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戦場
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ショッピングモールの屋上ではグループ分けをしていた。
「多分だが、このショッピングモールの中に亮太が連れてきた敵が一人紛れ込んでいる」
犬飼要は淡々と状況説明をする。
「そんな言い方しなくてもいいじゃんかよ~不可抗力だ~」
叫ぶ金古亮太を無視して話は続く。
「それでだ、固まって動くより個別に班編成で動いた方が効率がいいと思う。なにか質問は?」
「はい。」
先生にでもなったかのように話始めた犬飼要に対して奥田澪が手を挙げる。
「何かね?」
「無闇に動くよりエレベーターは動かないから、下に降りる手段は止まっているエスカレーターのみ。ならお互いが左右に別れて中央までを索敵したら入れ替わってまた下の階に降りて中央に向かって索敵すればいい。」
「だがそれだと死角ができないか?」
「だから二人以上で動く。前後が見える」
「なるほど、お互いが背中合わせにゆっくりと動くと言うわけか?」
「そう、それなら行けるはず」
荒木俊介は話が終わるのを待ってから内田紗耶香に結局どうすんだ?と聞いたもんだから説教を食らうはめになった。
ペアはというと、荒木俊介と内田紗耶香ペア。犬飼要と奥田澪とついでに金古亮太のペアとなった。
女子二人の知識はある程度認めるが実力には不安を感じていた。
実践経験はモデルガンしかないと言ったからである。ゲームとリアルでは重みも反動も違うのだ。
金古亮太はさっきハンドガンを使っているのでよく知っている。
「心配いらない。負ける気はしない」
奥田澪の言葉は金古亮太の心には届かなかった。
「心配すんなって俺たちのが数の上では有利なんだ」
「それでも怖いんだよ。殺して初めて気づいたんだ。こうやって俺らも殺されるんじゃないかって・・・」
金古亮太の真剣な告白に辺りが静まり返った。
「そんな事、今考えるなって。勝つことだけ考えようぜ」
「あぁ。すまないな、変なの連れてきちまって・・・」
「いいって。ちょうどいい練習になるしな」
前を警戒していた奥田澪が立ち止まった。
「どうした?」
「しっ。黙って」
まずは屋上から三階に降りた。そしてふたてに別れてから中央で合流すると二階に降りた。
そこまでは何事もなかった。それから少しした時であった。
金古亮太と犬飼要は周りをじっと見つめた。奥田澪は動こうとしない。
話すのも遮られた。となると、近くにいるのかもしれない。
それとも過敏になっているだけかもしれなかったが。
カチャ。
奥田澪がいきなり動いた。横の店のレジの方に向かってスカーを構えると、打ち出したのだ。
タタタッ。タタタッ。
「囲んで」
いきなり声をかけると入り口を塞ぐ。奥田澪はすぐさま奥に駆けていく。
あっという間にレジの上に飛び上がると下に銃口を向けた。
タタタッ。タタタッ。
「わぁぁぁー」
その時、男の声が聞こえた。
「クリア。」
安全であるという合言葉のようだ。奥田澪の方に二人はかけよった。
「こいつで間違いない?顔は撃たないようにしたから」
確認するために心臓ばかりを狙ったらしい。
撃ち抜かれていたのは、足と心臓付近。特に中央には無数に穿たれた穴が散乱していた。
いい腕だなと、思いながらも。
「容赦ないな」
犬飼要は安心したように冗談混じりに非難する。
金古亮太だけは固まって動かなかった。
それに気づいた犬飼要は金古亮太の両肩を握ると揺すった。
「どうしたんだ?これで安心だろう?」
「・・・違う。違うんだ、こいつじゃない」
別の奴だと。震えながら訴えた。
