74 / 92
第三章
10話 人質
しおりを挟む
ブライブは大きなため息を漏らしたのだった。
ケイルを抱き上げると屋敷へと戻った。
そしてまずは治療へと取り掛かった。
肉体へのダメージは大きく、しばらく使い物にならなそうだった。
「脅しくらいで頼むと言ったじゃろ?」
「くぅ~~ん」
今は膝下くらいの大きさになっているオオカミに話しかけると反省し
ているとでもいうように鼻を鳴らした。
「全く、加減をしてくれよ?これでも人質なんじゃなからのう」
多分焦って加減が効かなかったのだろう。
ブライブも一瞬焦ったのも事実だった。
ちょっと脅してやろう程度だったが、予想外に戦えていたからだった。
機転もいいし、発想も柔軟なようだ。
普通の魔物なら倒せていただろう。
が、さっき召喚すたのはA級ではない、S級クラスの魔物なのだ。
彼でどうにかなるレベルではない。
はずだった。
もし、バフが切れていなかったらどうなっていたか?
いや、バフが切れていたのではない。
ブライブがバフを解除したのだ。
彼に気づかれずに、そっと…
そのせいで彼は…
彼の勝ちとも言えた。
が、そんな事はさせなかった。
きっと彼は気づいてはいないだろう。
まだまだ強くなる。
そんな素質を秘めていた。
「これで勇者じゃなければよかったんじゃがのう」
身体に直接聞く魔法をかけると、彼の意識とは関係なく真実を語ってし
まう。
「どうじゃ、気分は?」
『…』
「お主の目的はなんじゃ?」
『A級の魔石を持ち帰る事…』
「なぜじゃ?」
『ネリウスのお母さんを助ける、早く帰らないと…』
「真の事じゃったんか?場所はどこじゃ?」
『メーザス領地の港のそば…』
「お前さんは勇者か?」
『違う…アルフレッド兄ちゃんと聖女のラニ姉ちゃんがこっちに向かっ
てる』
「なんじゃ、勇者でもないのか?その強さでか?」
『…』
ブライブは少し拍子抜けした気分だった。
さっきのイリアと言った少女は本当に強かった。
が、全く関係ないらしい。
「あのイリアという娘はなんじゃ?」
『大事な人…』
「恋人か?」
『違う…大事な、大事な家族。そして愛している人』
「それは恋人というんじゃないのか?」
『大事だから…汚せない…絶対に守る存在…』
「人間は難しいのう。家族でも好きならそれでいいじゃろ?それにお主
ら血も繋がってないじゃろ?」
『…』
「もういいわい。やめじゃ、やめじゃ!」
すぐにA級ランクの魔石を届けさせるとそっと眺めた。
すると、中にいた母親の顔色が良くなり、ネリウスという少年は嬉しそ
うに母親に抱きついていた。
「こういう姿を見るのも悪くないのう…」
今、ケイルの身体は魔力濃度の高いカプセルに閉じ込められブライブの
胸ポケットに収まわれている。
「さっきお主らが暴れた庭園を治さねばならんのう?」
すぐ下で蹲っていたオオカミに言うと申し訳なさそうに項垂れた。
「まぁ、よいよい。多少治すくらい簡単じゃよ…そう、簡単なはずなんじゃ
がのう…」
転移して戻って来た時には一面焼け野原になっていた。
建物も遺跡も、花々も全部が真っ黒に焦げて焦土と化していた。
残った魔力の痕跡からさっき戦った少女と見て間違いなさそうだった。
「これは…困ったのう」
今更人質を返しても、多分余計発狂しそうだった。
まだ身体も治ってないし、目覚めていないのだ。
多分彼が死んでいたら、被害はこれだけでは済まなそうだ。
「そうじゃ、こうしてはおれん!」
すぐに魔王城へと飛んでいったのだった。
今、魔王城を取りしきているのは孫のネフェリーだった。
女王だが、なかなかの策略家だった。
だから、魔王の座を渡した。
だが、さっきの少女が相手ではかなり厳しいものがある。
べライブだったからよかったが、もし現魔王が相手なら、勝てるかどうか
自信がない。
もしかしたら…やられてしまうかもしれない。
それほどにイリアが予想外に強かったのだった。
ケイルを抱き上げると屋敷へと戻った。
そしてまずは治療へと取り掛かった。
肉体へのダメージは大きく、しばらく使い物にならなそうだった。
「脅しくらいで頼むと言ったじゃろ?」
「くぅ~~ん」
今は膝下くらいの大きさになっているオオカミに話しかけると反省し
ているとでもいうように鼻を鳴らした。
「全く、加減をしてくれよ?これでも人質なんじゃなからのう」
多分焦って加減が効かなかったのだろう。
ブライブも一瞬焦ったのも事実だった。
ちょっと脅してやろう程度だったが、予想外に戦えていたからだった。
機転もいいし、発想も柔軟なようだ。
普通の魔物なら倒せていただろう。
が、さっき召喚すたのはA級ではない、S級クラスの魔物なのだ。
彼でどうにかなるレベルではない。
はずだった。
もし、バフが切れていなかったらどうなっていたか?
