異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

7話 母親を救え

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イリアが親切で渡した物で、まさか犯罪に手を染めるなんて人間不信
になるはずだった。

「俺は…絶対しないからな…」
「当たり前じゃない。ケイルはそんな事しないって知ってるもん。で
 も…ケイルなら何をしようと私は協力するよ?」
「何言ってんだよ」
「うんん、なんでもない…」

こんな荒んだ世界だからこそ、人を信じることを忘れてはいけないと
思う。

しばらく行くと小さな村にたどり着いた。
魔物避けの柵と堀が作ってあった。

「あんた達見かけないね?どこからきたんだい?」
「あの、向こう岸から来たんです。俺たち冒険者でネリウスの母親が住
 んでるって聞いて船で一緒に来たんです」
「ネリウス?あぁ、あの最近見かけない物資を持ってきてくれる人間の
 子供の名前がそうだったね~、元気だったかい?」
「いえ…なんか魔族を街に入れたとかの罪で亡くなりました。ひとりぼ
 っちになった彼をこっちに連れて来たんです。」
「そうかい、大変だったね~。しかし、なんて事だろうね~。ネリウス
 が帰ってきちまったのかい」

なんだか、あまり歓迎されていない様子だった。

「帰って来て欲しくなかったような言い方ですね?」
「いや、そんな事ないさね。ただね~、ローデリカのやつがね…体調壊
 したままでね」

鑑定の結果は結構当たっている事を知ると、そのローデリカさんの家を
教えてもらった。

「なんでわざわざ助けるの?ほかっておけばいいじゃん」
「そうもいかないだろ?縁のあった人が困ってるなら助けてやりたいじ
 ゃないか」
「もう、ケイルらしいんだから~仕方ない私が回復かけてあっという間
 に治してあげるんだからっ!」
「ありがとな。イリア…」

ケイルは誰にでも優しい。
兄に裏切られて殺されたそうになったにも関わらず、それでも人を信じ
ようとする。
イリアには、出来ない事だった。

このままだときっと、もっと傷つく時が来るだろう。
そんな時は私が支える。
そう心に誓うとケイルの後を追って歩き出した。

少し歩いたところで一件の家が見えて来た。
さっき別れたネリウスは外で膝を抱えるようにして蹲っていた。

「ネリウス、どうした?」
「兄ちゃん…兄ちゃん、どうしよう、母ちゃんが…」
「まずは落ち着け、な?」
「うん…」

ネリウスが家に帰った時には肌が黒くなって動けない状態だったらしい。
足は膿んですごい臭いを放っているという。

「まずは回復がどこまで通じるか確かめないとな…」
「任せて」

イリアが家に入ると鼻を抑えた。そして寝ている女性が生きているのを
確認してから回復をかける。
ヒールを部分的に絞ると膿んでいる足は治すことができた。
が、病気自体は治らなかった。

「なんかおかしいな…鑑定…なっ、これは」

…ローデリカ、魔族と人間のハーフ。
魔力不足による魔病にかかっている。
次第に魔力が抜けていき、死に至る。
Aランク以上の魔石があれば治る。

「これはどういう事だ?」
「ケイル~、回復じゃ治らないわ~」
「イリア魔力がなくなっていく病気ってどういうことだ?」

鑑定結果を教えると、ネリウスも不安そうだった。

「あぁ、それはね~、ハーフによくある症状だよ。魔族でもない、人間
 でもない、そんな存在だからこそ、魔族のように魔力を使うと枯渇し
 て、それに気づかずに魔力切れ状態が続くの。そして、自分でうまく
 魔力を作れないせいで、そのままが続いて慢性的な症状がでて、寝込
 んで、死に至ると…、そういう事だね~」
「姉ちゃん、それって治せるの?」
「もちろん、簡単だよ。魔力を注ぎ込めばいいんだよ、まぁ簡単な方法
 は魔石を食べさせる事だね」
「魔石…」

魔石とは魔物や、魔族の心臓になる石の事だった。

「結局は彼女には魔石がない、それを補う魔石を与えれば普通に元気に
 なるわ」
「そうなの!なら、魔石取ってくる~」
「待てって!魔石ならなんでもいいってわけじゃないぞ。Aランクの魔
 物のものだ。この辺にいるのか?」
「A…ランク…」

ケイルを見上げると無理だと言わんばかりの表情を浮かべた。

「大丈夫だ。俺らなら倒せるし、魔石を持ち帰れる…信じてまってろ」
「兄ちゃん…」

安心させるように抱きしめるとそっと離した。

「母ちゃんについててやれ。すぐに戻ってくるから」
「仕方ないわね。ケイル行くわよ」
「あぁ。」

イリアに促されるように魔力探知をして場所が分かるとすぐにイリアが
指示を出す。

「ここから西にずっと行ったところに大きな魔力反応があるわね」
「どのくらいだ?」
「ん~~~全力で走って…1時間かな~」
「おけ、バフよろしく」
「おっけ~」

前はイリアに担がれたが、今は流石に体格が逆転したのでそれもなくなった。

代わりにイリアがケイルの背につかまって、一気に走り抜けるのだ。
バフがかかると、一気にイリアを背負いながら走り出す。

側から見たら砂煙だけが見えるだろう。
急いでいたので、周りを確認する事なく、突っ込んでいったのだった。
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