インキュバス君は困ってます!

秋元智也

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3話 お腹すいた

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なんの変哲もない石を眺めると鞄に無造作に突っ込んだまま学校へと向かった。

今日は部活動の実績を踏まえて予算決めをする日だった。
仮ではあるが、大体はこのまま決定してしまうので他の部活動の部長達はこぞっ
て部活動の貢献アピールをしてくるのだ。

そして、今日は恵の誕生日でもあるのだ。

最悪な1日になりそうで気合を入れると家を出る。

惣菜屋で弁当を買うとクラスに向かう前に生徒会室へと寄る。
今日は放課になるとくるであろう部活の部長達の言い分や実績を吟味しなければ
ならないからだ。
もちろん、会計に言ってくれればいい事なのだが、なにぶん会計の犬飼良次には
融通が利かないところがある。
実績重視で、予算を割り振っているので、切り捨てるところはすぐに切り捨てら
れてしまう。

そのせいか、温和な恵に言い寄ってくる人が増えるのだった。

「あの~今いいですか?」
「はい、長くならないならいいですよ?」

入ってきたのは軽音楽部部長だった。
長い髪を一つに束ねポニーテールにしている。

「今日の予算決めなんですけど…私達この前の大会で準優勝したんです!」
「はい、わかってますよ。惜しい結果でしたが、みんなの努力が伺えます」
「それでですね…予算の割り振りに次から楽器を増やしたいので予算の方をです
 ね~えーっと…」
「増額の申請ですね?紙は出しましたか?」
「はい、もちろんです。今回人数も増えたし、楽器の数が足りなくて…それにで
 すね、演奏の幅を広げる為にもですね…」
「えーっと、ちょっと確認しますね。」

恵は書類に目を通すと前よりかなり増額されている予算を見つけた。
それを教えてやると嬉しそうにして何度も頭を下げて帰っていった。

「大丈夫そうですね?」
「はい、ありがとうございます。これで楽器を増やせます!今年こそは優勝して
 みせます!」
「はい、頑張ってください。期待してます」

会計の犬飼はそこもしっかり考えて組んでいたようだった。
できる会計を持つとありがたい事だった。

その後も、クラスに入ってからもでも放課のたびに訪れる部長達の意見や、要望
をずっと聞かされたのだった。

「生徒会長様も大変だな?」

クラスの一人が呆れたように話しかけてくる。

「そうだな…だが、みんな必死なんだろうな~、俺もちゃんと答えてやらないとな」
「真面目だね~。今日、帰りに合コンあるけど行くか?気晴らしになるだろ?」
「いや…今日は生徒会での予算会議なんだ。ありがたいが、行けそうにないかな」
「あんまり真面目にやるとハゲるぞ?」
「はははっ、それは嫌だな~」

たわいもない会話をしているとすぐに休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。

「おー、お前ら席につけよ!授業を始めるぞ~!」

教室が入ってくるといつもと変わらない授業が始まる。
今日はずっとこんな調子で休める時がなかった。

授業も終わると、生徒会室へと向かった。
もうすでに集まっている部長達の横を通り過ぎると席に着く。

横からお茶を出してくれるのは副会長の神田沙耶香だった。

「神田さん、ありがとう。」
「いえ、会長の為ならなんでもしますよ?」

意味深な言葉に首を傾げるが、頬を染める彼女から視線を外すと書類に目を通す。

ぎゅるるるるぅ~~~。

一瞬、自分のお腹が鳴ったのを実感し、少し恥ずかしくなった。

「ごめん、ちょっとお腹鳴ったかな?はははっ…」
「そうですか?聞こえませんでしたけど?何かお菓子でも食べますか?」

恵が言った言葉に神田はすぐさま否定してきた。
そしてお菓子を出してくれる。きっと自分の為に買ったものだろう。

「いや、悪いよ。」
「いえ、会長が食べてくれるなら嬉しいです。」
「ありがとう。」

彼女の好意を受け取って始まるまで食べながら雑談をしていた。
一向に膨れない空腹にだんだんとおかしさを感じる。
ちゃんと昼もしっかり食べたし、まだお腹が減るには早い。
鞄の中の石をこっそり取り出すとポケットに突っ込んだ。

すると少し空腹が和らいだ気がしたのだった。
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