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デス・ゲーム9日目 バトル・デス・モード開始
しおりを挟む優笑と優楽が小屋で待っていると、スズメとショウもやってきた。
安心する仲間になっている、と優笑は思う。
しかし仲良し脱出ゲームではなく、これは最後の一人まで食い合うデス・ゲームなのだ……。
「海の水は冷たかったな……泳いでの脱出は無理だ」
「そうですね~冷たかった……やっぱり研究所を襲撃するしかないのかな? 具合悪くなったとか言って、あのメガネ女をどうにか人質にして物資のトラックを奪って~~」
「こんな大きな計画を研究員の女一人でダメにするような事しなさそう。研究員ごと撃っちゃうよ~とかなったら……灰になって終わりだよ」
スズメの言う事ももっともだ。
「でもさ、私はレベル11だよ。それを簡単には灰にしないでしょ」
「捕まってしまったら、最後に残った人に食べなさいってされてしまうかもしれない! 優楽、絶対に危険な事はしないでね」
「わかったよぉ~……」
「あのさぁ、小屋も狭いし図書館に行かない? そっちの方がお弁当も食べやすいよ」
スズメの提案に皆が頷いた。
優楽が傍にいる事はとても心強いが、苦しさも感じる。
優楽は一度も泣き言を言わない。
でも部屋で一人の時は恐ろしさで泣いているのではないか……。
人を食べた事の嫌悪を耐えているのではないだろうか。
「優笑ちゃん、変わった鳥がいる」
手を繋いでいる優楽が微笑む。
図書館に着いて、中の安全を確認し終えた。
「ちょっと調べたい事があるから一階にいていいかい」
二階へ上がろうとした三人にショウが言った。
「あの、私もちょっと探したいものがあります」
「優笑ちゃんじゃあ私も……」
「優楽はちょっとこっち来てよ」
スズメが優楽に話があるような手招きをした。
「んー……なに。来ないとは思うけど気をつけてね優笑ちゃん」
「うん。何か手がかり見つけてみせる」
情報ばかり探っても仕方がないのだが……何か自分にもできる事がないだろうか。
「灰岡さんは何を……?」
「あぁ、まぁ何か使える道具はないかなってのと島の事を少し調べたい」
「私も何かサバイバル術でも載ってる本がないか探そうかな……」
「あぁ……天乃」
「はい?」
「君達に甘えてしまっているが、そろそろ別行動をした方がいいかと思っていてね」
「え、ど、どうしてですか」
「……人数も少なくなってきている。君達の中に僕がいていいものかと」
「何を今更言ってるんですか!? 一緒に脱出しましょう! 殺し合いなんかするつもりはないです!」
「天乃……」
何も方法がない。
ただの理想だ。
それでも、この気持ちを変えてはいけない。
「だ、だから……私達と一緒にいてください。優楽もスズメちゃんも絶対に同じ気持ちです」
「……わかったよ。だから泣くな。君が泣くと妹を泣かせたようで心が痛む」
「はい……」
すぐに泣いてしまうのを、やめないとと思う優笑だった。
◇◇◇
「話ってなに?」
優楽がスズメに訝しげな表情で訪ねた。
「昨日の優笑の記憶の話、覚えてるでしょ?」
「ソフィアの?」
「そう、優笑はソフィアの後継者なんだよ!」
「命の恩人だよね、感謝してる」
「じゃなくて……! だから」
「なに」
「あんたは、優笑の血の奴隷なんだって」
「……なんで?」
「名前を言い合うとか契約した? 大怪我をして血で助けてもらったんだよ? そういう事でしょ」
「……してないけど、お互いに名前は知ってるし……それに私は優笑ちゃんの奴隷でもいいよ」
「ダメだって、どうにか解除できる方法はないのか探そうよ……?」
「どうして? 別に私はこのままでいいし」
「……でも」
「スズメ、あんた何を企んでる?」
「た、企んでなんかいないよ。優笑にも聞いてみたら? って……無意識に妹を利用しているかもしれないんだよ」
「優笑ちゃんは何も知らなくていいの。私がそれでいいんだから……」
「わかった……じゃあまた狩りをしないとだね」
「そうだね……」
その時、全員の脳内にテレパシーが響いた。
【生存者10人】
【生存者が10人になりました】
【生存者が10人】
【バトル・デスモードが開始】
「な、なに!?」
「バトルデスモード!?」
恐ろしい言葉が聞こえ、優楽はすぐに階段を駆け下り驚く優笑の前で刀を握る。
「何、今のは!!」
「バトルデスモードだと……?」
スズメも慌てて降りてきて四人で警戒をする。
その時全員の地図用の端末が震えた。
「え……なにこれ」
一件のメールが着信している。
「……ゴキゲンヨウ・吸血鬼ノ姫ニナル幼虫達ヨ・生存者がいよいよ10名になったヨ・これだけの人数になっちゃうと・獲物を見つけるのも大変大変だネ・なので島を6つのエリアに分けて・どこに誰がいるのかを教えてあげちゃうネ……」
恐る恐るアプリを見る。
確かに島の地図が横が2つ、縦が3つで区切られている。
図書館があるのは地図では右下だ。
そこに……確かに四人の名前が出ている!!
他の女生徒の名前も出てきた。
ココアは島の右真ん中、遊園地があるエリアにいるようだ。
「そんな……」
隠れているにも限界がきてしまう……。
優笑は恐怖にかられる。
ショウも不安そうだ。
しかし、優楽とスズメは無表情に端末を眺めていた。
「……これなら、見つけやすくなる……」
優楽の小さなつぶやきに、スズメは頷いた。
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