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1章 最初の街まではチュートリアル
お客様はギルド様?それとも?
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あれから練習して、試行錯誤していたがいくつか分かった事がある
・スキル 茶道は何も考えずに起動すると最低限の用意しかされない
・茶道を起動時に強く願った事が優先される
この2つである。要するに強く願わない場合は人数分、最低限の茶道具しか用意されず、茶菓子も出ない。強く願えば、その部分が強化された用意がされる。全くを以て、原理は謎だが、これほど助かる物は無い。少なくとも、このスキルがある限りは飢える事は無いということである。
「しかし、どうしたものかねえ……」
とは言えだ。この世界で取れる物を調理した物を食べて、調査も行わねばならないだろう。しかし、問題がある。街で使う貨幣を稼ぐ術がないのだ。良く考えたらこの世界で茶を広めるにしても、先立つモノが無ければ移動もままならない。
「う~ん、やっぱ、ここ……だよなあ?」
そこで、街に入り、ギルドの前に来たのだが……伝手はシャルロット殿だけだ。しかも、現在働いているかも分からない。しかし、どういう組織か分からなければ、迂闊に仕事も出来ないだろう。
(まあ、取って喰われはしないだろう)
と、ギルドの扉を開けるまで考えていた時期が、自分にもありました………
「これ、どういう状況なのですか?」
隣に居るシャルロット殿に囁く。
「現実の状況………としか」
ですよねー。そう答えるしかないですよね~。
「コホン、驚かせたようで申し訳ない。私が当ギルドのマスターのエンデと申します」
白というか灰に近い髪とシャルロット殿以上の豊満な体を持った女性。ギルドの頭というのも驚きなのだが……問題はその隣!隣なんです、エンデ殿!!!
「初めまして、チャキ殿。改めて自己紹介させていただく。私はジーク。この町の城に住んでるしがない王です」
アレだろうか、コレはツッコミ待ちか、待ちなのか?ギルドに入った直後にシャルロット殿に急に「こちらにどうぞ」と言われた際、えらく雰囲気ある扉の前に通された時は身分高い人に会うんだろうなと思っていたらコレである。しがないって言うには大きい街なんだが、ツッコミ入れた方が良いんだろうか?
にしても、ジーク?はて?う~ん?確かに男性っぽそうな名前ではあるが、聞いてみた方が良いのだろうか?
「初めまして、ジーク殿。チャキと申します。初対面で失礼な質問かと思いますが、女性の方で?」
「「っ?!」」
ジーク殿とエンデ殿の目が飛び出すように驚かれる。あれ?秘密だった?
「何故、女性と思いました?」
「肌が白く、線が細いと言うのもあります、それだけなら、男性に居てもおかしくないでしょうね。実際、我が故郷でも女形(おやま)という演劇で女性に扮した男が居ます」
しかし、決定的なのはそこではない。自分の喉をコツコツと叩く。
「男にある喉仏が大きいのが見られない他、髪です」
「髪?」
と言って、ジーク殿が髪を触る。そう、そこだ。
「どれだけ女性が男装しても、女性はただ一つ気を使う所がございます。髪です。男にしては大雑把な処理や頭を乱雑に掻いた様子が無い。そして、髪を美しいままに保ち続けたい。それが女性特有の特徴なりますれば」
うん、嘘は言ってないよ?ゴーレムから見たら、ほんのり大きいお胸を押さえてるサラシのようなものが、服の上からで分かる訳じゃ無いよ?ホントダヨ?
「お見事です。私は正確には王妃、本物の王は病床に伏せております。私の名はトワと申します」
うん、でも、見破っても、それって身分が全く変わらないって事だよね……?おぉ、無い筈の胃が痛い。何があるんだろうか?
