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デス・ゲーム10日目 穏やかな時間・夕食
しおりを挟む優楽が図書館に戻ってきた。
真莉愛が遊園地エリアから移動したので、ジュースやポップコーンを持って戻ってきた。
「優楽……!」
優笑が優楽を抱きしめる。
「優笑ちゃんは何をしていたの?」
「実は少し外へ行って、灯台を見てきたの」
「二人で? もう~危ないよ」
「島の事をまた調べていたら、載っていて気になったんだもの。ほら、机に鍵が入っていたから中も開けられた」
灯台はもちろん今は使われてはいないようだが、頑丈な作りだった。
図書館の他にも避難場所ができた事はプラスだろう。
「じゃあ今度行こうか~他には?」
「うん、またソフィアのこと……っていうか自分のこと? 継承されたらどうなるか、って文献がなにか探したけど……そんなのわかるわけないよね」
「そっか……」
この話になると、優楽の表情が少し固くなる。
「優笑ちゃん、ジュース飲もう!」
「うん、ありがとう」
菊池ゆりえが死んだ事を、端末を見た優笑も知っている。
そして二人は戻ってきた。
どちらかが捕食したのかは、わからないし聞くことはない。
ただ今日は、もう誰も死ななくていい。
狂った常識がもう、脳みそにこびりついている。
優楽と二人で寄り添いながら、ショウの話を聞いて、スズメのブラックジョークを聞いて……。
デス・ゲームの合間の穏やかな時間。
「……まさか、こんな時間を過ごせるなんてな……」
ショウの呟きに、皆が少し驚いた。
『孤高のプリンス』と呼ばれ、ずっと一人で過ごしてきたショウ。
「此処を脱出して、ずっとみんなでこんな時間を過ごせるようにしましょう」
「ふ……そうだね」
「うん!」
「そうだそうだ~」
寮に帰りたくない。そんな気持ちで今日が終わっていく。
◇◇◇
『ゴキゲンヨウ・吸血鬼ノ姫ニナル幼虫達ヨ~』
夕食。
今日は、優楽とスズメのおかげで穏やかに過ごす事ができた。
犠牲になった人はいても、もう悲しんでいられない……。
菊池ゆりえは誰を恨んで死んだんだろう。
私だろうか……。
優笑はいちごみるくをグッと飲み干した。
蝶子をシェアした二人は、元々が華やかなギャルグループだったので御褒美で更に艷やかになっている。
髪は艶々になって、爪は輝いている。
久しぶりのケアに二人は満足そうな表情だ。
蝶子がいないと、あんなイキイキとした顔をするんだな、と思った。
夕飯はエビフライにハンバーグ、ミニグラタン。サラダにコーンスープ。
今日も重たいものだが、優笑はしっかり栄養を摂ろうと食べ始めた。
そして、ふと真莉愛を見ると……。
いちごみるくのグラスは空だ。
そうだ、飲まないわけがない。
ふと隣のショウも真莉愛を見ていた。
だが会話する事はできない。
二人はそのまま食事を始めた。
『これからイレギュラーな、予想できない事も色々起きるか~もしれないねぇ☆ そんな時もどうか生き残って吸血姫になるようにガンバ☆ガンバ!』
【生存者9名 死亡者・菊池ゆりえ 相賀スズメ・レベル3】
スズメが食べたのか……と思う。
スズメにはあの姉妹から守ってもらったと思うべきか。
彼女に救われなかったらデス・ゲーム開始初日の朝に菊池姉妹によって殺されていた。
絹枝とルルとは悲しい最期になってしまったが、スズメはずっと一緒の仲間だ。
横にいる優楽は、何か考え込むようにジッとどこかを見ている。
沢山の事を抱えさせているのを自覚している。
いつも守る守るとばかり言わせて……。
ギュッとテーブルの下で優楽の手を握ると、ハッとしたように優笑を見て慌てたように微笑んでくれた。
明日は……明日は、優楽にも少し休んでほしい。
また明日も今日みたいに少しでも安らげる時間を作りたい……。
作ってもらってばかりだけど……。
そして夕食も終わり、9人はそれぞれ部屋へ入っていく。
32人分用意された部屋はもう……ほとんどが空き部屋だ。
優笑も部屋に戻った。
悲劇が近づいてくることを少女達は気付けなかった。
ただ一人を除いて……。
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