異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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第三章

26話 幸せのカタチ

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しばらくは裏ギルドにも監査が入ると活動を自粛するはめになった。

そのせいかこの国から暫く暗殺家業をする者が出て行く事態になっ
たのだった。

「結果オーライかな?」
「でも、またすぐに再開するわよ?そう言うもんよ」
「それでも、暫くは暗殺なんて依頼は出ないでしょ?」
「甘いわね~、人間ってのは自分より待遇がいいってだけで相手を
 恨む生き物なのよ?ケイルだって兄弟で待遇が違ってたらムカつく
 でしょ?」

じーっとイリアを見つめてくると、すごく恥ずかしくなってしまう。

「イリアが喜ぶならそれでもいいかな~」
「なっ、そう言う事じゃなくて~~~!もういい!」

確かに前世でもそんな性格だった。

圭子が喜ぶなら自分よりも妹を優先する兄だった。

「普通は自分を優先するの!それが普通なの!」
「俺にはイリアさえいればいいから…イリアの為なら命だってかけて
 もいいって思うけど…?」

明らかに普通じゃない。
そう言う兄だからこそ、イリアが大好きになったのだ。

見た目が変わって、実の兄に殺されそうになってさえも人を信じる。
そんな性格だからこそ、イリアも大事に思えるし、裏切らないと確信
を持てるのだ。

それまで長く生きて来た上で、人とは信じるだけ無駄だと理解した。
が、兄だけは違う。

「もう、いいから何か依頼探すんでしょ?」
「あぁ、行こうか?」

手を出されると、つい握ってしまう。
この物珍しい銀糸の髪の青年は街の中でも注目の的だった。

紳士的で顔もいい。
冒険者としてもAランクとくれば誰もが、お近づきになりたがる。
もちろん、横にはイリアがいるので女が近づいて来る事はない。

よっぽどの世間知らずでない限りは…。

「何の依頼にしようかしら~」
「これなんかどう?オーガの出没から周辺の調査と撃退…」
「そうね、オーガくらいなら多くても平気そうね」
「ブラックウルフの方もどうする?」
「それも捨てがたいわね~。どっちも受けちゃう?」

イリアが言うと、ケイルもニッコリと笑って見せる。
受け付けに持って行くとすぐに受諾された。

「ちょっと待ってください。指名依頼があります」
「指名依頼?」
「そうなんです。緊急でお二人に指名依頼が来てるんです!」

受付嬢は慌てるようにケイルとイリアを呼び止めたのだった。
待ち合わせの場所は豪華な食事で有名な場所だった。

貸切りなのか客が誰も入ってこなかった。

「ここであってるんだよな?」
「そのはずよ?って言うか、なんで私たちに指名が来るのかしら?」
「…?」
「だって、冒険者って同じ場所に止まらないのよ?私達だってすぐに
 出て行く予定だったでしょ?」

言われてみればそうだった。
路銀を稼いだらすぐに立つ予定でいた。

そしてこんなタイミングで声が掛かるのもおかしい。

すると豪華な馬車が店の前に停まった。

店に入って来たのは一つのファミリーだった。
父親と妻、そして子供の3人だった。

ケイル達を見つけるとすぐに寄って来る。

「どうして…」

「どうしてもお礼を言いたくてな。息子を守ってくれてありがとう。
 警備兵に通報したのも暗殺者を生きたまま捕まえたのも君達だろう
 ?」

真っ直ぐに見つめているのはこの国の王であり、ケイルの実の父親だ
った。
そしてその横にいるのは第ニ婦人のフィア。その横にはイジー皇子が
いたのだった。
一緒になって頭を下げる姿は、ただの息子を大事に思っている親だっ
た。

「いえ、よかったです。無事で…」
「お前のおかげだ、ケイル…」
「あの、それではこの方が?」
「あぁ、私の息子だ」

妻の前ではっきりと言った。

「お兄ちゃん…なの?」
「違うよ?俺はしがない冒険者だよ。イジー皇子、大きくなって誰もが
 平和で争う事のない誠治を目指して欲しい。大事な人を守れる男にな
 って欲しい。」
「うんっ!僕、いっぱい勉強して立派な王様になるよ!」
「誰もが認める…そんな人になってください」

ケイルはイジーに向き合うと自分が生きるはずだった場所で、存分に生
来て欲しいと思った。

「本当に…もう戻らないのか?」
「戻りません。ケイルはもう死んだんです。死んだはずの人間がいきな
 り現れたら、びっくりするでしょ?」
「しかし…」
「それに、俺には向いてないです。こうやって自由に生きるのが性に合
 ってるので…」

イリアの肩を抱き寄せると今が幸せなのだと言った。

食事だけ済ませると王様から報奨金として結構な額の金額をもらった。

「これは…さすがに…」
「受け取りなさい。親として何もしてやれなかったが、せめてもの選別
 だ。これでも少ないくらいだが、きっと冒険者としても稼いでいるの
 だろう?」
「あははははっ…まぁ、まぁ、かな…」

予想以上の収入を得て、依頼をこなすとすぐに街を出たのだった。
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