「実はチャキ殿に依頼がありまして……」
「少し、お待ちいただきたい。エンデ殿、よろしいか?」
「何でしょう?」
ジーク殿改め、トワ殿の依頼を話される前にこれだけは聞いておかねばならない。
「私はまだギルド員ではない。そして、依頼は受ける受けないは強制であるのか?」
「そうですね、まず基本依頼というものは受ける、受けないは本人の自由意思に任されます」
「基本ではあるな」
「そして、チャキ殿がもしお望みなら即ギルドカードを作ってもいいと私は思っております。もちろん、無料で」
自分が初日ギルドでカードという身分の証明になる物を作らなかったのは多少の金が必要だったからだ。金策をしたら、入るつもりだったが、その方針が思い浮かばない現状を考えると、この申し出は渡りに船と言ったところか。
「壁に張られていた説明を見たが、入りたては最低ランク。こちらは王妃様だが、受けても良いのだろうか?」
ほう?と行った感じでトワ殿が感心された顔、エンデ殿とシャルロット殿は驚いていた。まあ、おそらく、多分、きっと、エンデ殿辺りがその対策をしない訳が無いと確信していたので、心配は無かったが、それでも聞いておくべき事項だろう。信用、大事。
「確かに、依頼としては高ランクになります。ですが、依頼人には依頼人で指名出来る権利があるのです。今回は王妃様のお願いという事で特例としてという事になっております」
「分かりました。改めて、ギルドカードをお願いした上で、その御依頼についてお聞きしたく」
これは、まあ、いわゆる囲い込みに近いだろうが、依頼を受けずという選択肢は無い……という事だろう。実際、受けずにいると、金策できるカードは出来るが、信用はガクンと落ちるぞ、と暗に言われてる気がする。いや、間違いないだろう。
「はい、改めまして、依頼は城にて王と私にそちらのシャルロット殿にしたようなもてなしをお願いしたいのです」
ある程度予想はついていたが、やはりという確信もあった。おそらく、シャルロット殿に持たせた茶菓子が渡った……と見てもいいだろう。
「ふむ。私はいつでも御用意出来ます。王が病床とあらば、城の中で?後、王は歩けますか?」
庵を庭で建てるか、王の部屋を一時的な安全地帯として、茶室作成を起動させるかで結構変わるだろう。実際試してはいないが、茶道は庵が無い庭でも出来たはずだから、応用は効く……と思いたい。
「まあ!是非、お願いいたします!王は歩く程度なら出来ると思いますわ。病気とは言っても、無気力から来るもののようですので」
「では、早速参りましょう」
無気力、なるほど。そういう状態か。となれば…・…城に行く馬車が用意されてる中で、色々準備する物を想像するのだった。
「茶室作成、使用」
あれ?庵、少し大きい、大きくない?いつもの小屋のような大きさから小さい家のような大きさになっていた。色々、想像したから……だろうか?
「どうぞ」
カラカラと動く引き戸を開け、エンデ殿、トワ殿、そして、本物のジーク王を招き入れる。白い髪にやせ細ってはいるが、気力が充実していた頃はさぞ精悍だったであろう面影が残る男性だった。
「茶道、使用」
今回はとある茶菓子に、王が座る座椅子に女性二人が座る座布団を用意する。そして、室内に鹿威しを用意する。水の問題などがあったが小さな庭があるのでそちらについているようだ。便利だね、茶室作成!
「ほう、これは……」
王妃とエンデ殿の手を借りて座椅子に座ったジーク殿が感心している。少し前まで、歩くのも苦しそうだったが、鹿威しの音がカコ-ンと響く度に少しづつ安らいでいく。
「この音も味わう一つなのだな」
「然様です。お湯が沸く音、鹿威しの音、茶を点てる音を楽しめるのが茶道の楽しみの一つでもございますれば」
「うむ、うむ!」
「あなた……」
トワ殿が驚きの声を上げる。おそらく、どんなに贅沢な事をしても、王には響かなかったのだろう。おそらく、それは当たり前だ。刺激有る事が誰からも提示されなければ、気力を上げる方法など思いつかないだろう。今、この世界に満るのは終焉に向かう絶望と無気力だ。その様な状態で、刺激ある事を提示せよ!等は無理な話だろう。
