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27 一生に一度の願い
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大輔が帰ってきたのを呼び止めるとゆっくりと部屋へと移動した。
車椅子からベッドへ移ると机の上の薬を指す。
「大輔どう言う事?これ誰のか分かるよね?」
「あぁ、そうだな。俺のだ!」
「はぁ~…先月俺を抱いた時か?」
「そうだな…別に後悔なんかしてねーよ?」
「冗談だろ?…嫌がらせかよ…なんでうつってんだよ…いや、俺が
悪いのか…俺が生きたいって思ってるから…。一緒に暮らしたい
なんて思うんじゃなかった…」
「違う!俺がそうしたかったから…俺も稔の痛みや苦しみを知りた
くて…」
「ふざけんなよ!遊びじゃないんだ…死ぬんだよ?」
俺が怒ってる理由もわかってくれない。
軽々しく、自分から病気になりたいなんて言うバカだとは思わなか
った。
「俺がどんなに苦しいか…どんなに辛くて、どんなに怖いかなんて
どうして分かってやれるって言うんだよ…。」
「それは…、同じならいつでも心配せずに触れられるしキスもでき
るじゃん!いつも遠慮してただろう?」
「そんな事どうでもいいよ、もうでてけ!二度と顔も見たくない!」
俺ははっきり言うと興奮したせいで息が上がっている事に気づいた。
極力平常心を保つように心がけていたのに…。
息が上がると苦しくて、眩暈がする…。
大輔が吸入器を持ってくると俺に差し出してくる。
苦しいけど、それを振り払った。
「出て行け…出て行けよ…」
ゼエゼエ言いながら言葉を紡ぐ。
出て行くまで気をしっかり持たなきゃと思いつつも目の前が暗く
なって行く。
「みのるーーーー!?」
大輔の叫ぶ声が遠くに聞こえる。
俺は…どうしたんだっけ…?
目が覚めると、覗き込むように心配そうな顔でいるあきらさんと
その奥に大輔もいた。
「どうだい?気分は…何か飲み物いるかい?」
「水…」
こっくん。
「俺…どうしたんだっけ…?」
「呼吸が止まって…まる三日眠りっぱなしだったんだよ?俺が
分かるかい?」
「あきらさん…俺、大輔にうつしちゃったみたい…どうしよう」
「知ってる…、稔とゴムも使わずにセックスすると聞いた時に
覚悟はしていたよ。俺もそうしたいけど…全員が倒れたら困
るからね。」
「どうして…止めてくれなかったの?…どうして…」
自分を責めて、こんな事になってしまった自分を許せないのに…。
「そうだ、旅行へ行こう。どこがいい?」
「こんな時に?むり…」
「無理じゃない、こんな時だからこそ、楽しもう!誕生日に京都
に行こうか?稔が行きたいって言ってたよね?」
「…うん…そうだね。楽しみにしてる」
嬉しいのか、悲しいのか分からなかった。
その日を境に俺のベッドに大輔が一緒に眠るようになった。
おやすみ前のキスして、眠りについて…、朝になればおはようと
言いながら啄むような軽いキスを交わした。
物足りなさはあるけれど、誰かと一緒に寝る事がこんなに安心す
る事だとは思わなかった。
あったかい…、いつまで一緒にいられるのかな…。
そんな考えが頭をよぎらない日はなかった。
そして俺の誕生日前日、意外な訪問者があった。
ピンポーン、ピンポーン。
「配達なんか頼んだっけ?」
呟きながら玄関に向かう大輔を見送ると窓のかぎを開けた。
「お別れだな…」
そっと呟きながら涙が溢れた。
外へ出ると、涼しい風が吹いていた。
玄関で何か騒がしく言い合っているようだった。
玄関を出た大輔の前のいたのは両親だった。
「えっ…なんで?」
「なんでじゃないでしょ!どーしてなんの連絡もしないで家出
なんて…どれだけ心配したと思ってるの!早く帰るわよ!」
「そうだ、どれだけ心配かければ気が済むんだ?家に帰ったら
説教だからな!」
捲し立てるように言われ、しどろもどろになる。
「なんでここに、きたんだよ!行き先教えた覚えなんて…」
「連絡がきたんだよ。この近くで見かけたって…。半信半疑だった
けど、親切な人がいて助かったわ。ほらっ、帰るわよ」
「…帰らない。俺、まだ帰れない!あいつを置いて帰れないよ…」
「和泉くんもいるの?ずっと探してて、見つからないから、もう…
てっきり…」
「まだ、生きてるよ!俺が連れ出したんだ。一人じゃ動けないのを
いい事に、俺が連れ出した…。だから…。」
大輔の言い分に少し怪訝な顔をしたが、見つかったのはいい事だといい
稔の母親にも連絡を入れた。
「よかったわ。二人が無事に見つかって…、早く一緒に帰りましょ」
「帰らねーよ。そしたら、稔は連れてかれちまうだろ?そんなの嫌だよ」
「我儘言わないの!よそ様の家の事情に口出すもんじゃないの!」
「俺は嫌だ。ずっと一緒にいるって言ったんだ!渡すくらいなら一緒に
死んでやるからな!」
大声で怒鳴ると父親の拳骨が落ちた。
「いい加減にしろ!他所様の子を連れ出して何をしていたかと思えば…
分かっているのか?もし死なせる様なことが有れば、私達もどうやっ
て生きていけると思ってるんだ?わかったら、帰るぞ?稔くんも連れ
て帰るぞ!」
部屋の奥へと向かう。
さっきまで寝ていたベッドはもぬけのからで、横に置いてあった車椅子
もない。窓は開け放たれたまま、カーテンが揺れていた。
車椅子からベッドへ移ると机の上の薬を指す。
「大輔どう言う事?これ誰のか分かるよね?」
「あぁ、そうだな。俺のだ!」
「はぁ~…先月俺を抱いた時か?」
「そうだな…別に後悔なんかしてねーよ?」
「冗談だろ?…嫌がらせかよ…なんでうつってんだよ…いや、俺が
悪いのか…俺が生きたいって思ってるから…。一緒に暮らしたい
なんて思うんじゃなかった…」
「違う!俺がそうしたかったから…俺も稔の痛みや苦しみを知りた
くて…」
「ふざけんなよ!遊びじゃないんだ…死ぬんだよ?」
俺が怒ってる理由もわかってくれない。
軽々しく、自分から病気になりたいなんて言うバカだとは思わなか
った。
「俺がどんなに苦しいか…どんなに辛くて、どんなに怖いかなんて
どうして分かってやれるって言うんだよ…。」
「それは…、同じならいつでも心配せずに触れられるしキスもでき
るじゃん!いつも遠慮してただろう?」
「そんな事どうでもいいよ、もうでてけ!二度と顔も見たくない!」
俺ははっきり言うと興奮したせいで息が上がっている事に気づいた。
極力平常心を保つように心がけていたのに…。
息が上がると苦しくて、眩暈がする…。
大輔が吸入器を持ってくると俺に差し出してくる。
苦しいけど、それを振り払った。
「出て行け…出て行けよ…」
ゼエゼエ言いながら言葉を紡ぐ。
出て行くまで気をしっかり持たなきゃと思いつつも目の前が暗く
なって行く。
「みのるーーーー!?」
大輔の叫ぶ声が遠くに聞こえる。
俺は…どうしたんだっけ…?
目が覚めると、覗き込むように心配そうな顔でいるあきらさんと
その奥に大輔もいた。
「どうだい?気分は…何か飲み物いるかい?」
「水…」
こっくん。
「俺…どうしたんだっけ…?」
「呼吸が止まって…まる三日眠りっぱなしだったんだよ?俺が
分かるかい?」
「あきらさん…俺、大輔にうつしちゃったみたい…どうしよう」
「知ってる…、稔とゴムも使わずにセックスすると聞いた時に
覚悟はしていたよ。俺もそうしたいけど…全員が倒れたら困
るからね。」
「どうして…止めてくれなかったの?…どうして…」
自分を責めて、こんな事になってしまった自分を許せないのに…。
「そうだ、旅行へ行こう。どこがいい?」
「こんな時に?むり…」
「無理じゃない、こんな時だからこそ、楽しもう!誕生日に京都
に行こうか?稔が行きたいって言ってたよね?」
「…うん…そうだね。楽しみにしてる」
嬉しいのか、悲しいのか分からなかった。
その日を境に俺のベッドに大輔が一緒に眠るようになった。
おやすみ前のキスして、眠りについて…、朝になればおはようと
言いながら啄むような軽いキスを交わした。
物足りなさはあるけれど、誰かと一緒に寝る事がこんなに安心す
る事だとは思わなかった。
あったかい…、いつまで一緒にいられるのかな…。
そんな考えが頭をよぎらない日はなかった。
そして俺の誕生日前日、意外な訪問者があった。
ピンポーン、ピンポーン。
「配達なんか頼んだっけ?」
呟きながら玄関に向かう大輔を見送ると窓のかぎを開けた。
「お別れだな…」
そっと呟きながら涙が溢れた。
外へ出ると、涼しい風が吹いていた。
玄関で何か騒がしく言い合っているようだった。
玄関を出た大輔の前のいたのは両親だった。
「えっ…なんで?」
「なんでじゃないでしょ!どーしてなんの連絡もしないで家出
なんて…どれだけ心配したと思ってるの!早く帰るわよ!」
「そうだ、どれだけ心配かければ気が済むんだ?家に帰ったら
説教だからな!」
捲し立てるように言われ、しどろもどろになる。
「なんでここに、きたんだよ!行き先教えた覚えなんて…」
「連絡がきたんだよ。この近くで見かけたって…。半信半疑だった
けど、親切な人がいて助かったわ。ほらっ、帰るわよ」
「…帰らない。俺、まだ帰れない!あいつを置いて帰れないよ…」
「和泉くんもいるの?ずっと探してて、見つからないから、もう…
てっきり…」
「まだ、生きてるよ!俺が連れ出したんだ。一人じゃ動けないのを
いい事に、俺が連れ出した…。だから…。」
大輔の言い分に少し怪訝な顔をしたが、見つかったのはいい事だといい
稔の母親にも連絡を入れた。
「よかったわ。二人が無事に見つかって…、早く一緒に帰りましょ」
「帰らねーよ。そしたら、稔は連れてかれちまうだろ?そんなの嫌だよ」
「我儘言わないの!よそ様の家の事情に口出すもんじゃないの!」
「俺は嫌だ。ずっと一緒にいるって言ったんだ!渡すくらいなら一緒に
死んでやるからな!」
大声で怒鳴ると父親の拳骨が落ちた。
「いい加減にしろ!他所様の子を連れ出して何をしていたかと思えば…
分かっているのか?もし死なせる様なことが有れば、私達もどうやっ
て生きていけると思ってるんだ?わかったら、帰るぞ?稔くんも連れ
て帰るぞ!」
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さっきまで寝ていたベッドはもぬけのからで、横に置いてあった車椅子
もない。窓は開け放たれたまま、カーテンが揺れていた。
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