インキュバス君は困ってます!

秋元智也

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33話 青山

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青山は舌打ちをすると、他の装備を腰に付ける。
手に持っていた小さな鞄の中にはお札と水晶、小さな数珠。そして錫杖など
が折り畳まれて入っている。

荷物で減点を食らった原因がコレだったのだ。
しかし、こうなっては身の安全には必要だったのだろうと思う。

「会長?あんた戦えないの?」
「はぁ?できる訳ないだろ?っていうかどうなってるんだよ!」
「恵くんは俺が絶対に守るから安心してくれ。」
「コレはなんなんだよ!」

池下が怯えながら聞くと、青山はため息を吐きながら答える。

「この動物も全部操られてるんだよ。誰かさんを狙ってる誰かにね!」

それだけで、察しがついたのは畑野だった。

「こんなの人間じゃないだろ?」
「だから言っただろ?あいつらは人間じゃない。だから俺みたいなハンター
 がいるんだ。まぁ、まだ見習いだけどな!」

青山の足元からこっそりと忍び寄る影に即座に気づくと再び水晶を光らせる。

その一瞬の隙に上から何かが降ってきていた。

「うわぁっ!」

畑野の頭上から降ってきたのは体長が2mはある蛇だった。
さっきの小さいのとは比べ物にはならない。
腕に噛み付くと牙が突き刺さる。

庇う様に腕で庇ったのは恵だった。
恵には見えていたのだ。
速さにはついていけないし、気配もわからない。だけど、太陽光が反射して
いても視力は変わらない。

闇の中でもはっきり見えるのと同じだった。

側にあった枝をもぎ取ると蛇の頭に突き刺した。
普通なら刺さらないだろうそれは難なくザクッと刺さり無理やり口を開かせる。

「恵くん!大丈夫なのか?まずは止血しよう!」

鞄を持ってきた池下が救急用のキッドを取り出している間に畑野はすぐさま水
で濯ぎばい菌が入らない様に吸い出そうと口を付けようとしていた。

ガシッといきなり止められると、審査員の男性が恵の傷上の部分を持っていた
ロープできつく縛り付けた。

「吸い出してはいけない。あれは毒を持っている。早く下山して血清を打たな
 ければ命に関わる」

その言葉に畑野は血の気が引く思いがした。
今はなんともなさそうだが、次第に麻痺していくという。

青山が近づいてくるとお札を渡す。
何事かと思うと、いきなり傷口にペタリとはったのだ。

周りからはただの紙だが、恵にとってはただの紙ではない。

「ああぁぁぁああ!!」

焼け爛れるくらいの痛みと皮膚が真っ赤に腫れていく。血の匂いが周りにすると
畑野の腕の中で意識を失ってしまっていた。

「君!何をするんだ!」

紙を恐る恐る捲るとそこは爛れた皮膚に血が滲み出ていた。
まるで焼けた鉄ごてでも押し当てたかのようになっている。
酷い有様だった。

ただ剥がした札はただの紙切れなのに、不思議な事だった。

「やっぱりな…でも、コレで血清は要らないぞ?後で部長が癒してやれよ」

その意味を知ってる様だった。
多分精液の摂取で回復することも承知の上なのだろう。

「それは脅しなのか?」
「見逃してやってるんだ、ありがたく思ってほしいな~」

人懐っこい時もあれば、大人びた時もある。
青山という人物がわからなくなってきていた。
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