「それでは、茶を点てる前に、本日の茶菓子でございます」
菓子箱を開ける。すると3名から感嘆の声が漏れる。まあ、無理もない。実際、こんな茶菓子は早々みられないだろう。
「葛餅でございます。周りは葛粉と言う粉で作った皮、真ん中の茶色いのはおそらく、エンデ殿から食べたであろう最中に入ってた餡とは違う漉し餡と言うのを丸めた物でございます。一緒に出す木で作った小さなヘラで切って、食べる部分を刺してお食べ下さい」
「これは、また見事な物であるな!外の透明でプルプル震える部分が驚きと清涼さを演出しておる!」
「ええ、食べるのが勿体ない気がしますわ、あなた」
「しかし、食べてみたいとも思いますね。おぉ!ヘラからでも分かるプルプルした重み……では…」
3人が楽しんでくれているようでなにより。そして、自分は沸いた湯で茶を点てる。今回は少し苦みが多くても構わないだろう。匙で2~3杯を調整しながら入れて、茶筅で混ぜる。
「「「っ!!!!!!!」」」
まあ、茶菓子が美味いか不味いかはもう3人の顔を見れば分かる。陶然としているが、次の一口を食べるべく少しづつ切っている。
「これはツルリとしたこの外側が中の下手すればくどくなる餡を和らげる役目でもあるのだな!」
「それだけではなく、外側も淡い味付けをしてあるのですね。外側だけ食べなければ気付きませんね、コレは!」
「何より、チュルンッ!と入る感触が新しいです。こんなお菓子があるとは……最中もそうでしたが、コレは素晴らしい」
おっとと、このままだと茶を飲む前に茶菓子が無くなってしまう。茶菓子は茶と合わせてこそだからね。まだ菓子箱に何個かあるが、まずは合わせてほしいのが茶を点てた人の楽しみでもあるのだから。
「お待ちを、茶菓子ですから、是非、こちらの茶とお合わせ下さい」
それぞれの前に茶を置いていく。本来ならここで受け取り、茶器を回すなどの作法があるのだが、別の世界だし、もっと味わいたいって顔してるからいいかな……と。むしろ、飲む以外の作法を教えたら、茶は冷めるし、時間も取るので、抗議が来るだろうから。
「これがシャルロットも飲んだという抹茶……ですね?んっ…………コ、コレは苦いですね?」
「はい、シャルロット殿に出した時より、苦みが感じられると思いますが、茶菓子とお合わせ下さい」
そう理由を話すと、エンデ殿は少なくなりつつある茶菓子を頬張る。それを固唾を飲んで見守る王と王妃。まあ、苦いと聞いたら、躊躇するのも分かる。
「こ、これは!なるほど、苦みがサラリと流されていきますね。そして、その中にある甘みも感じられます!」
「うむぅ!これは驚きだ!茶だけでは苦いだけの所を菓子が補っておる!」
「ええ。これは驚きです。苦みある茶がたちまち、美味しく感じられるようになっています。とても不思議です」
エンデさんが顔を緩めて食べ始めると、残りの二人も感想を言ってくれる。うむ、茶を馳走した冥利に尽きるというものだ。そして、自分は当たり前の返事しか来ないであろう質問をする。
「お茶と茶菓子のお代わりはいかがでしょう?」
『頂きます!』
3人が揃ってハモったのは言うまで無い。
「至福であった」
「ええ、あなた。あんな顔をして興奮した貴方は魔王が居た頃以来よ」
「そうだな。あの時は大変だった。大変ではあったが最も充実していた時代であった」
「ええ、私達は忘れていたのですね……」
「ああ、魔王が勇者に倒され、勇者が去り、その頃の情熱を忘れ過ぎていたかもしれん」
「あの不思議なゴーレムは本当に神の使いかもしれませんね」
「ああ、丁度良い。この残っていた茶菓子を子供達を呼んで振る舞おうではないか」
「まあ、良いアイデアです!でも………」
「勿論、今から二人で晩酌する分は残しておくとも」
「まあ、悪いお方……でも、その悪い方策に乗ってしまいましょう」
「トワ……」
「ジーク……」
「………どうしようかな、コレ?」