奥田澪はすぐに口笛を吹いた。
ピィーーーー。
辺りにこだまする口笛の音。内田紗耶香への合図だった。
荒木俊介は二階に降りてからもビクビクしていた。
「肩の力を抜きなさい、そんなんじゃ当たるものも当たんないじゃない?」
内田紗耶香は呆れたように言った。
「怖くないのかよ」
「何いってんのよ。か弱い女性に対する言い方ってもんが有るでしょう?全く~怖くない奴なんていないわよ。澪も私も死ぬのは怖いわ、でも何もやらないでただ殺されるのなんてまっぴら御免だわ」
「そうだよな。悪かったな」
「まぁ、分かればいいのよ」
会話の途中で澪達がいる方で銃声が鳴り響いた。
「向こうか、行くぞ」
走り出そうとする荒木俊介をがっしり掴んで止める。
「待って、今行くと敵と勘違いされる。それにこの音はスカーだから澪が撃ってるの」
的確な判断に少し惚れそうな浮わついた気持ちを引き締めると走り出そうとはせず内田紗耶香に従う事にした。
「俺たちはゆっくり合流すればいいか?」
「そうね、向こうは逃がしたとは思えないし・・・」
すると、ピィーーーーー。と音が響いた。
「どうしたんだ?」
「厄介ね。まだ他にいるみたいっ」
嫌な予感がして内田紗耶香は荒木俊介はを突き飛ばしていた。
いきなり突き飛ばされベンチの下に入り込んでしまった。
「なにしや・・・」
パンッ。パンッ。パンッ。
連続して聞こえる乾いた銃声。頬をかすったのか生温かいモノが流れ落ちる。
「紗耶香ぁーーー」
大声を出した荒木俊介は ハッ。っと気づいた。
今この状況で声を出したのは失敗だったと。
何の為に内田紗耶香は俺を突き飛ばしたのかと。
目の前には見たことのない足と靴があった。
見上げるのが怖かった。こんなことならちゃんと伝えればよかった。
口は悪かったけど、それでも俺は紗耶香の事が・・・。
タタタッ。タタタッ。
連射の音が響き、前から足音が近づいてくる。
沈む意識の中、犬飼要と奥田澪の姿が映って一気に暗転した。
「多分だが、このショッピングモールの中に亮太が連れてきた敵が一人紛れ込んでいる」
犬飼要は淡々と状況説明をする。
「そんな言い方しなくてもいいじゃんかよ~不可抗力だ~」
叫ぶ金古亮太を無視して話は続く。
「それでだ、固まって動くより個別に班編成で動いた方が効率がいいと思う。なにか質問は?」
「はい。」
先生にでもなったかのように話始めた犬飼要に対して奥田澪が手を挙げる。
「何かね?」
「無闇に動くよりエレベーターは動かないから、下に降りる手段は止まっているエスカレーターのみ。ならお互いが左右に別れて中央までを索敵したら入れ替わってまた下の階に降りて中央に向かって索敵すればいい。」
「だがそれだと死角ができないか?」
「だから二人以上で動く。前後が見える」
「なるほど、お互いが背中合わせにゆっくりと動くと言うわけか?」
「そう、それなら行けるはず」
荒木俊介は話が終わるのを待ってから内田紗耶香に結局どうすんだ?と聞いたもんだから説教を食らうはめになった。
ペアはというと、荒木俊介と内田紗耶香ペア。犬飼要と奥田澪とついでに金古亮太のペアとなった。
女子二人の知識はある程度認めるが実力には不安を感じていた。
実践経験はモデルガンしかないと言ったからである。ゲームとリアルでは重みも反動も違うのだ。
金古亮太はさっきハンドガンを使っているのでよく知っている。
「心配いらない。負ける気はしない」
奥田澪の言葉は金古亮太の心には届かなかった。
「心配すんなって俺たちのが数の上では有利なんだ」
「それでも怖いんだよ。殺して初めて気づいたんだ。こうやって俺らも殺されるんじゃないかって・・・」
金古亮太の真剣な告白に辺りが静まり返った。
「そんな事、今考えるなって。勝つことだけ考えようぜ」
