インキュバス君は困ってます!

秋元智也

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34話 解決?

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意識を失った人間を連れて山を下山するのはかなり大変な事だった。
荷物もある上に、人間を担いでいくのは普通の平地ならまだしも、崖も険しく
落ちたら怪我程度では済まない。

青山は手伝う気などない様に、周りを警戒している。

「そろそろ出てきたらどうだ?」

大声で叫ぶと生暖かい風がどこからともなく吹いてくる。
畑野はお守りを握りしめながら恵を抱きしめていた。
意識がなくても苦しそうにしているのが、見ているだけで痛々しかった。
早く治してあげたいけど、ここでは流石に難しい。

まずは目が覚めて、人がいない時でないとどうしようもない。
人前で性器を出して怪我人に咥えさせるなんて鬼畜だと言われてしまいか
ねないからだ。

「早くここを離れよう!」

池下が言い出すが、畑野は逆に青山のそばのが一番安全な気がしていた。
敵が潜伏している以上は離れれば狙われやすいのだ。

「ここはまだ動くべきじゃない」
「分かってるじゃん。部長も少しは賢くなったじゃん?この場合僕の側に
 いるのが安全ってことをさ!」
「君は何を言っているんだ!危険な行動は控えっ…グハッ…な、なんで…」

審査員の口から大量の血が噴き出していた。
何もない場所からいきなり手が伸びてきたのだ。
肉を突き破り、滴る鮮血に全員が目を奪われた。
そんな一瞬の出来事だった。

一番早く動き出せたのは青山だけだった。
すぐに目眩しを弾けさせると突進していく。
錫杖を伸ばし、光を纏う。

周りの木に札を貼ると何かわからない言葉の羅列を言い出す。

さっきまで立っていた審査員の男性は地面に平伏し虫の息だった。
もう助からない。
でも、足が震えて動かなかった。

恵の腕に包帯を巻き終えると池下が畑野の頬を叩いた。

「今のうちに逃げるぞ!」
「あぁ!そうだな…」

次元が違う喧嘩に巻き込まれるわけにはいかなかった。
バチバチッと雷が落ちた様な大きな音がして周りが眩しく光った。
焼け焦げた人の形をしたモノが地面に倒れている。

荒い息を肩でしながら青山は地面に転がった焦げた塊を突く。
そして真ん中から串刺しにすると札を貼った。

それはみるみるうちに縮んでゆき、小さな人形の様になった。
まだビクビクと動いているのを見ると、流石にギョッとした。

「それは…まさか」
「そのまさかだよ。秋谷春乃の分身だよ。まだ死んでねーけどな~」
「それ、どうするの?」
「コレは死ににくいから帰ったら実験に使おうかなって」
「へ~、実験にね~」
「そうだ、会長も去勢しなきゃだったよね?今しちゃう?意識もないことだし」

去勢という言葉に股間がひゅんと冷えた気がした。
池下は何を言っているのか分からず頭を傾げるばかりだ。


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