庵の中で悩む。貰った報酬は金貨千枚。貨幣制度についてはある程度は聞いたりしていたので、これは相当に破格で悩むところである。これで、宿を借りたり、買い食いして調査も出来るのだが、貰いすぎてるかな?と思う。いや、実際に貰い過ぎなのだろう。そう思い、話はしたが、相応の報酬と王と王妃、しかも、ギルドの長であるエンデ殿から言われては受け取るしかないだろう。まあ、追々使い道考えればいいか……
なお、翌日ギルドに行った自分が更なる上乗せの報酬に顔に目は無いけど目を剥くのは後少しの事である。
・スキル 茶道は何も考えずに起動すると最低限の用意しかされない
・茶道を起動時に強く願った事が優先される
この2つである。要するに強く願わない場合は人数分、最低限の茶道具しか用意されず、茶菓子も出ない。強く願えば、その部分が強化された用意がされる。全くを以て、原理は謎だが、これほど助かる物は無い。少なくとも、このスキルがある限りは飢える事は無いということである。
「しかし、どうしたものかねえ……」
とは言えだ。この世界で取れる物を調理した物を食べて、調査も行わねばならないだろう。しかし、問題がある。街で使う貨幣を稼ぐ術がないのだ。良く考えたらこの世界で茶を広めるにしても、先立つモノが無ければ移動もままならない。
「う~ん、やっぱ、ここ……だよなあ?」
そこで、街に入り、ギルドの前に来たのだが……伝手はシャルロット殿だけだ。しかも、現在働いているかも分からない。しかし、どういう組織か分からなければ、迂闊に仕事も出来ないだろう。
(まあ、取って喰われはしないだろう)
と、ギルドの扉を開けるまで考えていた時期が、自分にもありました………
「これ、どういう状況なのですか?」
隣に居るシャルロット殿に囁く。
「現実の状況………としか」
ですよねー。そう答えるしかないですよね~。
「コホン、驚かせたようで申し訳ない。私が当ギルドのマスターのエンデと申します」
白というか灰に近い髪とシャルロット殿以上の豊満な体を持った女性。ギルドの頭というのも驚きなのだが……問題はその隣!隣なんです、エンデ殿!!!
「初めまして、チャキ殿。改めて自己紹介させていただく。私はジーク。この町の城に住んでるしがない王です」
アレだろうか、コレはツッコミ待ちか、待ちなのか?ギルドに入った直後にシャルロット殿に急に「こちらにどうぞ」と言われた際、えらく雰囲気ある扉の前に通された時は身分高い人に会うんだろうなと思っていたらコレである。しがないって言うには大きい街なんだが、ツッコミ入れた方が良いんだろうか?
にしても、ジーク?はて?う~ん?確かに男性っぽそうな名前ではあるが、聞いてみた方が良いのだろうか?
「初めまして、ジーク殿。チャキと申します。初対面で失礼な質問かと思いますが、女性の方で?」
「「っ?!」」
ジーク殿とエンデ殿の目が飛び出すように驚かれる。あれ?秘密だった?
「何故、女性と思いました?」
「肌が白く、線が細いと言うのもあります、それだけなら、男性に居てもおかしくないでしょうね。実際、我が故郷でも女形(おやま)という演劇で女性に扮した男が居ます」
しかし、決定的なのはそこではない。自分の喉をコツコツと叩く。
「男にある喉仏が大きいのが見られない他、髪です」
「髪?」
と言って、ジーク殿が髪を触る。そう、そこだ。
「どれだけ女性が男装しても、女性はただ一つ気を使う所がございます。髪です。男にしては大雑把な処理や頭を乱雑に掻いた様子が無い。そして、髪を美しいままに保ち続けたい。それが女性特有の特徴なりますれば」
うん、嘘は言ってないよ?ゴーレムから見たら、ほんのり大きいお胸を押さえてるサラシのようなものが、服の上からで分かる訳じゃ無いよ?ホントダヨ?
「お見事です。私は正確には王妃、本物の王は病床に伏せております。私の名はトワと申します」
うん、でも、見破っても、それって身分が全く変わらないって事だよね……?おぉ、無い筈の胃が痛い。何があるんだろうか?