「あぁ。すまないな、変なの連れてきちまって・・・」
「いいって。ちょうどいい練習になるしな」
前を警戒していた奥田澪が立ち止まった。
「どうした?」
「しっ。黙って」
まずは屋上から三階に降りた。そしてふたてに別れてから中央で合流すると二階に降りた。
そこまでは何事もなかった。それから少しした時であった。
金古亮太と犬飼要は周りをじっと見つめた。奥田澪は動こうとしない。
話すのも遮られた。となると、近くにいるのかもしれない。
それとも過敏になっているだけかもしれなかったが。
カチャ。
奥田澪がいきなり動いた。横の店のレジの方に向かってスカーを構えると、打ち出したのだ。
タタタッ。タタタッ。
「囲んで」
いきなり声をかけると入り口を塞ぐ。奥田澪はすぐさま奥に駆けていく。
あっという間にレジの上に飛び上がると下に銃口を向けた。
タタタッ。タタタッ。
「わぁぁぁー」
その時、男の声が聞こえた。
「クリア。」
安全であるという合言葉のようだ。奥田澪の方に二人はかけよった。
「こいつで間違いない?顔は撃たないようにしたから」
確認するために心臓ばかりを狙ったらしい。
撃ち抜かれていたのは、足と心臓付近。特に中央には無数に穿たれた穴が散乱していた。
いい腕だなと、思いながらも。
「容赦ないな」
犬飼要は安心したように冗談混じりに非難する。
金古亮太だけは固まって動かなかった。
それに気づいた犬飼要は金古亮太の両肩を握ると揺すった。
「どうしたんだ?これで安心だろう?」
「・・・違う。違うんだ、こいつじゃない」
別の奴だと。震えながら訴えた。
奥田澪はすぐに口笛を吹いた。
ピィーーーー。
辺りにこだまする口笛の音。内田紗耶香への合図だった。
荒木俊介は二階に降りてからもビクビクしていた。
「肩の力を抜きなさい、そんなんじゃ当たるものも当たんないじゃない?」
内田紗耶香は呆れたように言った。
「怖くないのかよ」
「何いってんのよ。か弱い女性に対する言い方ってもんが有るでしょう?全く~怖くない奴なんていないわよ。澪も私も死ぬのは怖いわ、でも何もやらないでただ殺されるのなんてまっぴら御免だわ」
「そうだよな。悪かったな」
「まぁ、分かればいいのよ」
会話の途中で澪達がいる方で銃声が鳴り響いた。
「向こうか、行くぞ」
走り出そうとする荒木俊介をがっしり掴んで止める。
「待って、今行くと敵と勘違いされる。それにこの音はスカーだから澪が撃ってるの」
的確な判断に少し惚れそうな浮わついた気持ちを引き締めると走り出そうとはせず内田紗耶香に従う事にした。
「俺たちはゆっくり合流すればいいか?」
「そうね、向こうは逃がしたとは思えないし・・・」
すると、ピィーーーーー。と音が響いた。
「どうしたんだ?」
「厄介ね。まだ他にいるみたいっ」
嫌な予感がして内田紗耶香は荒木俊介はを突き飛ばしていた。
いきなり突き飛ばされベンチの下に入り込んでしまった。
「なにしや・・・」
パンッ。パンッ。パンッ。
連続して聞こえる乾いた銃声。頬をかすったのか生温かいモノが流れ落ちる。
「紗耶香ぁーーー」
大声を出した荒木俊介は ハッ。っと気づいた。
今この状況で声を出したのは失敗だったと。
何の為に内田紗耶香は俺を突き飛ばしたのかと。
目の前には見たことのない足と靴があった。
見上げるのが怖かった。こんなことならちゃんと伝えればよかった。
口は悪かったけど、それでも俺は紗耶香の事が・・・。
タタタッ。タタタッ。
連射の音が響き、前から足音が近づいてくる。
沈む意識の中、犬飼要と奥田澪の姿が映って一気に暗転した。
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