51 / 102
デス・ゲーム6日目 バーサーカーのいる朝
しおりを挟む
眠る優笑の夢のなか……響く言葉。
優笑さん……優笑さん……。
会長……?
愛しているわ……
「いやぁっ!!」
絹枝の夢を見て、飛び起きた優笑。
あの口づけ、身体を触られ……固まってしまう優笑だったが……それから絹枝の顔から血が滴り落ち……。
どうして殺すの……優笑……優楽……!
叫ばれて飛び起きた。
涙が止まらず吐き気がしてトイレに駆け込む。
ゲボゲボと吐いても、背中をさすってくれる人はいない。
「お母さん……」
優しい両親……お母さんはいない、お父さんもいない。
本当は優楽と二人きり……。
わかっているけど、わかりたくない現実。
私のせいで壊れた家族……。
私はいつも逃げてばかり……。
涙を流している優笑に、ネズミのネズリンがちゅうちゅうと心配するかのように足元にやってきた。
「……お前……優しいのね……」
ネズミの知恵がどれほどなのか、わからないが今の孤独で冷たい心には温かく感じる。
ソフィアの事をもっと思い出したい。
自分は一体何者なのかを、知らなければいけないし、そこに助かる方法があるかもしれない。
図書館から持ってきた本も、後は難解な実験データばかりで役には立たなかった。
優笑は不安になりながら、朝食時間の食堂へ行った。
優楽がもう制服に着替えて、優楽を見るとにっこり微笑んで傍に来る。
そして両手を出して、指を八本。次に指で丸を作り、二回。
8、0、0。
八時だろうか?
そして玄関を指差す。
オッケーという顔。
頷く優笑。
八時に玄関で待ち合わせ……。
慌てて周りを見回す。
こんな作戦がバレてしまったら! と思うが……。
真莉愛と蝶子はこちらを睨みながらも自分の決めた席に座る。
バチッと優楽がウインクした。
そうか、と優笑は思う。
あの二人の余裕がなくなったのだ。
今までゆっくり朝に寝ていた余裕もなくなった。
今、吸血姫に近いのは……優楽だ!
優楽はゆっくりと紅茶を飲んでいた。
そして8時。寮の玄関。
「やっほー優笑ちゃん!」
「優楽……こんな場所で……」
「大丈夫、大丈夫! 昨日のあいつらの顔見た? 絶対ビビってるから」
「あいつら……」
「真莉愛と蝶子だよ」
「うん……朝も出てきてたね」
「しかもバーサーカー? もいるしね……今日は襲う事より自分の身を守る事を考えそうだよ」
「優笑、優楽」
玄関からスズメも出てくる。
「よくわかったねスズメちゃん」
「うん、二人を見てたから」
「どこへ行こうか? 優笑ちゃん」
「図書館へ行きたい……ソフィアの事をもっと調べたいし、あそこは一応安全だよね」
入ってしまえば、あの半地下小屋より広々と過ごせるし安全だ。
「うん! 行こう!」
優楽が頼もしく感じる事に後ろめたさを感じる。
「優楽、次は私も絶対に闘うから……優楽は何もしなくてもいいから」
「優笑ちゃん健気で可愛い!」
「もう~そういうんじゃないから~」
「こら、ちょっとは緊張感もつー……」
優楽のはしゃぎっぷりに、スズメが突っ込む。
今日はできるかぎり、脱出の方法など探ることができるだろうか。
「研究所の近くも行ってみようか」
「優楽、バーサーカーがいるって言ってたじゃない。あまり寮から離れるのは危険だよ」
スズメの言うことももっともだ。
「バーサーカーって……どんな状態なんだろう」
「狂ってめちゃくちゃに攻撃してくるイメージだよね優笑ちゃん」
「……ゲームマスターがどうにかしてくれる……んだよね」
「……そうだといいね……」
手と繋ぎながら話をする双子の後ろをスズメは歩きながら図書館に着いた。
「窓は割れたままだ……」
「玄関に回って……用心して入ろう」
図書館の玄関は施錠されている。
誰かが中にいても、施錠はするだろう。
さすがにこの場面では緊張が走る。
まずは一階の探索だ。
「……優笑ちゃん、私の後ろにいて」
「優楽、だ、だから私が」
「いいから」
冷静で重たい優楽の言葉。
出しゃばったところで、小さなバリアしか張れない自分は二人を危険に晒すことなどわかっている。
「ごめん……」
「優笑ちゃん、謝ることないよ」
一階には誰もいない。
ゆっくりと三人で階段を上がる。
「だって優笑は、優楽の命の恩人だもんね」
「え?」
スズメの言葉に驚く優笑。
「うん、死にかけの優楽を助けたって「スズメ!」……」
スズメの言葉を優楽が遮った。
「私が? 優楽……そんな事なにかあった?」
「なんでもないよ! スズメあんた……やめなよ」
優楽がスズメを睨む。
「優楽! 優笑! 誰かいる!」
スズメが叫んだ。
優楽とスズメの緊張が一瞬で敵相手に向けられる。
優楽が血の剣を手から出して、大きく振った。
「誰かいるの!? 出てこい! 来ないと殺す!」
「優楽……!」
「……参ったな……」
「あっ……」
二階の幼児用スペースの小さな本棚から、両手をあげて出てきたのは灰岡ショウだった。
「灰岡さん……!」
「……殺さないでくれ、と言う権利はない。どうとでもしてくれ」
「ゆ、優楽やめて……お願い」
「……何をしに此処へ?」
優楽はまだ剣をショウに向けたままだ。
「ソフィアという人物の資料が無いか調べに来た」
優笑さん……優笑さん……。
会長……?