「実はチャキ殿に依頼がありまして……」
「少し、お待ちいただきたい。エンデ殿、よろしいか?」
「何でしょう?」
ジーク殿改め、トワ殿の依頼を話される前にこれだけは聞いておかねばならない。
「私はまだギルド員ではない。そして、依頼は受ける受けないは強制であるのか?」
「そうですね、まず基本依頼というものは受ける、受けないは本人の自由意思に任されます」
「基本ではあるな」
「そして、チャキ殿がもしお望みなら即ギルドカードを作ってもいいと私は思っております。もちろん、無料で」
自分が初日ギルドでカードという身分の証明になる物を作らなかったのは多少の金が必要だったからだ。金策をしたら、入るつもりだったが、その方針が思い浮かばない現状を考えると、この申し出は渡りに船と言ったところか。
「壁に張られていた説明を見たが、入りたては最低ランク。こちらは王妃様だが、受けても良いのだろうか?」
ほう?と行った感じでトワ殿が感心された顔、エンデ殿とシャルロット殿は驚いていた。まあ、おそらく、多分、きっと、エンデ殿辺りがその対策をしない訳が無いと確信していたので、心配は無かったが、それでも聞いておくべき事項だろう。信用、大事。
「確かに、依頼としては高ランクになります。ですが、依頼人には依頼人で指名出来る権利があるのです。今回は王妃様のお願いという事で特例としてという事になっております」
「分かりました。改めて、ギルドカードをお願いした上で、その御依頼についてお聞きしたく」
これは、まあ、いわゆる囲い込みに近いだろうが、依頼を受けずという選択肢は無い……という事だろう。実際、受けずにいると、金策できるカードは出来るが、信用はガクンと落ちるぞ、と暗に言われてる気がする。いや、間違いないだろう。
「はい、改めまして、依頼は城にて王と私にそちらのシャルロット殿にしたようなもてなしをお願いしたいのです」
ある程度予想はついていたが、やはりという確信もあった。おそらく、シャルロット殿に持たせた茶菓子が渡った……と見てもいいだろう。
「ふむ。私はいつでも御用意出来ます。王が病床とあらば、城の中で?後、王は歩けますか?」
庵を庭で建てるか、王の部屋を一時的な安全地帯として、茶室作成を起動させるかで結構変わるだろう。実際試してはいないが、茶道は庵が無い庭でも出来たはずだから、応用は効く……と思いたい。
「まあ!是非、お願いいたします!王は歩く程度なら出来ると思いますわ。病気とは言っても、無気力から来るもののようですので」
「では、早速参りましょう」
無気力、なるほど。そういう状態か。となれば…・…城に行く馬車が用意されてる中で、色々準備する物を想像するのだった。
「茶室作成、使用」
あれ?庵、少し大きい、大きくない?いつもの小屋のような大きさから小さい家のような大きさになっていた。色々、想像したから……だろうか?
「どうぞ」
カラカラと動く引き戸を開け、エンデ殿、トワ殿、そして、本物のジーク王を招き入れる。白い髪にやせ細ってはいるが、気力が充実していた頃はさぞ精悍だったであろう面影が残る男性だった。
「茶道、使用」
今回はとある茶菓子に、王が座る座椅子に女性二人が座る座布団を用意する。そして、室内に鹿威しを用意する。水の問題などがあったが小さな庭があるのでそちらについているようだ。便利だね、茶室作成!
「ほう、これは……」
王妃とエンデ殿の手を借りて座椅子に座ったジーク殿が感心している。少し前まで、歩くのも苦しそうだったが、鹿威しの音がカコ-ンと響く度に少しづつ安らいでいく。
「この音も味わう一つなのだな」
「然様です。お湯が沸く音、鹿威しの音、茶を点てる音を楽しめるのが茶道の楽しみの一つでもございますれば」
「うむ、うむ!」
「あなた……」
トワ殿が驚きの声を上げる。おそらく、どんなに贅沢な事をしても、王には響かなかったのだろう。おそらく、それは当たり前だ。刺激有る事が誰からも提示されなければ、気力を上げる方法など思いつかないだろう。今、この世界に満るのは終焉に向かう絶望と無気力だ。その様な状態で、刺激ある事を提示せよ!等は無理な話だろう。
「それでは、茶を点てる前に、本日の茶菓子でございます」
菓子箱を開ける。すると3名から感嘆の声が漏れる。まあ、無理もない。実際、こんな茶菓子は早々みられないだろう。
