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デス・ゲーム11日目 研究所へ
しおりを挟むバーサーカーM・事件の朝。
寮は半壊状態になっていた。
慌ただしく現場の調査や道具の運び出しを防護服の兵士が作業員として取り掛かっている。
優笑達はテレパシーでそんな寮の前に呼び出された。
「清水留梨子、鬼頭真莉愛、灰岡ショウ、死亡……と」
ショウの寝巻きは取り上げられ密閉袋に入れて回収された。
メガネの女研究員を張り倒したくなる。
誰も彼もが憎い、恐怖よりも憎しみが上回っている。
こんな気持ちは初めてだった。
「とりあえずですね。今は一旦研究所の方に生存者の皆さんを連れて行きますから。最初のホールわかりますね~? あそこでとりあえず過ごしてください。此処も多少崩れていますけど……えっと三人死んだから、六人ですからね~もうそろそろ決着も付くと思うので、この場所を補強して最後まで実験は行う予定です」
生存者
優笑
優楽
スズメ
ココア
中田薫
村松紘香
顔も見たくないのに、あのホールで?
全員がまた銃を突きつけられトラックの荷台に乗った。
用意がなかったのか目隠しはされない。
これは研究所内を見るいい機会だと優笑は思った。
もう、隣には誰もいない――。
トラックはまず、車を収納できるシェルターのような場所に入り降ろされて研究所内に入れさせられる。
何度か除菌をされて廊下を歩く。
ドラマや映画、ゲームで見るような研究所だ。
壁には窓もなく無機質な廊下。
しかし天井を見れば空調のダクトがある。
これもよく映画などで主人公がそこから忍び込んだりする場所。
「あまり見回すな」
銃を突きつけられ、優笑は前を向く。
もしも今暴れて、一人を拘束で縛り上げたところですぐに撃たれてジ・エンド。
それでもいい?
そんなわけにはいかない……。
今、死に逃げるわけにはいかない!
「さぁ今日は此処で過ごしてもらいます。ゆっくり疲れを癒やしてくださいね。今日は大変だったので睡眠薬の支給がありますよ。いちごみるくも特別にご用意しましたから」
初日に集められたホールだ。
あの時は30人以上いたのに、今はホールがとても広く思える。
一応適当にパーティションが立てられてある。
番号が振ってあり、指示されて入ると寝袋や必需品が入っていた。
化粧品はブランド品だが自分の物ではない。
すぐに死んで不要になった人の物かもしれないなと優笑は思う。
淡々と淡々と事実だけを見て、無感情に心臓が動く。
「天乃優楽、相賀スズメ、こちらへ」
「!!」
無感情なんかじゃない……!!
優楽の名前を聞いて、膨れ上がる憎しみ!!
「どうして……」
血の奴隷なんか忘れていた……。
優楽はそれを覚えていて、ずっと私を憎んでいたの??
ショウさんを助けられていれば……。
でもあれだけの大怪我……助けられたのか……?
「!! 助けられた!!」
小さな声で優笑は叫んで、寝袋に拳を叩きつけた。
そうであっても、優楽のした事は許せない!
今はそう憎んで憎んで……優楽を殺さなきゃ……。
あの子は私の血の奴隷。
私が殺してあげなくちゃいけないの……。
そして私が吸血姫になる。
「ソフィア……貴女が教えてくれた事……思い出したから……」
いちごみるくと睡眠薬をゴクリと飲み干した。
夜中から朝にかけての悪夢。
睡眠薬で眠っても、何度も何度も目が醒めた。
誰かが出入りする気配を感じた。
優楽は真莉愛とショウを食べた。
だから検査の対象にはなるだろうが……何故スズメが?
そして何度も起きているような眠っているような感覚で数時間が経った。
昼にご飯が支給され、検査も受ける。
そして最後に聞かれたのが……
『ゲームのリタイアも可能ですよ、痛みも苦しみもなく最後に吸血姫に捕食される事もできます』
身の毛がよだつ、提案だった。
「必要ありません」
「そうですか」
恐怖で自分でリタイアしていった聖奈の信者、逃げた事でバーサーカーになってしまった女生徒。
彼女達の気持ちはよくわかる。
それでも今リタイアするわけにはいかない。
「寮の仮復旧が終わりました。今日からまた、そこへ戻ってもらいます」
半壊した寮へ戻すなど本来はありえない。
ありえない話なんて……此処では通用しない。
新しく支給された体育着で全員がまた研究所を出てトラックに乗せられる。
優笑もスズメもいただろうが、一切顔を見なかった。
優笑の部屋は半壊した部屋の丁度前だったので、全く違う部屋になった。
明日からの朝食も夕食もまた食堂で食べるらしい。
半壊した部屋を横切って廊下を降りたり危険な事をさせる。
例え崩れたとして下敷きになっても死ぬ事はないと思われているのかもしれない。
新しく準備された部屋も、死んだ誰かが使っていた部屋だ。
19時夕飯には出ろと言われている。
「あ……ネズリン……?」
弱々しく弱ったネズミがどこからか、現れて優笑の元にやってきたのだ。
半壊した時に、怪我をしたか有毒なガスでも吸ってしまったのか……。
もう息も絶え絶えだ。
「可哀想に……」
優笑はそっとネズミを撫でた。
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