作ってやらなかったんだな?」
「当たり前じゃない。前に一回仲良くなった子に渡したことがあったのよ。
でも、その子…窃盗に使ったのよ。あの袋は入れた本人しか取り出せない
から証拠もなくてね…」
「それ…どうなったんだ?」
「まぁ、他にも取り出す方法はあるんだけどね」
イリアが仲良くなる人とはどんな子だろう。
そして、それ以上聞くんじゃなかったと後悔する羽目になった。
「持ち主が死ねば中身は全部外に出るのよ」
「そ、それは…」
証拠がなくて疑われていた友人を始末したのはイリアだったらしい。
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