異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

13話 後悔

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花の咲き乱れる庭園で、反応が消えた。
そこには大量の血痕と戦ったであろう爪痕が残っていた。

考えたくもない現実が目の前に突きつけられた気がした。

これから、二人で…
ずっとこの世界で生きていく…そう信じていた。
なのに…これはどう言うことだろう。

分からない…分からない…分からない

分からない…分からない…分からない

分からない…分からない…分からない

脳内がバグっている気がする。
理解したくない。

昔…いや、だいぶんと昔に…そうだ、一番最初に召喚された時に行った
覚えがある、あの城に…

魔王城に行けば…そうだ!
魔王を殺せばいいんだ。
もう一度ケイルに会える。

そう、もう一度お兄ちゃんに…佐野遼馬に会えるのだ。

戻してもらおう。
勇者なんて待たなくていい。
私が倒してあげる。
何もかも壊してあげる。

この世界だって…みんな壊れてしまえばいいんだ。

目の前が真っ赤に染まっていく気がした。
魔力が溢れて来る。

忘れていた、かつての力。
大きすぎるからと封印してしまった、あの頃の力が…欲しい。

全てを焼き尽くす。
そんな火力が…庭園だった場所は見るも無惨な姿となった。

すぐに向かおう。
あの城に…

魔力を込めると一気に飛び出した。
かつて、行った事のある場所。

昔は何人かで行ったあの場所は、今はたった一人で向かっている。

隣にいるはずだった人は…もういない。

見覚えのある景色に、見覚えのある門構え。

少し錆びれた気がするけど…もう、どうだっていい。
一気に魔力を込めると目の前の門を破壊していた。

その音に一斉に魔族が集まりはじめた。

丁度いい。
探す手間がはぶれるというものだ。

手当たり次第に殺しまくった。
ド派手な攻撃は大事なモノを見落とすというが、今はその大事なもの
なんて無くなってしまった。

力を制御していたせいだ。

初めから全力を出していれば、こんな結果にはならなかった。

怒りは誰に?

自分自身に向いていく。

焼けるように熱くなった大地を全て燃やす炎を。

魔族ごと、燃え尽きればいい。
気づいた時には城すら跡形もなくなっていた。

「もう、どうでもいい」

「それならここまで壊すのはやめて欲しいものだな?」

声の聞こえた先にいたのはあの老人だった。

元魔王だとケイルは言っていた。
多分鑑定を使ったのだろう。
ということは、現魔王がどこかにいるはずだ。

「あなたは引退したんでしょ?今の魔王はどこ?」

静かに、そして冷ややかな声で聞く。
イリア自身こんな冷静に話せるとは思いもしなかった。

「それを言うと思うのかね?」
「それも…そうね…死んでから後悔させてあげるわ」
「君にできるかな?勇者でもない、君に…」

挑発するような言い方に違和感はあったが、イリアはさほど何も思わ
なかった。

「最後に聞くけど…ケイルはどこ?私のよ?どこへやったの?」
「それがものを尋ねる態度かい?今時の子は口の聞き方がなってない
 ようだね…」

言う気はない。
そう言うことだろう。
なら、もう…用は、ない。

消し炭になればいい。

一気に火力をあげると空いっぱいに炎を生み出す。
無限とも取れる魔力に流石に言葉もないだろう。

一気に降り注ぐと多少残っていた石垣すら消え失せてしまった。

完全に焦土と化した大地を眺めると、そこには誰も立ってはいなかった。

土煙りが消えた後でも、何もない大地を眺め、一人空を仰いだ。

「終わった…終わったんだよね…お兄ちゃん」

一瞬、気を緩めた時に目の前に光が弾ける音がした。
そして足元に一気に闇が包み込む。

「なっ…これはっ…」

さっきまであった空が消えて、全てが闇に飲み込まれたのだった。
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