「葛餅でございます。周りは葛粉と言う粉で作った皮、真ん中の茶色いのはおそらく、エンデ殿から食べたであろう最中に入ってた餡とは違う漉し餡と言うのを丸めた物でございます。一緒に出す木で作った小さなヘラで切って、食べる部分を刺してお食べ下さい」
「これは、また見事な物であるな!外の透明でプルプル震える部分が驚きと清涼さを演出しておる!」
「ええ、食べるのが勿体ない気がしますわ、あなた」
「しかし、食べてみたいとも思いますね。おぉ!ヘラからでも分かるプルプルした重み……では…」
3人が楽しんでくれているようでなにより。そして、自分は沸いた湯で茶を点てる。今回は少し苦みが多くても構わないだろう。匙で2~3杯を調整しながら入れて、茶筅で混ぜる。
「「「っ!!!!!!!」」」
まあ、茶菓子が美味いか不味いかはもう3人の顔を見れば分かる。陶然としているが、次の一口を食べるべく少しづつ切っている。
「これはツルリとしたこの外側が中の下手すればくどくなる餡を和らげる役目でもあるのだな!」
「それだけではなく、外側も淡い味付けをしてあるのですね。外側だけ食べなければ気付きませんね、コレは!」
「何より、チュルンッ!と入る感触が新しいです。こんなお菓子があるとは……最中もそうでしたが、コレは素晴らしい」
おっとと、このままだと茶を飲む前に茶菓子が無くなってしまう。茶菓子は茶と合わせてこそだからね。まだ菓子箱に何個かあるが、まずは合わせてほしいのが茶を点てた人の楽しみでもあるのだから。
「お待ちを、茶菓子ですから、是非、こちらの茶とお合わせ下さい」
それぞれの前に茶を置いていく。本来ならここで受け取り、茶器を回すなどの作法があるのだが、別の世界だし、もっと味わいたいって顔してるからいいかな……と。むしろ、飲む以外の作法を教えたら、茶は冷めるし、時間も取るので、抗議が来るだろうから。
「これがシャルロットも飲んだという抹茶……ですね?んっ…………コ、コレは苦いですね?」
「はい、シャルロット殿に出した時より、苦みが感じられると思いますが、茶菓子とお合わせ下さい」
そう理由を話すと、エンデ殿は少なくなりつつある茶菓子を頬張る。それを固唾を飲んで見守る王と王妃。まあ、苦いと聞いたら、躊躇するのも分かる。
「こ、これは!なるほど、苦みがサラリと流されていきますね。そして、その中にある甘みも感じられます!」
「うむぅ!これは驚きだ!茶だけでは苦いだけの所を菓子が補っておる!」
「ええ。これは驚きです。苦みある茶がたちまち、美味しく感じられるようになっています。とても不思議です」
エンデさんが顔を緩めて食べ始めると、残りの二人も感想を言ってくれる。うむ、茶を馳走した冥利に尽きるというものだ。そして、自分は当たり前の返事しか来ないであろう質問をする。
「お茶と茶菓子のお代わりはいかがでしょう?」
『頂きます!』
3人が揃ってハモったのは言うまで無い。
「至福であった」
「ええ、あなた。あんな顔をして興奮した貴方は魔王が居た頃以来よ」
「そうだな。あの時は大変だった。大変ではあったが最も充実していた時代であった」
「ええ、私達は忘れていたのですね……」
「ああ、魔王が勇者に倒され、勇者が去り、その頃の情熱を忘れ過ぎていたかもしれん」
「あの不思議なゴーレムは本当に神の使いかもしれませんね」
「ああ、丁度良い。この残っていた茶菓子を子供達を呼んで振る舞おうではないか」
「まあ、良いアイデアです!でも………」
「勿論、今から二人で晩酌する分は残しておくとも」
「まあ、悪いお方……でも、その悪い方策に乗ってしまいましょう」
「トワ……」
「ジーク……」
「………どうしようかな、コレ?」
庵の中で悩む。貰った報酬は金貨千枚。貨幣制度についてはある程度は聞いたりしていたので、これは相当に破格で悩むところである。これで、宿を借りたり、買い食いして調査も出来るのだが、貰いすぎてるかな?と思う。いや、実際に貰い過ぎなのだろう。そう思い、話はしたが、相応の報酬と王と王妃、しかも、ギルドの長であるエンデ殿から言われては受け取るしかないだろう。まあ、追々使い道考えればいいか……
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