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デス・ゲーム3日目 双子の戦闘

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 優笑と優楽は図書館を目指して静かに林の中を進む……。
 うるさい虫の音。
 鳥の鳴き声。
 林の中は今日も色んな香りがする。

 湿った腐葉土の感触は気持ちが悪い。

 白い霧のなかだと、まるで幻想のなかのようだ。
 
「スズメちゃん、遅いね……」

「うん、迷ってないといいけど……」

「本当だね……図書館までは来れると思うからそこで待っていよ」

「うん……」

 同じ顔の双子が同じ声で話す。
 霧に守られてはいるとはいえ、林の中を歩くのはかなりの緊張とストレスだ。
 
「真莉愛も蝶子もいないといいけど……」

「うん……あっ待って」

 ギュッと優笑が優楽の手を握る。

「なに!?」

「あの子……」

「敵!?」

「ううん。違う……と思う」

 優笑が見つけたのは、小川で背を向けて岩に座っている少女。

「なにあれ……妖怪……?」

「ち、違うよ」

「あ、不思議少女だ……え、声かけるの?」

 優楽は歩くのをやめたのに、優笑はそのままココアの元へ歩いて行く。

「こんにちは、ココアちゃん」

「ん~~? あ、ユエ」

 ココアが緑の髪を揺らして振り向いた。
 やはり今日も釣りをしていたのだろうか。

「これ、この前の御礼」
 
 図書館で心の中で謝りながら破った紙に包んであったのは、以前に小屋で拾った釘だ。
 そっと開いて見せた後、ココアに渡す。

「くれるの?」

「うん。この前の御礼だよ」

「わぁ~釘だ。ありがとー」

 ココアはへらっと笑ってさっそく釘を石で叩き始める。

「ちょっ! そんな音出したら見つかっちゃうよ!」

 優楽が焦る。
 林の中ではどんな音も大きく響いて聞こえるのだ。
 
「ん~どうせ誰も来な~いよぉ~」

「あ、危ないって! じゃあ私達が遠くに行ってからにして!」

「ん? わかった」

「ココアちゃん、こっちは妹の優楽だよ」

「おんなじ顔だね。私はココア」

「ど、どうも」

 人見知りもしない優楽でも少したじたじしている。

「……私達、これから図書館に行くんだけど……」

「そうなんだ」

 一緒には行かなそうだな……と優笑は思う。

「いっぱい本があったよ」
 
「そっかぁ。じゃあ~あ~今度、木の実の本でも探しに行くよー」

「うん」
 
 ほのぼのした空気の二人。
 微笑む優笑を優楽は突っついた。
 
「ほら、もう行くよ優笑ちゃん」

「うん、ごめん。じゃあまた」

「うん~~」

 優笑の腕を引っ張り、少し小走りで優楽は急ぐ。
 
「はぁーびっくりしたよ優笑ちゃん」

「ごめんね、前に助けてもらったから」

「あぁ言ってたもんね。不思議な子だね~」

 二人は図書館へ急ぎ、やっとの思いで到着する。

 玄関には鍵がかかったままだ。
 しかし二人は周りの窓の確認もせずに中には誰もいないと判断してしまった。

 実はもうこの時には真莉愛の侵入後で、窓ガラスの一つが割られていたのだ。

「はぁ……よかった無事に着いた」

「優笑ちゃん~私トイレ行ってくる」

「うん」

 図書館に来たくなるのは綺麗なトイレがあるのも魅力の一つだった。
 すっかり安心しきっていた二人。
 ふと優楽がトイレに入る前に廊下で待つ優笑を見た、その時。

「優笑ちゃん! 後ろ!!」

「!?」

 必死の形相で角材を振り下ろす女生徒が優笑の目に飛び込む。

「きゃあっ!」

 すんでのところで優笑は避けたが、更に攻撃は繰り返される。

「うわぁあああ! 死ねぇ!!」

 更に奥から、もう一人が同じように角材を手に優楽に向かって突進してきた。

「おおおお!」

「くっ……!」

「優楽!」

 しかし優楽は角材の攻撃をかわし、それを受け流しつつ両手で掴んだ。
 睨み合いながらも、角材をお互い離さない。

「優笑ちゃん自分に集中して! バリアだよ!!」
 
 そんな状況でも優楽は優笑を気遣う。

「う、うん!」

 『バリア』という言葉に優笑を襲う女生徒は一瞬戸惑いを見せたが、思い切り角材でのフルスイングを優笑にぶちかます。
 優笑はバリアを張り、腕を強打されることはなかったが衝撃は緩和されずに吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

「きゃっ!」

「優笑ちゃあああああんっ!!」

 
 !!!
 

 優楽の力が一気に爆発したように、蹴り上げ角材を奪いとる。
 睨み合っていた相手を角材で殴り、優笑に止めをさそうとしている女生徒の後ろから首筋の噛みついた!

「ぎゃああっ!」

「ゆ……優楽……っ」

 見上げた優笑は、自分の妹が女生徒に背中からしがみつき首筋に噛み付くのを見た。

「優楽ぁ!」

 もう一人は悲鳴を上げて、そのまま逃げ出して行く。

「あ……あが……がぁ……」

 吸われた女生徒は苦悶の表情から……バラバラと灰になっていく。
 バサリ……と残った制服が重力に従って図書館の床に落ちる。
 優楽も支えがなくなって一緒に脱力し、膝をついた。

「優楽……っ!」

「優笑ちゃん! 大丈夫!?」

「……っ……! わ、私は大丈夫……優楽……」

「良かったぁ……」

 優楽は思い切り笑顔になって、そしてポロポロと泣き出し優笑に抱きついた。
 優笑も強く抱きしめる。

「優楽……優楽……ごめん……」

 この世で一番大切な妹が自分のせいで……人を喰べてしまった。

「なんで謝るの……?」

「え……だって……」

「優笑ちゃんが無事で良かった……それにそっか……私わかっちゃったよ……」

「優楽?」

「もう、優笑ちゃんを失いかける恐怖なんて味わいたくない……」

「私も優楽を失いたくないよ」

「そう……だから……」

「二人ともどうしたの!? 大丈夫!?」

 丁度その時、スズメが図書館に着き慌てて駆けつけたのだった。

「ス、スズメちゃん……! 私達、今襲われて……優楽が……優楽が……助けてくれて……」

 味方が増えた事で優笑が、優楽を抱きしめながら泣いた。
 スズメも慌てて周りの状況を確認し始めた。

「優楽……優楽……ごめんね……ごめんね……」

「いいんだよ……」

 泣く優笑を抱きしめながら優楽は背中を優しく撫でる。
 何か小さな声で優楽が囁いた事に優笑は気付かなかった。

「……私が、強くなればいいんだよね……」
 

 【辻祥子・死亡 天乃優楽レベル2 残り20名】
  
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