愛しているわ……
「いやぁっ!!」
絹枝の夢を見て、飛び起きた優笑。
あの口づけ、身体を触られ……固まってしまう優笑だったが……それから絹枝の顔から血が滴り落ち……。
どうして殺すの……優笑……優楽……!
叫ばれて飛び起きた。
涙が止まらず吐き気がしてトイレに駆け込む。
ゲボゲボと吐いても、背中をさすってくれる人はいない。
「お母さん……」
優しい両親……お母さんはいない、お父さんもいない。
本当は優楽と二人きり……。
わかっているけど、わかりたくない現実。
私のせいで壊れた家族……。
私はいつも逃げてばかり……。
涙を流している優笑に、ネズミのネズリンがちゅうちゅうと心配するかのように足元にやってきた。
「……お前……優しいのね……」
ネズミの知恵がどれほどなのか、わからないが今の孤独で冷たい心には温かく感じる。
ソフィアの事をもっと思い出したい。
自分は一体何者なのかを、知らなければいけないし、そこに助かる方法があるかもしれない。
図書館から持ってきた本も、後は難解な実験データばかりで役には立たなかった。
優笑は不安になりながら、朝食時間の食堂へ行った。
優楽がもう制服に着替えて、優楽を見るとにっこり微笑んで傍に来る。
そして両手を出して、指を八本。次に指で丸を作り、二回。
8、0、0。
八時だろうか?
そして玄関を指差す。
オッケーという顔。
頷く優笑。
八時に玄関で待ち合わせ……。
慌てて周りを見回す。
こんな作戦がバレてしまったら! と思うが……。
真莉愛と蝶子はこちらを睨みながらも自分の決めた席に座る。
バチッと優楽がウインクした。
そうか、と優笑は思う。
あの二人の余裕がなくなったのだ。
今までゆっくり朝に寝ていた余裕もなくなった。
今、吸血姫に近いのは……優楽だ!
優楽はゆっくりと紅茶を飲んでいた。
そして8時。寮の玄関。
「やっほー優笑ちゃん!」
「優楽……こんな場所で……」
「大丈夫、大丈夫! 昨日のあいつらの顔見た? 絶対ビビってるから」
「あいつら……」
「真莉愛と蝶子だよ」
「うん……朝も出てきてたね」
「しかもバーサーカー? もいるしね……今日は襲う事より自分の身を守る事を考えそうだよ」
「優笑、優楽」
玄関からスズメも出てくる。
「よくわかったねスズメちゃん」
「うん、二人を見てたから」
「どこへ行こうか? 優笑ちゃん」
「図書館へ行きたい……ソフィアの事をもっと調べたいし、あそこは一応安全だよね」
入ってしまえば、あの半地下小屋より広々と過ごせるし安全だ。
「うん! 行こう!」
優楽が頼もしく感じる事に後ろめたさを感じる。
「優楽、次は私も絶対に闘うから……優楽は何もしなくてもいいから」
「優笑ちゃん健気で可愛い!」
「もう~そういうんじゃないから~」
「こら、ちょっとは緊張感もつー……」
優楽のはしゃぎっぷりに、スズメが突っ込む。
今日はできるかぎり、脱出の方法など探ることができるだろうか。
「研究所の近くも行ってみようか」
「優楽、バーサーカーがいるって言ってたじゃない。あまり寮から離れるのは危険だよ」
スズメの言うことももっともだ。
「バーサーカーって……どんな状態なんだろう」
「狂ってめちゃくちゃに攻撃してくるイメージだよね優笑ちゃん」
「……ゲームマスターがどうにかしてくれる……んだよね」
「……そうだといいね……」
手と繋ぎながら話をする双子の後ろをスズメは歩きながら図書館に着いた。
「窓は割れたままだ……」
「玄関に回って……用心して入ろう」
図書館の玄関は施錠されている。
誰かが中にいても、施錠はするだろう。
さすがにこの場面では緊張が走る。
まずは一階の探索だ。
「……優笑ちゃん、私の後ろにいて」
「優楽、だ、だから私が」
「いいから」
冷静で重たい優楽の言葉。
出しゃばったところで、小さなバリアしか張れない自分は二人を危険に晒すことなどわかっている。
「ごめん……」
「優笑ちゃん、謝ることないよ」
一階には誰もいない。
ゆっくりと三人で階段を上がる。
「だって優笑は、優楽の命の恩人だもんね」
「え?」
スズメの言葉に驚く優笑。
「うん、死にかけの優楽を助けたって「スズメ!」……」
スズメの言葉を優楽が遮った。
「私が? 優楽……そんな事なにかあった?」
「なんでもないよ! スズメあんた……やめなよ」
優楽がスズメを睨む。
「優楽! 優笑! 誰かいる!」
スズメが叫んだ。
優楽とスズメの緊張が一瞬で敵相手に向けられる。
優楽が血の剣を手から出して、大きく振った。
「誰かいるの!? 出てこい! 来ないと殺す!」
「優楽……!」
「……参ったな……」
「あっ……」
二階の幼児用スペースの小さな本棚から、両手をあげて出てきたのは灰岡ショウだった。
「灰岡さん……!」
「……殺さないでくれ、と言う権利はない。どうとでもしてくれ」
「ゆ、優楽やめて……お願い」
「……何をしに此処へ?」
優楽はまだ剣をショウに向けたままだ。
「ソフィアという人物の資料が無いか調べに来た」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
30
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる