異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

文字の大きさ
89 / 92
第三章

25話 思わぬ結末

しおりを挟む
静かな夜に足音もなく窓が開いた。

「誰だ!」
「怪しいものではないです!って言ってもこんな時間じゃ怪しまれ
 るかな?」
「そうでしょうね?だって窓から来てるんだし~」
「そうだね。少し話があって来たんです。決して危害を加えるつもり
 はないんです」

言い訳でも言うように話す男女二人の声がする。

「いい、構わん。イジー皇子の件だな?」
「はい。暗殺依頼が出されたままなので、それをなんとかして欲しい
 のです」
「なぜ、そんなに気にするんだ?君には関係のない事だろう?」
「…」

王様の声は懐かしくて、たった数回しか聴いた事などないはずなのに、
耳に残っていた。

月明かりに見える侵入者に王の目が首付けになった。
珍しい銀糸の髪、そして赤い瞳。
まるで亡くなったはずの息子を見ているようだった。

リーさんから何度も聞かされた賢い末の息子。
会いにいく事もできず、7歳で亡くなったとばかり思っていた。

「ケイル…なのか?」
「…!?」

突然名前を呼ばれて戸惑った。
まさか、そんなはずは…ないと。

「あのっ…」
「ケイルなのだろう?生きていたのか…?」
「ち、違います!俺は…」
「よく顔を見せてくれ…うん、確かにケイルだ。生きていたのだな」

すぐに窓際まで来るとケイルの顔を見たくて触れてくる。
こんな反応されるとは思ってもいなかったので、戸惑ってしまう。
もう、亡くなってから年数も経っている。
てっきり忘れているものと思っていた。

「間違いない。生きていて嬉しいぞ。」
「それは…」
「だが、どうしてだ?今までどこにいたんだ?」
「私が偽装して連れて行ったのよ?暗殺しようとした相手の側には置
 いておけないでしょ?」

横にいた女性が言うと、まだ若そうに見える。

「なら、もうここに戻るか?」
「いえ…俺はもう死んだ人間だから。冒険者として生きていきます。だ
 からせめて…イジーだけでも護ってやってほしい」

自分を大事に思うなら、代わりに大事にしてやってほしいと。

裏ギルドから飛び立った鳩を捕まえ、依頼内容と、依頼者の書かれた紙
を差し出した。

そこに書かれていた内容と名前を見て、手が震えるのを見た。

「あとは任せていいですよね?…もう、ここには二度と来ない。…だか
 ら、元気で」
「待ってくれ…ケイルっ!」

その場にはもう、誰もいなかった。
窓が開け放たれていて、涼しい風がカーテンを揺らした。


朝早くに城の中は大騒ぎになっていた。
元王妃のイリーナが王によって呼び出されていたからだった。

もちろん、彼女は依頼が失敗した事など知らない。
久々に呼ばれた事に喜びを感じ、ドレスでおめかしして来ていた。

しかし、着くなりすぐに拘束されて引きずられるように家臣の集まる前
に放り出された。

「これは一体どういった事なの!私を誰だと思っているの!」

王の御前であろう事か王の横に立つフィアの姿を見ると顔を真っ赤にし
て怒鳴り散らした。

「この女狐!そこは本来私が立つ場所だと言う事をわきまえなさい。貴
 方はただの第二婦人に過ぎないのよ!身の程を…」
「黙れ!」

一瞬で、その場が鎮まりかえった。

沈黙の後で王が見せた書類を横の官僚が読み上げる。
それは裏ギルドへ依頼した確固たる証拠だった。
そして、依頼されて来た暗殺者は無様にも自分の仕掛けた罠にハマって
動けなくなっていたところを通報で見に来た警備兵に取り押さえられた。

実に間抜けな暗殺者もあったもんだった。

だが、それも男の発言で銀糸の髪の青年が絡んでいると知った時に、王
の頭には一人の人間が思い当たった。

生きていれば、今年で24歳になるだろう。
確実に王位継承権を持っていたはずだった。

しかし、彼はもう戻る気はないといっていた。
実に惜しい人材かもしれない。

「これは…誰かがはめるためにやった事に決まってるわ!ね~私がこん
 な事をするわけないでしょ?実の息子を二人も殺されたのよ?」
「その犯人ならもう分かっている。だから、言わなかったんだ…」

王の断固たる声に王妃は目を見開いた。

そこにはハイドのサインの書かれた依頼書まであったのだった。

「これで分かったか?」
「…で…でも……ハイドは…」
「それも、分かっておる。が、不問にする事にした。」
「ど…どうして…?」
「わからぬか?わからぬのならもういい。この罪人を連れて行け。処罰
 はおって伝える」
「待って、…待って王様!私の事を愛しているなら…こんな些細な事く
 らい…」

言ってからすぐに口をつぐんだ。

冷たい視線が物語っていたからだ。
何も言えなくなると、そのまま連れて行かれた。

皇子の暗殺を企むなど、重罪だった。
普通なら民衆の前で打首となるところを、寛大な処置が取られ王室の一角
で密かに行われた。

元王妃の遺体はすぐに火葬されて何も残さなかった。

王妃の息子である、ロイドと嫁に行ったアンネには何も伝えなかったが、
兵士達の噂から耳にしたロイドは気が狂ったかのように部屋で自害した
のだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...