異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

20話 王族のその後

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ケイルが7歳という若さで亡くなった。

次の日には兄のハイドまでが部屋で殺されていた。
もちろん王宮でもこれは大きな騒ぎとなった。

「あなた!どうしてハイドが亡くなったのに、騎士団の調査を
 打ち切るのですか?犯人を捕まえないなど…王宮の恥ですわ」

朝から騒ぎ立てる妻を一瞥すると書類に目を戻した。
書記官が今、丁度新しい書類を持ってきたところだった。

ずっとこんな調子で騒ぎ立てているので、周りも慣れてきて放
置するような空気が流れている。

「奥方様、何か事情がおありなのでしょうから、そう騒ぎ立て
 ずとも…」
「これが黙っていられる事だというのですか?私の息子が二人
 も殺されたというのに…」
「…!」

声を荒げていうのを聞き逃さなかった。

「イリーナ、いつからケイルを自分の息子と認めたんだ?」
「そ、それは…わたくしが産んだんですもの…当たり前ですわ」

少し引き攣った顔で答えるが、そこには矛盾が生じていた。
妻のイリーナは一回もケイルに会いに行っていない。
そして、食事の指示は全てイリーナが指定した業者が行っている。
リーさんからの報告によると、食事には微弱だが毒の混入が確認
されていたのだった。

「はぁ~…もう、下がりなさい」
「ですがっ……明日も、来ますわ」

まだいい足りないと言わんばかりの様子で戻って行った。

「いいのですか?真実を言わなくて…」
「どーせ認めはしないだろう」

机の中に入っているのは裏ギルドの依頼完了を告げる書類だった。
そこにはハイドが依頼した、王族殺しの依頼内容が綴られていた。

「ハイドには亡くなってよかったと思っているよ。我が子ながら、
 あんな愚かな人間に育つとは…情けない。ケイルには悪い事をし
 てしまったな…親として愛情を注ぐこともできず、ただ傍観する
 事しかできなかった…」

妻の目があるので末の弟を可愛がる事はできなかった。
妻は常に長兄のハイドを、いたく可愛がっていたからだった。

王族にとって魔力の質や量は常に比べられるものだった。

ケイルには魔力の才能はなく、属性も全く反応しなかった。
だから、妻のイリーナも見た目が兄妹と違ったということもあって
か、余計に煙たがっていた。

リーさんから常に報告を受けている身としては生活魔法を初め、そ
の他の属性も使える事を知っていた。
攻撃魔法にはどうにも魔力不足だが、それ以外の分野においては秀
出ていると知った。

「あの子は無能なんかじゃなかったんだがな…」
「王様?」
「いや、いい。書類は終わったら人を呼んでおくから帰っていいぞ」

書記官は頭を下げると部屋を出て行った。
あれから何年かが過ぎて行った。

実質後継ぎには次男のロイドが有力候補になっている。
アンネはどこかの国へと嫁に出す予定だ。

せめて16歳になるまではと妻を説得した。
イリーナも貴族出の為、これ以上の出産は難しく、2年後には若い第
二婦人を娶った。
名前をフィアという。下級貴族の出身で出しゃばる事もせず、できた
娘だった。

その間に子供を生した。

男児をもうけ、イリーナにはしばらく養生というかたちで王城から無
期限追放した。

それからは何度も王宮に来たらしいが会う気もなかった。

男児はイジーと名付けた。
それから15年の月日が流れていた。

いまだに部屋から出ようとしないロイドの廃嫡が決まった。
ロイドは外に出る事はなかった。

ずっと引きこもり、一度だけ父親が見舞いに来た時に顔を合わせた。
その時に、知ったのだがハイドは弟のロイドにも微弱な毒を混ぜていた
らしく、顔は爛れ、見るも残酷な状態だった。

これでは外を歩く事など出来ないと理解した。

「お父様…僕を廃嫡してください。僕は…この見た目では部屋から出る
 など…」
「そうか、わかった。もし、何か入り用ならなんでも言うがいい。用意
 させよう」
「ありがとうございます…お父様…」

その会話以降、話もしてもいない。

アンネは隣国へと嫁に行き。
2人目の嫡子を孕ったという。
アンネ26歳。美しい容姿は健在で隣国の庭園は美しい花々が咲き乱れると
一躍、噂が流れ出る程で吟遊詩人はそれをネタに隣国の恋物語りを唄うっ
ているらしい。

「生きていれば…あの子は24歳か…王位を渡してもいい年齢だったな…」

今日はイジーの15歳の誕生を祝うパーティーが催される予定だ。
素直な子に育ってくれてよかったと心から思っている。

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