いや、バフが切れていたのではない。
ブライブがバフを解除したのだ。
彼に気づかれずに、そっと…
そのせいで彼は…
彼の勝ちとも言えた。
が、そんな事はさせなかった。
きっと彼は気づいてはいないだろう。
まだまだ強くなる。
そんな素質を秘めていた。
「これで勇者じゃなければよかったんじゃがのう」
身体に直接聞く魔法をかけると、彼の意識とは関係なく真実を語ってし
まう。
「どうじゃ、気分は?」
『…』
「お主の目的はなんじゃ?」
『A級の魔石を持ち帰る事…』
「なぜじゃ?」
『ネリウスのお母さんを助ける、早く帰らないと…』
「真の事じゃったんか?場所はどこじゃ?」
『メーザス領地の港のそば…』
「お前さんは勇者か?」
『違う…アルフレッド兄ちゃんと聖女のラニ姉ちゃんがこっちに向かっ
てる』
「なんじゃ、勇者でもないのか?その強さでか?」
『…』
ブライブは少し拍子抜けした気分だった。
さっきのイリアと言った少女は本当に強かった。
が、全く関係ないらしい。
「あのイリアという娘はなんじゃ?」
『大事な人…』
「恋人か?」
『違う…大事な、大事な家族。そして愛している人』
「それは恋人というんじゃないのか?」
『大事だから…汚せない…絶対に守る存在…』
「人間は難しいのう。家族でも好きならそれでいいじゃろ?それにお主
ら血も繋がってないじゃろ?」
『…』
「もういいわい。やめじゃ、やめじゃ!」
すぐにA級ランクの魔石を届けさせるとそっと眺めた。
すると、中にいた母親の顔色が良くなり、ネリウスという少年は嬉しそ
うに母親に抱きついていた。
「こういう姿を見るのも悪くないのう…」
今、ケイルの身体は魔力濃度の高いカプセルに閉じ込められブライブの
胸ポケットに収まわれている。
「さっきお主らが暴れた庭園を治さねばならんのう?」
すぐ下で蹲っていたオオカミに言うと申し訳なさそうに項垂れた。
「まぁ、よいよい。多少治すくらい簡単じゃよ…そう、簡単なはずなんじゃ
がのう…」
転移して戻って来た時には一面焼け野原になっていた。
建物も遺跡も、花々も全部が真っ黒に焦げて焦土と化していた。
残った魔力の痕跡からさっき戦った少女と見て間違いなさそうだった。
「これは…困ったのう」
今更人質を返しても、多分余計発狂しそうだった。
まだ身体も治ってないし、目覚めていないのだ。
多分彼が死んでいたら、被害はこれだけでは済まなそうだ。
「そうじゃ、こうしてはおれん!」
すぐに魔王城へと飛んでいったのだった。
今、魔王城を取りしきているのは孫のネフェリーだった。
女王だが、なかなかの策略家だった。
だから、魔王の座を渡した。
だが、さっきの少女が相手ではかなり厳しいものがある。
べライブだったからよかったが、もし現魔王が相手なら、勝てるかどうか
自信がない。
もしかしたら…やられてしまうかもしれない。
それほどにイリアが予想外に強かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる