4 / 52
3話 お腹すいた
しおりを挟む
なんの変哲もない石を眺めると鞄に無造作に突っ込んだまま学校へと向かった。
今日は部活動の実績を踏まえて予算決めをする日だった。
仮ではあるが、大体はこのまま決定してしまうので他の部活動の部長達はこぞっ
て部活動の貢献アピールをしてくるのだ。
そして、今日は恵の誕生日でもあるのだ。
最悪な1日になりそうで気合を入れると家を出る。
惣菜屋で弁当を買うとクラスに向かう前に生徒会室へと寄る。
今日は放課になるとくるであろう部活の部長達の言い分や実績を吟味しなければ
ならないからだ。
もちろん、会計に言ってくれればいい事なのだが、なにぶん会計の犬飼良次には
融通が利かないところがある。
実績重視で、予算を割り振っているので、切り捨てるところはすぐに切り捨てら
れてしまう。
そのせいか、温和な恵に言い寄ってくる人が増えるのだった。
「あの~今いいですか?」
「はい、長くならないならいいですよ?」
入ってきたのは軽音楽部部長だった。
長い髪を一つに束ねポニーテールにしている。
「今日の予算決めなんですけど…私達この前の大会で準優勝したんです!」
「はい、わかってますよ。惜しい結果でしたが、みんなの努力が伺えます」
「それでですね…予算の割り振りに次から楽器を増やしたいので予算の方をです
ね~えーっと…」
「増額の申請ですね?紙は出しましたか?」
「はい、もちろんです。今回人数も増えたし、楽器の数が足りなくて…それにで
すね、演奏の幅を広げる為にもですね…」
「えーっと、ちょっと確認しますね。」
恵は書類に目を通すと前よりかなり増額されている予算を見つけた。
それを教えてやると嬉しそうにして何度も頭を下げて帰っていった。
「大丈夫そうですね?」
「はい、ありがとうございます。これで楽器を増やせます!今年こそは優勝して
みせます!」
「はい、頑張ってください。期待してます」
会計の犬飼はそこもしっかり考えて組んでいたようだった。
できる会計を持つとありがたい事だった。
その後も、クラスに入ってからもでも放課のたびに訪れる部長達の意見や、要望
をずっと聞かされたのだった。
「生徒会長様も大変だな?」
クラスの一人が呆れたように話しかけてくる。
「そうだな…だが、みんな必死なんだろうな~、俺もちゃんと答えてやらないとな」
「真面目だね~。今日、帰りに合コンあるけど行くか?気晴らしになるだろ?」
「いや…今日は生徒会での予算会議なんだ。ありがたいが、行けそうにないかな」
「あんまり真面目にやるとハゲるぞ?」
「はははっ、それは嫌だな~」
たわいもない会話をしているとすぐに休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「おー、お前ら席につけよ!授業を始めるぞ~!」
教室が入ってくるといつもと変わらない授業が始まる。
今日はずっとこんな調子で休める時がなかった。
授業も終わると、生徒会室へと向かった。
もうすでに集まっている部長達の横を通り過ぎると席に着く。
横からお茶を出してくれるのは副会長の神田沙耶香だった。
「神田さん、ありがとう。」
「いえ、会長の為ならなんでもしますよ?」
意味深な言葉に首を傾げるが、頬を染める彼女から視線を外すと書類に目を通す。
ぎゅるるるるぅ~~~。
一瞬、自分のお腹が鳴ったのを実感し、少し恥ずかしくなった。
「ごめん、ちょっとお腹鳴ったかな?はははっ…」
「そうですか?聞こえませんでしたけど?何かお菓子でも食べますか?」
恵が言った言葉に神田はすぐさま否定してきた。
そしてお菓子を出してくれる。きっと自分の為に買ったものだろう。
「いや、悪いよ。」
「いえ、会長が食べてくれるなら嬉しいです。」
「ありがとう。」
彼女の好意を受け取って始まるまで食べながら雑談をしていた。
一向に膨れない空腹にだんだんとおかしさを感じる。
ちゃんと昼もしっかり食べたし、まだお腹が減るには早い。
鞄の中の石をこっそり取り出すとポケットに突っ込んだ。
すると少し空腹が和らいだ気がしたのだった。
今日は部活動の実績を踏まえて予算決めをする日だった。
仮ではあるが、大体はこのまま決定してしまうので他の部活動の部長達はこぞっ
て部活動の貢献アピールをしてくるのだ。
そして、今日は恵の誕生日でもあるのだ。
最悪な1日になりそうで気合を入れると家を出る。
惣菜屋で弁当を買うとクラスに向かう前に生徒会室へと寄る。
今日は放課になるとくるであろう部活の部長達の言い分や実績を吟味しなければ
ならないからだ。
もちろん、会計に言ってくれればいい事なのだが、なにぶん会計の犬飼良次には
融通が利かないところがある。
実績重視で、予算を割り振っているので、切り捨てるところはすぐに切り捨てら
れてしまう。
そのせいか、温和な恵に言い寄ってくる人が増えるのだった。
「あの~今いいですか?」
「はい、長くならないならいいですよ?」
入ってきたのは軽音楽部部長だった。
長い髪を一つに束ねポニーテールにしている。
「今日の予算決めなんですけど…私達この前の大会で準優勝したんです!」
「はい、わかってますよ。惜しい結果でしたが、みんなの努力が伺えます」
「それでですね…予算の割り振りに次から楽器を増やしたいので予算の方をです
ね~えーっと…」
「増額の申請ですね?紙は出しましたか?」
「はい、もちろんです。今回人数も増えたし、楽器の数が足りなくて…それにで
すね、演奏の幅を広げる為にもですね…」
「えーっと、ちょっと確認しますね。」
恵は書類に目を通すと前よりかなり増額されている予算を見つけた。
それを教えてやると嬉しそうにして何度も頭を下げて帰っていった。
「大丈夫そうですね?」
「はい、ありがとうございます。これで楽器を増やせます!今年こそは優勝して
みせます!」
「はい、頑張ってください。期待してます」
会計の犬飼はそこもしっかり考えて組んでいたようだった。
できる会計を持つとありがたい事だった。
その後も、クラスに入ってからもでも放課のたびに訪れる部長達の意見や、要望
をずっと聞かされたのだった。
「生徒会長様も大変だな?」
クラスの一人が呆れたように話しかけてくる。
「そうだな…だが、みんな必死なんだろうな~、俺もちゃんと答えてやらないとな」
「真面目だね~。今日、帰りに合コンあるけど行くか?気晴らしになるだろ?」
「いや…今日は生徒会での予算会議なんだ。ありがたいが、行けそうにないかな」
「あんまり真面目にやるとハゲるぞ?」
「はははっ、それは嫌だな~」
たわいもない会話をしているとすぐに休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「おー、お前ら席につけよ!授業を始めるぞ~!」
教室が入ってくるといつもと変わらない授業が始まる。
今日はずっとこんな調子で休める時がなかった。
授業も終わると、生徒会室へと向かった。
もうすでに集まっている部長達の横を通り過ぎると席に着く。
横からお茶を出してくれるのは副会長の神田沙耶香だった。
「神田さん、ありがとう。」
「いえ、会長の為ならなんでもしますよ?」
意味深な言葉に首を傾げるが、頬を染める彼女から視線を外すと書類に目を通す。
ぎゅるるるるぅ~~~。
一瞬、自分のお腹が鳴ったのを実感し、少し恥ずかしくなった。
「ごめん、ちょっとお腹鳴ったかな?はははっ…」
「そうですか?聞こえませんでしたけど?何かお菓子でも食べますか?」
恵が言った言葉に神田はすぐさま否定してきた。
そしてお菓子を出してくれる。きっと自分の為に買ったものだろう。
「いや、悪いよ。」
「いえ、会長が食べてくれるなら嬉しいです。」
「ありがとう。」
彼女の好意を受け取って始まるまで食べながら雑談をしていた。
一向に膨れない空腹にだんだんとおかしさを感じる。
ちゃんと昼もしっかり食べたし、まだお腹が減るには早い。
鞄の中の石をこっそり取り出すとポケットに突っ込んだ。
すると少し空腹が和らいだ気がしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【完結】その少年は硝子の魔術士
鏑木 うりこ
BL
神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。
硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!
設定はふんわりしております。
少し痛々しい。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
fall~獣のような男がぼくに歓びを教える
乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。
強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。
濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。
※エブリスタで連載していた作品です
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
藤吉めぐみ
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる