上 下
18 / 22
3章 では、再生を始めよう。お茶で!

閑話 必要な物を揃えましょう!

しおりを挟む
「必要なものとな?」

「正確にはですね」

そう、自分は茶室作成のスキルで出せるが、広めるにはありとあらゆる物が意味が無い、また、それを作る職人も居なくては広めるに辺り、話にならないのである。

「例えばこれです」

そう言って、茶室作成で出現する茶器を見せる。

「自分のスキルを使えばこれは出せます。しかし、私以外が教える場合はどうでしょうか?」

「なるほどな……」

要するにだ、自分と同じスキルに目覚める人間が居ない!とは確実には言えないが、広めるならば、教える人は多い方が良い。だが、その人全員がスキルとして茶器を産みだす事が出来るか?と言われると限りなくゼロに近いだろう。
ならば、作れる方が良いに決まっている。着物はうちの店員が教える事は出来るが、茶器や茶室を作る職人は必須とも言える存在になるだろう。

「時間がかかりそうですね」

王妃やその場に居る人が苦い顔をするが、元々、茶道は一日して成らずと言っても良い。自分は茶道を広める人間を指導しなければいけないし、茶室の庵を作るにしても魔法だけでの建設は難しい、その上で、茶道を広めるルートも開拓しなければならない。はっきり言えば、1年とか2年ではなく、大変長い期間を自分は想定している。

「広めるという事はそういう事です。そうですね……自分は短くても5年以上は想定しております。これが一番早く見積もっての想定かと…」

まずは指導員を増やす、これは急務であり、自分でも例えば、5人に茶道を完全に教えるまで1年近くはかかるだろう。更にその指導員が教えていき、適正な人数とも言えるまで早くて3年と言う所か?また、その指導員の下の弟子達が広めるまで1年以上かかるだろう。
また、茶室についても、この世界の建築技術とは体系がそもそも違う。土の魔法などで即出来ない所も大きい。更に言えば、庵を1つの国に1つとかあり得ない訳で……様々な所に注文等が殺到するだろう。

「長い……な」

王が言われるように長くはあるが、これでも短く見積もっているのだ。世界に広めるなら、5年どころか10年20年単位の時間が必要になる。ここまで短く見積もれるのは魔法やギルド等がある所が大きい。また、自分に王族の伝手が多い所も大きいだろう。

「はい。そこで人員です。ギルドを通すのは勿論ですが、王の名の下に広める必要性があります」

「と言うと?」

「ぶっちゃけてしまうと、自分は確かにこの国では信頼に足る人間でしょう。しかし、茶道が広まっていない他国にしてはどうでしょう?」

「そういう事か」

確かに自分はこの国では名を馳せている。しかし、から見たらどうだろう?習うに値するか?答えは否である。
自分はまだ、この世界に来て、茶道を始めて1年も満たない若造のようなものである。確かに、無気力を治したなど手柄は多いが、魔王国など以外の他国に名は馳せているか?と聞かれると否としか言い様が無いのである。

「どのような人員が欲しい?」

「はい。様々な分野が欲しいですが、まずは茶器を作る……土を使っての器を作る人員が欲しいですね」

土魔法ならあっという間………と行かないのが茶器である。ぶっちゃけ話、すでにそこは試行済みである。常連である賢者殿や造詣に深いギルドマスターにも試してもらったのだが……まず、大変イメージが難しいらしい、賢者殿曰く……

『外見は同じでも中が空洞だったり、この器は焼きが入っている。そこの再現は土魔法だけでは難しい。だからと言って、火と土の2属性でいけるかと言われてもノー。それ以外にも何か塗ったりしている、この鮮やかさの再現も上手くいかない。魔法使うより、作れる職人を育てた方が早い』

とのことだ。簡単には行かないもんだね。その辺りも王に説明する。あ、ついでにこれも話しておかないとな。

「そして、土ですね」

「土?そこら辺のじゃ駄目か?」

「絶対に駄目とは言いませんが、器に向く土と言うのもありますし、全世界で共通の土が取れるとは限りませんので、地質調査も行って頂きたく」

「良かろう、地質調査は冒険者ギルドに、各職人に関しては商人ギルドに権限を渡しておく。並びに、アサシンギルドには各国への繋ぎを依頼する」

結構大きな動きになってきたが、まさに狙い通り!である。と言うか、今のままでは世界に茶道を広めるなど不可能!と言うのが自分の考えである。やっと、こつこつ行ってきた結果、茶道に興味を持ってもらえはしたが、世界は広い。その上、様々な用意はやはり個人では難しいのだ。
そこで、今の店の拡張などよりも王を刺激し、各国と繋ぎを作る他、職人や指導員を斡旋してもらう方向にした。勿論、自分自身も行動を移すつもりではある。

「話は聞きました!」

バンと扉が開かれ、入って来たのは魔王国の女王様ではありませんか……ん?なんで居るの?と思ったら、口の端に餡子のようなものが付いている。ああ、また、お忍びで来たのね。魔法、ベンリダナー……ていうか、同盟組んだとはいえ、茶菓子食う為だけに週5も来て、魔王国大丈夫なんだろうか?いや、大丈夫と思っておきたい。

「割と色々ツッコミ入れたいが……エリザベータ殿、その良き考えとは?」

をこの場で提案いたします!」

………………………………は?はい?
しおりを挟む

処理中です...