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第三章
24話 思わぬ来訪者
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パレードの始まる数時間前。
ケイルとイリアは自分の配置場所についていた。
ケイルは高い建物の上からパレードが行われる下を見下ろしていた。
後ろから髭をはやした老人が近づいてくるのに気づくと振り向く。
「こんにちわ~。パレードを見に来たんですか?」
「あぁ、下は人が多くてかなわん。ここならゆっくりと見えると思
てね」
「そうですかぁ~、俺もそうなんです。下の警備すごいですよね~
あれじゃ~見えないですね!」
何も知らない呑気な顔で話しかけてくる青年に男は油断を誘う。
きっと、仕方がないと思っているだろう。
犠牲はつきものだと…
聖堂の鐘が鳴り響き、式典が終わった事を指していた。
「もうすぐですね!ここで一緒に見ますか?」
「そうだな…君には悪いが、ここで寝ててもらえるかな?」
一気に男が動くと懐のナイフを引き抜き何も知らなそうな青年へと突
き刺していた。
そう、突き刺したはずだった。
しかし、そこにはもう青年の姿は無かった。
さっきまで男がいた場所に青年が立っている。
どうなっているのか理解する前にすぐに動いていた。
見られたからには生かしておいてはいけない。
ナイフを持った手を強く握るとすぐにもう片方の手でマジックアイテム
を取り出した。
床に叩きつけるとすぐにジャンプした。
一気に地面で割れると白い粘着質のモノが一面に広がった。
「なっ…何これ…」
青年の足元にびっしりと白い粘着質のものが一瞬で伝っていく。
「逃げられると思うなよっ…お前は運が悪かったんだ。ここにいなければ
死なずに済んだものを…」
「そう?むしろビンゴだと思うけどな~」
呑気に言うと、足元のモノが靴にくっついて取れないのか動きにくそうに
している。
男は近くの柵に乗ったので自由に動ける。
「悪く思うなよ…青年、最後だ…」
男の声と共に毒のついたナイフが飛んでくる。
が、青年は腰の剣で即座に叩き落とした。
それも3個いっぺんに投げられたナイフを…だった。
「偶然もそこまでだ…今度は死んでもらうぞ?」
男は弓を出して連射で引いていく。
もちろんこんな至近距離で避けれる訳はない。
そう思っていた。
が、予想外にも全部が叩き落とされたのだった。
「お前は…何者だ!」
「イジー皇子を護る者かな?」
銀糸の髪の青年はにっこりと笑うと、まるで自分がここに襲撃に来る事
を知っていたとでも言っているようだった。
「あの荷物はお前が…」
「あっ、気づいた?ってことは本当は別の場所で狙うつもりだった?」
まるで呑気に会話をしているみたいで少し苛立ちが募る。
パレードはもうすでに始まっている。
真下を通って奥へと向かっている。
チャンスは今度、帰ってきた時。
しかし、目の前にいる青年は確実に仕留めなければならない。
顔を見られただけでなく、わざと邪魔までして来たのだ。
「生きて帰れると思うなよ?」
「う~ん、できれば生きて捕まえたいんだけど…」
甘い考えを言うと男は髭を撫でながら苛立ちを抑えた。
完全に油断している。
いや、馬鹿にしているのだろう。
この青年に打ったせいで残りの弓も数本だった。
ここでこのまま殺りあっても仕方がない。
早く目的を殺らなければっ!
男は焦っていた。
どうせ、青年は暫く動けないのだから…と。
目的を変えるように帰ってくる馬車を狙う。
もちろん上からでは屋根に阻まれて見えない。
が、それも想定済み。
矢の先にだけの魔力を込めて吹き飛ばせばいい。
そんな油断が、男の依頼失敗へと誘う。
「敵から目を離しちゃダメでしょ?」
真横から聞こえた声に一瞬心臓が跳ねた。
「まさかっ…」
振り向くと靴だけが残された場所に青年はもう、いなかった。
真横でにこやかに話してくる青年に身構える前に意識が刈り取られて
いたのだった。
「ケイル~大丈夫?って何よこれ…」
「なんかとりもちみたいなもんかな?靴どうしよう?」
真ん中に取り残された靴を眺めながら地面に意識を失っている男を見た。
「犯人…よね?」
「うん、そうだね。通報すればいいかな?」
「まぁ~、そうね…」
自分の罠にしっかり引っかかった男を眺めながら警備隊へと報告した
のだった。
無事にパレードは終了して城の中に入って行ったのを確認すると少し
寂しそうに眺めていた。
「ケイル?」
「さぁ。行こうか?」
「…」
どこか寂しそうな横顔にイリアはそれ以上何も言えなかった。
昨夜、城内へとこっそり忍び込んだ際に王の寝室へ置き手紙を置いて
来ていた。
そこにはパレード当日に暗殺者が来る事と、馬車の変更。
そして騎士の増員だった。
何事もなく終わった事でただの悪戯かとも思ったが、警備隊によって
男が連行されてきた。
毒を仕込んだ矢を携えた男はパレードの見える場所で気絶していたら
しい。
しかも殺すのではなく、生かしておいたらしい。
誰がこんな事を…?
