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37話 決断
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競技大会以来、恵と会うのは食事の為だけとなった。
畑野との距離はただ家に言って餌を与える様な感覚に思えた。
前は好きだと何度も連呼していた畑野だったが、最近では何も言わず、
ただ交わって帰るだけのサイクルになった。
「すまないが、明日はちょっと無理そうなんだが…」
「そっか…いいよ。1日くらい飲まなくても平気だし」
畑野の言葉に笑って恵は答えた。
本当は食事以外でも話したいし、会っている時間が嬉しかったが、競技
までという区切りをつけたのは自分自身だ。
それまでは、生徒会の仕事も他のメンバーに任せてしまっていたので色々
とたまっている書類などもあった。
これ以上は迷惑はかけられない。
「もう、部室には来ないのか?」
「あぁ、約束は競技が終わるまでだったからな…」
「そうだったな。じゃ~俺、帰るわ」
「うん、気をつけてなっ…」
そっけない返事と振り向きもせず出て行く畑野。
少し寂しさを感じながらお互い聞きたい事も聞けず、ただ自分の中に押し
込んでいた。
そして、生徒会室に珍しい来客があった。
「こんにちわ~、会長いる?」
「君は…」
本当は一番会いたくない人でもあった。
青木が堂々と入って来ると人当たりのいい笑顔で愛想を振りまきながら二人
で席を外すことになった。
「相変わらず、周りから好かれてますね~」
「別に好かれてるわけじゃ…ない」
「そんな、謙遜を…どーせ能力を使ってるんでしょ?便利ですよね?」
「違う!俺はそんな事思ってない。普通にしたいだけなのに…」
「まぁまぁ、興奮しないで下さい。興奮すると周りは貴方に釘付けになって
行くんですよ?抗えない好意に自制が効かなくなる人もいるでしょう。」
「…そ、そんな…」
そんな事、初めて知った。
誰からもそんな話は聞かなかったし、聞けなかった。
「知らない…何も知らないんだ。」
「そうみたいですね?でも、無知ってのも怖いんですよね?知ってましたか?
インキュバスの性質に男でも女でも孕ませる事ができるって事実。」
顔を上げると、驚きを隠せないのが見てとれた。
「貴方の精子を性器に受けた人は絶対に妊娠するんです。そして、それは男女
関係なく妊娠させる力を持っているんです。そして人間と交われば混血が出
来てあの女の様に、食事だけで人を殺してしまう化け物になるんです。貴方
は生きてるだけで災いを振りまくんです」
「…う、嘘だ…」
「だから僕の実験に付き合って下さいよ。貴方を普通に暮らせる様に手伝って
あげますよ?人として暮らしたいでしょ?」
「それは…」
確かにそれは恵が望む事だった。
だが、そうなると畑野はどうなってしまうのだろうか?
もう、会う必要は無くなってしまう。
いや、こんな危険な奴とは会わない方がいいのかもしれない。
「一か月待ってくれないか?考えたい…」
「いいですけど…考えても答えはでないですよ?だって、貴方は僕に殺されるか、
実験を手伝うか、それとも去勢して男としての尊厳を失うかですから。まぁ、い
いでしょう。待ってあげますよ!」
にっこりと微笑みながら帰っていった。
恵には重すぎる決断だった。
畑野との距離はただ家に言って餌を与える様な感覚に思えた。
前は好きだと何度も連呼していた畑野だったが、最近では何も言わず、
ただ交わって帰るだけのサイクルになった。
「すまないが、明日はちょっと無理そうなんだが…」
「そっか…いいよ。1日くらい飲まなくても平気だし」
畑野の言葉に笑って恵は答えた。
本当は食事以外でも話したいし、会っている時間が嬉しかったが、競技
までという区切りをつけたのは自分自身だ。
それまでは、生徒会の仕事も他のメンバーに任せてしまっていたので色々
とたまっている書類などもあった。
これ以上は迷惑はかけられない。
「もう、部室には来ないのか?」
「あぁ、約束は競技が終わるまでだったからな…」
「そうだったな。じゃ~俺、帰るわ」
「うん、気をつけてなっ…」
そっけない返事と振り向きもせず出て行く畑野。
少し寂しさを感じながらお互い聞きたい事も聞けず、ただ自分の中に押し
込んでいた。
そして、生徒会室に珍しい来客があった。
「こんにちわ~、会長いる?」
「君は…」
本当は一番会いたくない人でもあった。
青木が堂々と入って来ると人当たりのいい笑顔で愛想を振りまきながら二人
で席を外すことになった。
「相変わらず、周りから好かれてますね~」
「別に好かれてるわけじゃ…ない」
「そんな、謙遜を…どーせ能力を使ってるんでしょ?便利ですよね?」
「違う!俺はそんな事思ってない。普通にしたいだけなのに…」
「まぁまぁ、興奮しないで下さい。興奮すると周りは貴方に釘付けになって
行くんですよ?抗えない好意に自制が効かなくなる人もいるでしょう。」
「…そ、そんな…」
そんな事、初めて知った。
誰からもそんな話は聞かなかったし、聞けなかった。
「知らない…何も知らないんだ。」
「そうみたいですね?でも、無知ってのも怖いんですよね?知ってましたか?
インキュバスの性質に男でも女でも孕ませる事ができるって事実。」
顔を上げると、驚きを隠せないのが見てとれた。
「貴方の精子を性器に受けた人は絶対に妊娠するんです。そして、それは男女
関係なく妊娠させる力を持っているんです。そして人間と交われば混血が出
来てあの女の様に、食事だけで人を殺してしまう化け物になるんです。貴方
は生きてるだけで災いを振りまくんです」
「…う、嘘だ…」
「だから僕の実験に付き合って下さいよ。貴方を普通に暮らせる様に手伝って
あげますよ?人として暮らしたいでしょ?」
「それは…」
確かにそれは恵が望む事だった。
だが、そうなると畑野はどうなってしまうのだろうか?
もう、会う必要は無くなってしまう。
いや、こんな危険な奴とは会わない方がいいのかもしれない。
「一か月待ってくれないか?考えたい…」
「いいですけど…考えても答えはでないですよ?だって、貴方は僕に殺されるか、
実験を手伝うか、それとも去勢して男としての尊厳を失うかですから。まぁ、い
いでしょう。待ってあげますよ!」
にっこりと微笑みながら帰っていった。
恵には重すぎる決断だった。
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