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デス・ゲーム13日目 単独者の決断
しおりを挟む優楽とスズメが庭園で一騎打ちをするという朝。
食堂に行くと、もう朝食はコンビニで売っているパンが並べられポットに入ったコーヒーと牛乳パックが置いてあるだけだった。
「あ……これ……」
二個入りのドーナッツ。
二人でいつも違う味を半分こにして食べていた。
「……これも……」
粗挽きソーセージが乗ったパンも半分こ、たまご蒸しパンも半分こ。
考えないようにしているのに、涙が溢れそうになる。
あの子はもう優楽じゃないんだ……あの子はもう違う何かに、吸血鬼になってしまった……。
結局、カフェオレだけにしようとコーヒーを半分注いで牛乳パックを取って席に座る。
食堂にはココアが一人でパン祭りのように全種類のパンを堪能していた。
また林でココアに会えるといいな……と思う。
そして今日は昼から優楽とスズメの決闘だ。
何故なのかも理由もわからない。
でも……あの二人は決裂した。
その結果を見に行く。
優笑はまた林に行った。
ほんの数日のデス・ゲーム。
同じにしか見えなかった林。
でも、隠れ小屋の壊された跡。
小川、大きな岩。
図書館への近道。
全てが死んでいった人達との思い出が胸に突き刺さる。
「……あ、ネズミ……」
ネズミを見ても思い出す。
優楽は今日も狩りをするのだろうか。
突然、現れて自分を喰い殺しにくるかもしれない。
端末での居場所の確認ももうしなかった。
それでも何か吹っ切れたように……当然敵の数が少ない事もあるのだが、優笑は林の中を歩く。
もうすぐ優楽とスズメの戦いの時間。
そう思ったその時。
【緊急連絡・緊急連絡】
「なに!?」
突然のテレパシーによる連絡だった。
【村松紘香が重傷を負った模様。至急急行してください。捕食した者には報酬を与えます。現在地は端末に表示する。至急急行してください】
「……重傷……?」
すぐに端末に、紘香がいる場所が表示された。
遊園地だ。
もう耐えられなかったんだろう。
最後に遊園地で遊んで、自分で終わりを決めたんだろう。
単独で一人戦い続けた彼女の、最後の決断。
それなのに、その尊厳さえ奪い……餌だと提示する。
「あんた達こそ人間じゃない……!」
悔しさで涙が溢れる。
「ハイエナめ! 私達に群がるハイエナ……!」
林の中で思い切り叫んだ。
悔しい!
ただの実験道具、ただの餌……。
こんな事、誰が協力するというのか。
その時、生徒の居場所が更新された。
「……優楽……」
優楽が遊園地のエリアに入った。
そして数分後。
【捕食完了・Thank You】
ふざけたようなアナウンス。
目眩がした。
「そこまでして! 吸血姫になりたいの!? 優楽ぁああああ!!」
優笑の叫びがまた林に響き渡る。
その頃、優楽は紘香が灰になって散っていくのを眺めて……スズメと一騎打ちする公園へ向かった。
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