警備隊の話では子供が手紙を持ってきて、そこにいくとこの男が倒れて
いたらしい。
男は目が覚めると、見知らぬ青年にはめられたと訴えていた。
持ち物から見ても、暗殺を企てていた事が見て取れるが、男はそれを認
めはしなかった。
そして、その夜に再び思わぬ来客者があった。
ケイルとイリアは自分の配置場所についていた。
ケイルは高い建物の上からパレードが行われる下を見下ろしていた。
後ろから髭をはやした老人が近づいてくるのに気づくと振り向く。
「こんにちわ~。パレードを見に来たんですか?」
「あぁ、下は人が多くてかなわん。ここならゆっくりと見えると思
てね」
「そうですかぁ~、俺もそうなんです。下の警備すごいですよね~
あれじゃ~見えないですね!」
何も知らない呑気な顔で話しかけてくる青年に男は油断を誘う。
きっと、仕方がないと思っているだろう。
犠牲はつきものだと…
聖堂の鐘が鳴り響き、式典が終わった事を指していた。
「もうすぐですね!ここで一緒に見ますか?」
「そうだな…君には悪いが、ここで寝ててもらえるかな?」
一気に男が動くと懐のナイフを引き抜き何も知らなそうな青年へと突
き刺していた。
そう、突き刺したはずだった。
しかし、そこにはもう青年の姿は無かった。
さっきまで男がいた場所に青年が立っている。
どうなっているのか理解する前にすぐに動いていた。
見られたからには生かしておいてはいけない。
ナイフを持った手を強く握るとすぐにもう片方の手でマジックアイテム
を取り出した。
床に叩きつけるとすぐにジャンプした。
一気に地面で割れると白い粘着質のモノが一面に広がった。
「なっ…何これ…」
青年の足元にびっしりと白い粘着質のものが一瞬で伝っていく。
「逃げられると思うなよっ…お前は運が悪かったんだ。ここにいなければ
死なずに済んだものを…」
「そう?むしろビンゴだと思うけどな~」
呑気に言うと、足元のモノが靴にくっついて取れないのか動きにくそうに
している。
男は近くの柵に乗ったので自由に動ける。
「悪く思うなよ…青年、最後だ…」
男の声と共に毒のついたナイフが飛んでくる。
が、青年は腰の剣で即座に叩き落とした。
それも3個いっぺんに投げられたナイフを…だった。
「偶然もそこまでだ…今度は死んでもらうぞ?」
男は弓を出して連射で引いていく。
もちろんこんな至近距離で避けれる訳はない。
そう思っていた。
が、予想外にも全部が叩き落とされたのだった。
「お前は…何者だ!」
「イジー皇子を護る者かな?」
銀糸の髪の青年はにっこりと笑うと、まるで自分がここに襲撃に来る事
を知っていたとでも言っているようだった。
「あの荷物はお前が…」
「あっ、気づいた?ってことは本当は別の場所で狙うつもりだった?」
まるで呑気に会話をしているみたいで少し苛立ちが募る。
パレードはもうすでに始まっている。
真下を通って奥へと向かっている。
チャンスは今度、帰ってきた時。
しかし、目の前にいる青年は確実に仕留めなければならない。
顔を見られただけでなく、わざと邪魔までして来たのだ。
「生きて帰れると思うなよ?」
「う~ん、できれば生きて捕まえたいんだけど…」
甘い考えを言うと男は髭を撫でながら苛立ちを抑えた。
完全に油断している。
いや、馬鹿にしているのだろう。
この青年に打ったせいで残りの弓も数本だった。
ここでこのまま殺りあっても仕方がない。
早く目的を殺らなければっ!
男は焦っていた。
どうせ、青年は暫く動けないのだから…と。
目的を変えるように帰ってくる馬車を狙う。
もちろん上からでは屋根に阻まれて見えない。
が、それも想定済み。
矢の先にだけの魔力を込めて吹き飛ばせばいい。
そんな油断が、男の依頼失敗へと誘う。
「敵から目を離しちゃダメでしょ?」
真横から聞こえた声に一瞬心臓が跳ねた。
「まさかっ…」
振り向くと靴だけが残された場所に青年はもう、いなかった。
真横でにこやかに話してくる青年に身構える前に意識が刈り取られて
いたのだった。
「ケイル~大丈夫?って何よこれ…」
「なんかとりもちみたいなもんかな?靴どうしよう?」
真ん中に取り残された靴を眺めながら地面に意識を失っている男を見た。
「犯人…よね?」
「うん、そうだね。通報すればいいかな?」
「まぁ~、そうね…」
自分の罠にしっかり引っかかった男を眺めながら警備隊へと報告した
のだった。
無事にパレードは終了して城の中に入って行ったのを確認すると少し
寂しそうに眺めていた。
「ケイル?」
「さぁ。行こうか?」
「…」
どこか寂しそうな横顔にイリアはそれ以上何も言えなかった。
昨夜、城内へとこっそり忍び込んだ際に王の寝室へ置き手紙を置いて
来ていた。
そこにはパレード当日に暗殺者が来る事と、馬車の変更。
そして騎士の増員だった。
何事もなく終わった事でただの悪戯かとも思ったが、警備隊によって
男が連行されてきた。
毒を仕込んだ矢を携えた男はパレードの見える場所で気絶していたら
しい。
しかも殺すのではなく、生かしておいたらしい。
誰がこんな事を…?
警備隊の話では子供が手紙を持ってきて、そこにいくとこの男が倒れて
いたらしい。
男は目が覚めると、見知らぬ青年にはめられたと訴えていた。
持ち物から見ても、暗殺を企てていた事が見て取れるが、男はそれを認
めはしなかった。
そして、その夜に再び思わぬ来客者があった。
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