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第三章
8話 先代魔王
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真っ直ぐに駆け抜けると、目の前に大きな泉が見えて来た。
が、いきなり止まることができずにそのまま突っ込んでいった。
イリアはというと、フワッとケイルの背中から飛び降りると地面
に着地した。
ケイルだけが着水して大きな水飛沫をあげた。
「大丈夫?」
「ブハッ…マジで死ぬかと思ったぁ~、早く言えって」
「仕方ないじゃん。もうすぐだよって言ったよ?それに目的も目
の前だったし~?」
「え…目の前?」
きょろきょろと探すと、そこにはツノが生えた、青い肌の老人が
いただけだった。
「あの~すいません。この辺ですごい魔力を放つ魔物って…いま
せん、か?」
「それは私の事を言っているのですかな?」
「えーっと、そういう意味では…」
いくら探しても、魔物らしき物はない。
ということはイリアが言っていたA級クラスの魔石の持ち主とい
うのは…
目の前の紳士なのだろう。
「イリア…なんか話が違わないか?魔物って言ってなかったか?」
「魔族も、魔物も一緒じゃない?」
「違うだろ」
小声で話していると、向こうから近づいて来た。
「魔物と魔族を一緒にされるとは…誠に不愉快ですね~」
「あ…いや、これには事情があって…」
「いいじゃない?もう老いぼれには退場して貰えばさっ!」
「えぇっ、ちょっと、それ、失礼じゃ…」
「えーーー、でも、向こうは殺る気満々だよ?」
「待って!俺達は戦いに来たわけではっ…」
「甘いね…それでも勇者かい?」
「えっ…」
目の前まで距離を詰められると一気に腰の剣が抜かれ、振り下ろさ
れていた。
早いなんてもんじゃない。避けきれない!!
「うわぁっーーー!」
一気に横から吹き飛ばされると再び水の中のダイブしていた。
あれはイリアの魔法だった。
強化魔法がかかっているから思いっきり吹き飛ばしたのだろう。
目の前で繰り広げられる戦いは目で追うのもやっとで、参加するなど
無理に思えた。
それほどまでに、イリアとの戦闘力の差があるのだと実感させられた。
今ケイルにできることは、ただ相手の弱点を見る事だけだった。
力の差があればあるほど、見える情報は少ない。
それでもやるしかない。
「鑑定!」
…ブライブ
…ブライブ
…ブライブ、先代魔王。今は引退して余生を…
「えっ、魔王!?」
「そこの青年よ、私が誰か知っているのか?」
突然手が止まると話しかけて来た。
正確には手を止めたのではない。
ただ魔法の威力が拮抗しているだけだ。
「ブライブさん…」
「ほぉ~、では、私が魔王だとなぜ思った?」
威圧感のある声で言われるとビクッと腰が引けてしまう。
自分ではまだ敵わない相手と対峙するとこんな感じなのだろう。
「いえ…あの…先代魔王と言うことは…引退なさったのですか?」
「これは面白い。代替わりも知っているのか?なら、なぜ私を狙って
来た?勇者は今の魔王を殺すように神に言われた存在だろう?」
この老人、いやブライブという魔王はケイルの言葉に興味があるよう
だった。
「よそみしてんじゃないわよ!」
「いいのか?私が本気を出せば足手纏いの彼はすぐに死ぬぞ?」
「なっ!死なせる訳ないでしょ!この老いぼれがぁぁぁーーー!」
一気に魔力が増大すると辺り一面が燃え上がる。
「ちょっ、イリア待って!」
「全く血が上ると判断力を失うタイプじゃな」
「えっ…」
いきなり横から聞こえて来た声に驚くと首根っこを捕まれひょいっと、
いとも簡単に持ち上げられた。
「まずはお嬢ちゃんは頭を冷やしてこい。その間こいつを預かっておく
とするかの。」
「えぇ…ちょっ…」
何かを言う前に、今見てる景色が一気に変わって、どこかの庭へと降ろ
された。
「あれ?俺って…攫われてる?」
「そうじゃな、人質じゃな」
「困ります!早く戻らないとネリウスのお母さんが…」
元魔王は焦るケイルに落ち着くように諭す。
それから事情を説明するように言ったのだった。
「ハーフだけがかかる病気みたいで、魔力が枯渇ししまったらしいんです。
このままでは…だからお願いです、Aランク級の魔物の魔石がいるんで。」
「それは分かったがのう、どうしてそなたが魔族なんかの為に動く必要があ
るんじゃ?他っておけばいいじゃろ?」
「ほかっておく?じゃ~ネリウスはたった一人になってしまう。そんなの…」
「関係ないじゃろ?結局は他人じゃろ?」
この元魔王の言うことは正しいのかもしれない。
誰も彼も救う事はできまい。それでも…俺は…
「それでも…俺は、ネリウスに笑顔でいて欲しい。俺はイリアがいるから一人
じゃなけど、ネリウスはまだ幼い…大事にしてくれる大人が必要なんです」
