異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

23話 パレード前夜

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パレードは目前にまで迫っていた。

イジー皇子が15歳になり成人すると言う事で多くの人達が詰めかけ
ていた。

まずは城の中で式典が行れ、それからそのまま街を大通りまで行き
戻ってくるというコースだが、高い建物からの攻撃には滅法弱い。

下は人で溢れ、騎士達が多くいるが頭上には誰も居ないのだ。

狙って下さいと言わんばかりだった。

「さ~て…どこを狙うかしらね~」
「俺は…多分だけど最後の城に入る前じゃないかな?」
「それはどうして?出て来たところで殺してもいいし、一番遠くに離
 れた場所なら失敗しても、まだ狙えるわよ?」
「う~ん、なんとなくだけど…一番警戒が緩む場所だから?…かな」
「ま…確かにね。なら二手に分かれましょ。私は一番遠い場所の屋上
 で待機するわ。ケイルは…」
「おっけ。イリア…協力してくれて…ありがとう」

ケイルが自分だけに見せるこの笑顔が好きだった。
もちろん、昔の兄も好きだったが、今は中身も外見も完璧だった。

「わ、分かってるわよね?バレないようにこっそりよ?」
「うん…」

下見に来たついでに死角になりそうな場所にはあらかじめ邪魔になる
ような荷物を置いておいた。

もう明日には盛大なお祭りが始まる。
そこで皇子の暗殺などさせてなるものか!

早く依頼人を突き止めたいところだけど、言うはずもない。

「依頼を取り消させるって訳にはいかないよな?」
「それは無理よ。だって調べる手段がないもの。唯一パレード終了後
 に、ギルドから出ていく鳩を捕まえればいいから…それは後回しね」

成功しても、失敗しても連絡は行くのだ。
イリアはいつかこの裏ギルド自体を潰してやりたいと思っていた。
ケイルを殺す依頼を受けたのも、ここだった。

最初は簡単な依頼だった。
たった7歳の子供を殺すだけの依頼だと思っていた。
それが、こんな巡り合わせになるなんて思っても居なかった。

今、隣に成長した青年がいる。
24歳と言ってもまだ若く、かっこいい。
イリアは暇だとつい見つめてしまう。

「イリア?どうした?体調でも悪いか?」
「なんでもないわよっ/////」

いつも子供扱いしてくる青年がこんなに愛おしいと思える日が来る
とは…

この世界では誰も信じないと誓った過去の自分を笑ってやりたい。
今はこんなにも幸せなのだと。

「明日は、ここで待機でいいかな…イリアはこっちで待機だよな?
 合図はどうする?」
「えっ…あ、うん。」
「聞いてるか?もう不死身じゃないんだろ?気分悪いなら休むか?」
「う、うん…ケイルが膝枕してくれるなら…」

一瞬何が言いたいか測りかねたようだが、すぐにベッドに座ると手
招きしてきた。

それに従うようにイリアも横に座った。

ケイルも結構鍛えているせいか少し硬いけど、膝の上に頭を乗せる
と目を瞑った。

優しい視線と、時折り頭を撫でてくる手が気持ちよかった。


当日、盛大なパレードの裏で暗躍している暗殺計画に気付いている
者は少なく思われていた。

だが、予想外な事が暗殺者に起きていた。

数日前までは無かった邪魔な荷物が屋上に置かれていた事だった。

嫌に重く、動かす事もできなかった。

「なんだぁ~これは…」

下見をした時には無かったはずだ。
同業者の嫌がらせだろうか?

場所を変えざるを得なくなった。

それだけでは終わらなかった。
皇子が乗る馬車はオープン式のもので上からは丸見えの物だったはず…
が、急遽屋根付きのものへと変更になったらしい。

それも大きめの屋根がある為、一発で殺すには大きな魔法を使うしかな
いが、こんな場所で魔法を練れば誰かに気づかれてしまう恐れがあった。

なので頭上からの射撃で仕留める予定だった。

教会の周りにはあらかじめ反組織からの圧迫で回復術師が来られないよ
うにしておいた。

あとは、致命傷を与えれば確実に死に至るだろう。
一応毒も仕込んである。

ここまで準備しておいたというのに、邪魔をしている人間がいるようだ
った。

「全く…邪魔な連中はあとで始末しておかないとな…」

髭を触りながら男は場所を変更して一番城に近い場所へとやって来た。

そこには上からパレードを見ようとしている青年が下を見下ろしていた。
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