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第三章
27話 好きな気持ちは変わらない
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国境を渡って隣の国へと来ていた。
ケイルもイリアもここに来るのは初めてだった。
前は反対の国を渡って行ったので、こちらには来る用事すらなかった。
そこで、隣国の皇子の訃報を聞いた。
「ロイド兄さん…」
「仕方ないわよ、ケイルにとっても母親…なんだよね?」
「いや…俺は……嫌われてたから…」
だから悲しくないというわけではないのだろう。
言葉にしがたい感情があるのだろう。
「私がいるから…ずっと側にいるから…」
「うん…」
イリアは気の利いたセリフすら言えないけど、兄妹として…人生の先輩
として導いて行かなければと思う。
「ごめんな?この身体の母親ってだけだから…親らしい事も何もされた
事、ないのに…」
憎まれていた…この見た目のせいで嫌われていたのだ。
「俺さ…この見た目が嫌で隠してきたんだ…でも、もう隠さない。あり
のまま、生きて行くって決めたんだ」
「うん、私もその髪も瞳も綺麗だと思うよ?」
そんな風に言われた事などなかったから、イリアに言われて嬉しそうだ
った。
「ありがとう。そんな事を言うのはイリアくらいだよ」
「そんな事ないと思うけど…まぁ、いいか…」
いつも近寄って来る女は絶対にケイルの見た目で惹かれていると思う。
けど、実際はケイルの隣にイリアがいるのだから誰も近寄ってこれない。
今さえも受付け嬢の視線がケイルに向かっている。
熱い視線を向けていても、ケイルにとっては眼中にない。
元々鈍感な兄だったと改めて思う。
それがイリアにとっては少しホッとしているところでもあった。
女好きだったら、この世界では女遊び放題だろう。
「ケイルってほんと鈍感だよね…」
「そうか?俺にはイリアに好かれるのが一番嬉しいけど?」
そんな事を平気で言うから、この熱い視線に気付けないのだろう。
「あの~、この依頼なんてどうですか?」
「では、それでお願いします」
「はい、分かりました。この後私、休憩に入るんです…」
「そうですか、ゆっくり休んでください。イリア行こうか?」
「そうだね…ゆっくり休んでね!」
わざとイリアが言うと、受付け嬢の顔は真っ赤になりながら何か言い
たげな表情になる。
言いたい事は分かっている。
ケイルを誘っていたのだろう。
が、この鈍感な男にはそんな言い方では全く通じないのだ。
「お腹すいちゃった~、ちょっと食事してから行こう~?」
「そうだな。どっかレストランでも入るか!」
「うん、私さっき見たところがいいな~」
「さっきって…あぁ、さっきな。」
勘は悪くない。
だが、ただ鈍感なのだ。
レストランでも数人に声をかけられたが、イリアしか目に入っていな
いせいか誰にも振り向く事はなかった。
「ケイルさぁ~、さっきのお誘い知ってた?」
「お誘い?何か誘われたのか?」
大きなため息を漏らすとさっき話して来た女性の事を指した。
『私、このホテルの24号室に停まってるんだけど…夜に待ってるわ』
イリアにもちゃんと聞こえていた。
こんな誘い文句を何度も何度も横で聞かされているのだ。
「あぁ、なんか夜がどうのって言ってたな?夜は早く寝て朝に備えな
いとな」
うん、それはいいのだが。
夜のお誘いといえば、一つしかない。
「ケイルって女性に興味ないの?」
「はぁ?/////…興味ないわけじゃ…」
「でもさ~、誘われても全然嬉しそうじゃないじゃん?」
「俺なんか誘う人はいないだろ?」
「もう、そんなんだから…私はケイルのこと、すっごく魅力的だって
思うよ?ずっと一緒に居たいし、抱かれたいって思うもん」
「なっ…それは…///////」
真っ赤になって言葉に戸惑うケイルにイリアはちょっと意外だと思っ
た。
「うそっ…」
「まだ、早いだろ?は…二十歳になったらだな…えーっと、嫌いじゃ
なければ俺と付き合って欲しいと言うか…えっと…」
「私の事そんなに好きなの?」
「…/////」
女性に興味がないわけではなくて。
始めからイリアにしか興味がなかったと言う事になる。
それはつまり、昔から圭子である妹を好きだった事になるのだ。
イリア自身、自分で言っておいて急に恥ずかしくなった。
「早く食べて、依頼をしに行くわよ」
「あぁ…そうだな…」
口数も減ってしまう。
知ってしまえば、簡単な事だったがそれでも嬉しさのが勝っていた
ように思える。
いつしか、永住出来る街を探していた気がする。
家は異空間の中に入っている。
あとは土地を見つけるだけだった。
