サバイバルゲーム

秋元智也

文字の大きさ
4 / 61

思惑

しおりを挟む
外で江崎希美子の悲鳴を聞き、松岡信治は外の窓を開ける。
「どうした?」
その声に服部雅臣の嗚咽が混ざる。
「信治窓を開けるな。家に・・・」
言葉は途切れてバサッっと倒れる音がした。
直ぐ様窓を閉めると、玄関の鍵を閉めた。
この様子だと外は全滅だろう。
「どうなってんだよ!・・・祐司か、アイツが撃ってたからそれで狙われたのか?」
机を殴るとM16に弾薬を装填する。
「畜生。敵は取る。絶対にだ。どこからでも来やがれ」
二階上がると壁を背にして銃を固定して寝転がる。腹這いになれば銃身が上に跳ね上げることは防げる。一階に数名の足音が響いてきた。それは徐々に近づいて来て階段を上ってくる。
「先に撃つか?いや、ドアを開いて入ってきた瞬間に打てばこっちが有利だ」
自分に言い聞かせると静かに入ってくるのをまった。
扉の前で一旦止まるとドアノブがゆっくりと回る。
扉が開くかと思いきや何かがコロンッと投げ込まれた。
「これは?」
気づいたときには遅かった。眩い閃光と共に爆破に巻き込まれる。
辛うじて意識はあったが、目の前には銃口があった。
パシュッ。


海岸線を歩きながら酒井学は考えていた。このまま一人でここにいるのは危険ではないかと。
目の前には小さなほったて小屋が建っていた。
中には食料と大きなナイフ。マチェットナイフが落ちていた。それと棚には迷彩のツナギが置いてあった。酒井学はすぐにそれに着替えると手近なヘルメットをかぶり食料をも持ち、山の中腹を目指した。
そこでさっきから後ろの方角で銃声の音がするのに気がついた。
「バカな奴等だ。自分の位置を教えてどうするんだ!」
フンッ っと鼻をならすと後ろを振り向くことなく前を目指した。


軍用基地のようなところには5人の学生がたむろしていた。
態度も体もでかい岡野達也(おかのたつや)とその取り巻きでいつも弱いものいじめをしてしか自分の立ち位置を示せない小島健二(こじまけんじ)。
細い貧相な体つきに猿のような顔立ちは小者を思わせる出で立ちだ。
もう一人の取り巻きは中野和彦(なかのかずひこ)。
腕っぷしは岡野達也に劣るがそれなりに体格のいい青年だ。
ラグビー部で体を鍛えているだけあって爽やかさもあって女性受けがいい。
岡野達也と喧嘩で負けてからよく一緒につるむことが多い。
「ねー暇なんだけど~」
そういったのは三神怜子(みかみれいこ)。
茶髪のウエーブのきいた髪にド派手なピンクのリボンを付けた今時のギャルである。
いつも、メイクをばっちり決めていて化粧をとった時の素顔は誰も知らない。肌は焼け過ぎというほど浅黒く、
岡野達也にいつもくっついていた。
「あたしらちょっとそこら辺行ってくるしー」
「勝手に行動するな」
「ってか、トイレだしー」
「着いていってやろうか?」
岡野達也の言葉に軽く手を振り女子二人は奥へ歩きだした。
もう一人の女子は鈴木真理(すずきまり)。
同じく浅黒い肌と似たような化粧をしている。いつも三神怜子と共に行動している、もう一人のギャルである。
明るい金髪をショートカットにしていて頭には、これまたでかいリボンがのっている。
色は真っ赤で白のドット柄だった。
「このままあいつらと一緒にいていいのかな?」
「確かに生き残るなら隠れた方がいいんじゃん?」
「だよね~」
「このままフケちゃう?」
「それいいじゃん?」
コツッン。
「なにこれ?」
「えー拳銃じゃん。サツが持ってるやつ~」
「じゃーうちら最強じゃん?」
「あははっ。確かに~」
二人はピストルを一個づつ拾うとスカートの腰に挟んだ。
下に弾薬が転がっているのも気付かずに。
そのまま、二人は帰って来なかった。

「あいつらどこまで小便しに行ったんだ?」
岡野達也は苛立っていた。態度はでかいが小心者なのである。
お山の大将でいられるうちはいいが、そうでなくなったとき逃げに徹したいのである。
しかし、取り巻きの前では意気がって見せていないと見放されるのではないかと気が気でないのだ。
「見に行って来る、どうせあいつら遊びだしてるんだろうしな」
中野和彦は立ち上がると歩き出した。
「いや、ここはバラけるのは得策じゃないな。俺も行こう」
「優しいじゃねーか?いつもはほかっとくのに?」
岡野達也は立ち上がり、中野和彦の横に並ぶ。
「たまにはな。道に迷うと可愛そうだろ?」
「あぁ、そうだな」
中野和彦は納得したのか、全く疑ってなかった。
「待って下さいよ~俺もいきますぅー」
小島健二がその後を追ってゆく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...