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第三章

異世界“ランカナ”

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 「この世界の名は“ランカナ”。我らが偉大なる神、ドルイセン様によって創られた世界。ですが、世界の名を知るのは神と我らのみ。よって忘れて下さって結構です」

 ……まぁ、そうだよね。
 私だって元の世界の名前なんか知らないし。

 “地球”は星の名前だし、太陽系も銀河の名前も“世界の名前”じゃない。

 だけど宇宙科学の一説に、私達が住むこの宇宙の外にはまた別の宇宙があると言う話があるように。

 神様や世界って、実は色々あって、だから神様たちで呼び合う通名という位置づけの名前が“ランカナ”であるらしい。

 「そして、地上には人間、魔族、獣人、エルフ、ドワーフなど、あらゆる種族が存在し、数多の国を作り、時と共に栄枯盛衰を繰り返しています」

 うん、魔族以降の人種(?)が存在する事以外は地球と変わらない。

 「我ら上位精霊はそんな存在とは異なる時を存在するモノ。故に、地上の国の盛衰に興味は無く、ましてや政情など気にかける事もありません。我らの管轄はこの世界の自然の管理ですから」

 しかし、と、フィーネはオルカに目をやった。

 「世界の大いなる自然の流れを管理する我ら上位精霊と異なり、人の身近に存在する妖精や下位精霊は、稀に人と契約する事があるのです」

 この世界では、誰でも魔力を持っているそうだ。人族でも、獣人でもドワーフでも。
 その基礎絶対寮には大いに差はあれど。

 「貴女が生活魔法と呼んだ、基礎魔術は、飲水を出したり種火にしたりする以外にも色々あるのですが……」

 洗濯物や、洗髪後の濡れた髪を乾かす風魔法や、暗い所で明かりを灯す光魔法、畑の作物を枯れにくくする緑魔法等。
 これらは誰でも使えて当たり前の魔法だそうだ。

 「しかし、人や獣を攻撃出来る様な大掛かりな魔法は、妖精、もしくは精霊と契約した精霊魔法師と、魔族だけです」

 そして。

 「今ある国々は、大半の国で争い合い、自然を破壊し、それによって貧困をもたらし、それを解消するべくさらに争い合う。そんな悪循環を繰り返しているのです」

 わーお。
 ……召喚された先の国がヤバい国だった、というネタも最近では良くあるけど。その場合も隣国とか近隣国はマトモで、そこに助けられて……ってなるのがセオリーのはずなのに!

 ……え、世界ごとヤバいの?

 やっぱり詰んでませんかね、神様?

 「それでも。地上の政情に神は手を出してはならない。これはこの世界のみならず、神の世界での決まり事の様で……」

 結果、いくつの国が滅ぼうと神の知ったこっちゃない、と。
 まぁ、それは良い。

 「しかし、今回神の介入も致し方無し、とされる様なことが起きました」

 うん。それ、多分私の事だよね……?
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