「ふむ…」
「お願いします、ここから出して下さい」
ケイルはただ、今は頼む事しかできなかった。
が、いきなり止まることができずにそのまま突っ込んでいった。
イリアはというと、フワッとケイルの背中から飛び降りると地面
に着地した。
ケイルだけが着水して大きな水飛沫をあげた。
「大丈夫?」
「ブハッ…マジで死ぬかと思ったぁ~、早く言えって」
「仕方ないじゃん。もうすぐだよって言ったよ?それに目的も目
の前だったし~?」
「え…目の前?」
きょろきょろと探すと、そこにはツノが生えた、青い肌の老人が
いただけだった。
「あの~すいません。この辺ですごい魔力を放つ魔物って…いま
せん、か?」
「それは私の事を言っているのですかな?」
「えーっと、そういう意味では…」
いくら探しても、魔物らしき物はない。
ということはイリアが言っていたA級クラスの魔石の持ち主とい
うのは…
目の前の紳士なのだろう。
「イリア…なんか話が違わないか?魔物って言ってなかったか?」
「魔族も、魔物も一緒じゃない?」
「違うだろ」
小声で話していると、向こうから近づいて来た。
「魔物と魔族を一緒にされるとは…誠に不愉快ですね~」
「あ…いや、これには事情があって…」
「いいじゃない?もう老いぼれには退場して貰えばさっ!」
「えぇっ、ちょっと、それ、失礼じゃ…」
「えーーー、でも、向こうは殺る気満々だよ?」
「待って!俺達は戦いに来たわけではっ…」
「甘いね…それでも勇者かい?」
「えっ…」
目の前まで距離を詰められると一気に腰の剣が抜かれ、振り下ろさ
れていた。
早いなんてもんじゃない。避けきれない!!
「うわぁっーーー!」
一気に横から吹き飛ばされると再び水の中のダイブしていた。
あれはイリアの魔法だった。
強化魔法がかかっているから思いっきり吹き飛ばしたのだろう。
目の前で繰り広げられる戦いは目で追うのもやっとで、参加するなど
無理に思えた。
それほどまでに、イリアとの戦闘力の差があるのだと実感させられた。
今ケイルにできることは、ただ相手の弱点を見る事だけだった。
力の差があればあるほど、見える情報は少ない。
それでもやるしかない。
「鑑定!」
…ブライブ
…ブライブ
…ブライブ、先代魔王。今は引退して余生を…
「えっ、魔王!?」
「そこの青年よ、私が誰か知っているのか?」
突然手が止まると話しかけて来た。
正確には手を止めたのではない。
ただ魔法の威力が拮抗しているだけだ。
「ブライブさん…」
「ほぉ~、では、私が魔王だとなぜ思った?」
威圧感のある声で言われるとビクッと腰が引けてしまう。
自分ではまだ敵わない相手と対峙するとこんな感じなのだろう。
「いえ…あの…先代魔王と言うことは…引退なさったのですか?」
「これは面白い。代替わりも知っているのか?なら、なぜ私を狙って
来た?勇者は今の魔王を殺すように神に言われた存在だろう?」
この老人、いやブライブという魔王はケイルの言葉に興味があるよう
だった。
「よそみしてんじゃないわよ!」
「いいのか?私が本気を出せば足手纏いの彼はすぐに死ぬぞ?」
「なっ!死なせる訳ないでしょ!この老いぼれがぁぁぁーーー!」
一気に魔力が増大すると辺り一面が燃え上がる。
「ちょっ、イリア待って!」
「全く血が上ると判断力を失うタイプじゃな」
「えっ…」
いきなり横から聞こえて来た声に驚くと首根っこを捕まれひょいっと、
いとも簡単に持ち上げられた。
「まずはお嬢ちゃんは頭を冷やしてこい。その間こいつを預かっておく
とするかの。」
「えぇ…ちょっ…」
何かを言う前に、今見てる景色が一気に変わって、どこかの庭へと降ろ
された。
「あれ?俺って…攫われてる?」
「そうじゃな、人質じゃな」
「困ります!早く戻らないとネリウスのお母さんが…」
元魔王は焦るケイルに落ち着くように諭す。
それから事情を説明するように言ったのだった。
「ハーフだけがかかる病気みたいで、魔力が枯渇ししまったらしいんです。
このままでは…だからお願いです、Aランク級の魔物の魔石がいるんで。」
「それは分かったがのう、どうしてそなたが魔族なんかの為に動く必要があ
るんじゃ?他っておけばいいじゃろ?」
「ほかっておく?じゃ~ネリウスはたった一人になってしまう。そんなの…」
「関係ないじゃろ?結局は他人じゃろ?」
この元魔王の言うことは正しいのかもしれない。
誰も彼も救う事はできまい。それでも…俺は…
「それでも…俺は、ネリウスに笑顔でいて欲しい。俺はイリアがいるから一人
じゃなけど、ネリウスはまだ幼い…大事にしてくれる大人が必要なんです」
「ふむ…」
「お願いします、ここから出して下さい」
ケイルはただ、今は頼む事しかできなかった。
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