異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

21話 暗殺依頼

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この日ばかりは盛大なお祭り騒ぎだった。

街をあげての盛大なイベントだった。
もう過去の悲惨な事件を忘れるかのような賑やかさに混ざり込むように
黒い影がゆっくりと忍び寄っていた。

裏ギルド、ここにはいつも普通には依頼できない裏の仕事を頼む人間が
やってくる。

国の機関でも、取り締まることが出来ないこの組織の収入源は貴族達だ
ったので、どうしても警戒が甘くなってしまう。

そこへ一人の客人が現れた。
彼女は王都を追放されたかつての王妃、イリーナ・リアデイル。
この国の母なる存在だった。
かつての美しさはなく、やつれて年以上に老けて見えた。

「依頼は頼めるかしら…?」
「内容によって金額も変わりますが、依頼内容は何にしますか?」

フードを深く被ったままその女は何事かを囁いた。

依頼書を作成すると男から受け取り、前金を金貨で払った。

「お待ちください。これだけでは足りませんぜ?」
「ここは成功してもいない依頼にどれだけ取るつもり?」
「昔にね、とある坊ちゃんが依頼をしたんですが、前金しか払わず、
 しかも誓約書も返信しなかったんですよ?それも王族殺しの依頼を
 しておいてですよ?もう、お分かりいただけましたか?貴方の息子
 ですよ?」
「なっ…」
「規約違反で追徴金が未払いなもんでね…」

女性は舌打ちをすると金貨の入った袋ごと、机に放り投げた。

「これだけあれば足りるでしょ?必ず成功させなさい!」

苛立ちながら出ていくと、袋の中の金貨を確かめたのだった。
即、依頼が張り出されると、裏ギルドの会員達はこぞって金額と仕事
内容をみて、暗い顔をする。

それは今回祭りのメインであるイジー皇子の暗殺依頼だったからだ。
15歳の誕生日に盛大なパレードがある。
民衆の前に立つ時が唯一のチャンスだった。

漆黒の魔女のように城に忍び込んで暗殺してくるのは、普通なら無理な
話だった。

「おい、こんなの誰がやるんだよ?」
「そうだぞ。前に漆黒の魔女がやり遂げてから、警備が厳重になってど
 うにも手が出せないんだぞ?」
「そうだ、そうだ!」

確かに外出しない皇子はほとんどを城の中で過ごす。
外部の人間が入れるのは門の前までで卸業者が入れると思うかもしれな
いが、中までは入れないようになっていた。

厳しい監視の目があって常連以外は気軽には出入りできない。

すると、見知らぬ男が前へと出てきた。

「俺が引き受けよう」

髭を蓄えた中年の男だった。最近この国に流れてきたらしい。
冒険者ギルドに登録していたらしく、ランクも高かったらしいが、ちょ
っと問題を起こして数人惨殺してしまい、追放処分になったらしい。

裏ギルドにはそんな事は関係ない。
依頼さえこなしてくれれば金を払う。

そんなシステムなのだ。

その髭の男は依頼書にサインを書くと受付の男に出した。

「本当に大丈夫なんですかい?この依頼は…」
「一国の皇子の暗殺だろ?漆黒の魔女ができて俺に出来ないとでも思っ
 てるのか?」

自信満々の態度であった。
もちろん、この国に来てからの依頼数は多く。
どれも鮮やかな殺しを披露していた。

目撃者も全員惨殺し、痕跡を残さない。
これはかつての漆黒の魔女と似ていた。

彼女もこのギルドに顔を出したら、次は成功の報告にくる。
いつだって仕事が早く、忍び込むのも難しい場所にも簡単に入り込んで
依頼を遂行してくる。

「まぁ、期待してますぜ。旦那~」
「あぁ、数日のうちに終わらせよう…」

それだけ言うと出て行った。
賞金も結構高い。

誰もが受けたいが、命欲しさに手を出せずにいたのだった。

依頼は受けられても一応張り出されたままになっている。
それは、もし失敗した時の為に他にも受ける人を探す為でもあった。

こんな依頼なのだから受けようとする人は滅多にいない。
それでもみんな、一度は覗き込むのだった。

上の店には珍しくにつかわしくない若い男が入ってきた。
隣には可愛い彼女を連れての来店は珍しい。

銀髪の綺麗な顔立ちの男はカウンターに来るとマスター話しかけてき
た。

「依頼を見に来たんだけど…奥開けてくれるかな?」
「なんの事だ?ここは酒を飲みに来る場所だぜ?何かと勘違いしてる
 んじゃないのか?それとも女じゃ物足りねーなら相手するぜ?」

下品な笑いをする男に隣の女が舌打ちをした。

「これ見ても分からない?」

いきなり男の横にあったボトルが凍りついた。
さっきまで拭いていたコップが手から滑り落ちた。

「あんた…関係者か…なら、奥だ。おい、案内しろ」

カウンターの男が言うと、奥から別の男がドアを開けて中に招き入
れた。

「おとなしく言う事聞いてればいいのよ?それと…これは罰よ?」

女性の手が少し動き、カウンターの男の足元から凍りつき半日は動け
なくなってしまったのだった。

周りの視線が注目する中、奥へと入っていくとそこには掲示板に多く
の依頼が張り出されていて、まるで冒険者ギルドに似ていた。

「へ~こんな風になってるんだ~」
「ちょっと、そんなきょろきょろしないのっ!ついて来て」
「うん…分かった」

年齢的には女性のが若そうだが、どう見ても尻に敷かれているように
しか見えなかった。
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