誰からも干渉されない場所がいい。
景色が良くて静かな場所。
そんなところでなら二人で過ごすのも悪くないだろう。
ケイルもイリアもここに来るのは初めてだった。
前は反対の国を渡って行ったので、こちらには来る用事すらなかった。
そこで、隣国の皇子の訃報を聞いた。
「ロイド兄さん…」
「仕方ないわよ、ケイルにとっても母親…なんだよね?」
「いや…俺は……嫌われてたから…」
だから悲しくないというわけではないのだろう。
言葉にしがたい感情があるのだろう。
「私がいるから…ずっと側にいるから…」
「うん…」
イリアは気の利いたセリフすら言えないけど、兄妹として…人生の先輩
として導いて行かなければと思う。
「ごめんな?この身体の母親ってだけだから…親らしい事も何もされた
事、ないのに…」
憎まれていた…この見た目のせいで嫌われていたのだ。
「俺さ…この見た目が嫌で隠してきたんだ…でも、もう隠さない。あり
のまま、生きて行くって決めたんだ」
「うん、私もその髪も瞳も綺麗だと思うよ?」
そんな風に言われた事などなかったから、イリアに言われて嬉しそうだ
った。
「ありがとう。そんな事を言うのはイリアくらいだよ」
「そんな事ないと思うけど…まぁ、いいか…」
いつも近寄って来る女は絶対にケイルの見た目で惹かれていると思う。
けど、実際はケイルの隣にイリアがいるのだから誰も近寄ってこれない。
今さえも受付け嬢の視線がケイルに向かっている。
熱い視線を向けていても、ケイルにとっては眼中にない。
元々鈍感な兄だったと改めて思う。
それがイリアにとっては少しホッとしているところでもあった。
女好きだったら、この世界では女遊び放題だろう。
「ケイルってほんと鈍感だよね…」
「そうか?俺にはイリアに好かれるのが一番嬉しいけど?」
そんな事を平気で言うから、この熱い視線に気付けないのだろう。
「あの~、この依頼なんてどうですか?」
「では、それでお願いします」
「はい、分かりました。この後私、休憩に入るんです…」
「そうですか、ゆっくり休んでください。イリア行こうか?」
「そうだね…ゆっくり休んでね!」
わざとイリアが言うと、受付け嬢の顔は真っ赤になりながら何か言い
たげな表情になる。
言いたい事は分かっている。
ケイルを誘っていたのだろう。
が、この鈍感な男にはそんな言い方では全く通じないのだ。
「お腹すいちゃった~、ちょっと食事してから行こう~?」
「そうだな。どっかレストランでも入るか!」
「うん、私さっき見たところがいいな~」
「さっきって…あぁ、さっきな。」
勘は悪くない。
だが、ただ鈍感なのだ。
レストランでも数人に声をかけられたが、イリアしか目に入っていな
いせいか誰にも振り向く事はなかった。
「ケイルさぁ~、さっきのお誘い知ってた?」
「お誘い?何か誘われたのか?」
大きなため息を漏らすとさっき話して来た女性の事を指した。
『私、このホテルの24号室に停まってるんだけど…夜に待ってるわ』
イリアにもちゃんと聞こえていた。
こんな誘い文句を何度も何度も横で聞かされているのだ。
「あぁ、なんか夜がどうのって言ってたな?夜は早く寝て朝に備えな
いとな」
うん、それはいいのだが。
夜のお誘いといえば、一つしかない。
「ケイルって女性に興味ないの?」
「はぁ?/////…興味ないわけじゃ…」
「でもさ~、誘われても全然嬉しそうじゃないじゃん?」
「俺なんか誘う人はいないだろ?」
「もう、そんなんだから…私はケイルのこと、すっごく魅力的だって
思うよ?ずっと一緒に居たいし、抱かれたいって思うもん」
「なっ…それは…///////」
真っ赤になって言葉に戸惑うケイルにイリアはちょっと意外だと思っ
た。
「うそっ…」
「まだ、早いだろ?は…二十歳になったらだな…えーっと、嫌いじゃ
なければ俺と付き合って欲しいと言うか…えっと…」
「私の事そんなに好きなの?」
「…/////」
女性に興味がないわけではなくて。
始めからイリアにしか興味がなかったと言う事になる。
それはつまり、昔から圭子である妹を好きだった事になるのだ。
イリア自身、自分で言っておいて急に恥ずかしくなった。
「早く食べて、依頼をしに行くわよ」
「あぁ…そうだな…」
口数も減ってしまう。
知ってしまえば、簡単な事だったがそれでも嬉しさのが勝っていた
ように思える。
いつしか、永住出来る街を探していた気がする。
家は異空間の中に入っている。
あとは土地を見つけるだけだった。
誰からも干渉されない場所がいい。
景色が良くて静かな場所。
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