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デス・ゲーム13日目 優楽VSスズメ
しおりを挟む優楽とスズメの一騎打ち。
両手に血の刀を構えたスズメが優楽に斬りかかる。
「生意気なんだよ! あんたは!」
優楽は軽々と後ろに飛んでかわし、自分も刀を構えた。
「ずっと、そんな気持ちで? サポートだとか思ってたわけ?」
こんなデス・ゲームのために綺麗に整えられた庭が皮肉に思える。
すぐ傍で見ている研究員に、刀を突き付けたい気持ちを耐えて優楽はスズメの一撃を刀で受け止めた。
「死んでいった、40人のみんなを侮辱して許さない……!」
スズメの殺意が伝わってくる。
怒りで瞳が真っ赤になり、口元には牙が見えていた。
「あんただって今のデス・ゲームのみんなを侮辱していた……!!」
似ているな、と思った。
優楽はスズメと自分は似ていると思っていた。
だから許せないし、そして……。
「私はね、誰よりも吸血姫に近付いてるの」
「!? ……どういうこと!」
スズメがナイフを投げてくる。
ゆりえを殺した技だ。
手元から武器が離れていても形を保つことができるのは高等なテクニックだ。
それも優楽がスズメを怪しんだポイントだった。
強さを隠している……そう思った。
「ソフィアの血を優笑を跨いで間接的に受け継いだのは私……!!」
「そうだけど……」
「聞こえるの! 聞こえるんだよ! 吸血鬼である誇りが生き方が、吸血鬼とはなんなのか、私なら到達できる!」
「でも……あんたは結局血の奴隷なんじゃないの!?」
今度は優楽が鎖のように変化させた血でスズメを絡みとってやろうとするが、スズメは剣で跳ね除けた。
「優笑は殺す! あいつを私の血肉にすれば、そんなものはもう無効だ!」
「だから吸血姫になってって! 私は言ったのよ!」
二人の剣が拮抗し、力で押し合う。
「……まだ、足りないんだよ……境地に立つのに……まだまだ足りないの……」
「意味が分かんない」
「聞きたいの……この先を……本能の囁きを……!」
「狂ってる!」
スズメは優楽が優笑を死んだ灰岡ショウに心を奪われたせいで狂ってしまったんだ、と思った。
優笑から解放するために、煽りすぎたか……。
「優楽! 正気に戻れよ!」
「スズメぇ……あんたの中にいる40人を……もらうよ……今回より凶暴で荒くれ者の40人の力を……」
「優楽……っ!?」
ゾッとするスズメ。
そう、スズメと優楽だけにわかる感覚。
喰った人間は、自分の中で……生きている。
人間を捕食して血の奴隷にするのと、同族の吸血鬼を捕食するのは意味が違う。
「何を考えてる……っ!」
一瞬の隙だった。
優楽はスズメの剣を跳ね飛ばし、スズメを後ろから抱き締め首元に噛みついた。
「……優楽……」
「スズメもこの方がいいんだ……あんたにとって……絶対きっと……」
「……吸血姫になってよね……絶対」
「うん……約束する……だから頂戴……力を……」
「優……楽……」
指先をピクリ……ピクリとしながら、スズメは優楽に血を吸われる。
最期は安らいだ表情で……スズメは涙を流しながら灰になった。
研究員の女は無表情で黙々とデータを取っていた。
優笑には会話は聞こえてはいなかったが、スズメが死んだ事だけはもちろんわかった。
なんの意味もないと思いながら、ただ頬に涙が伝う。
妹を憎まなきゃいけない――。
雨が降り始める。
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