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第十章

島巡りクルーズ開始

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 勇者という頼もしい前衛を加え、ダンジョン攻略は一気に加速した。

 結果、勇者加入から一月でダンジョンクリアに成功したのだった。

 「まぁ、まだ比較的若くて浅いダンジョンだったしな」
 ……とはアルトの言である。

 「初心者のカナデに無茶言いすぎだろ、鬼軍曹だって真っ青な鬼畜ぶりだぞ、この暗殺者……」
 勇者ルイスはげんなりしていたけど。

 お陰で四艘目を戦艦にまで進化させることに成功し。

 フェリーに潜水艦、クルーザーに戦艦と。

 「一応幻覚の偽装じゃなく一艘くらいは帆船持っとくべきかなぁ……」

 そんなことを考えつつ、しかしもう一つ考えなければならない事があった。

 「ダンジョンのお陰で一通りの装備は整ったし、最低限戦う術は身につけたと思うの。路銀もね。
 後は女帝様から司令とやらが来るまで海の真ん中でのんびりするのも悪くないけど、流石に飽きそうだし。
 何か良い案は無いかしら?」

 「……戦うすべを得たと言ってもあくまでモンスター相手だろう? ここは海賊退治で海の治安向上に貢献するのはどうだ?」

 「相変わらず鬼畜な提案すんなぁ……。
 俺はあちこち小さな港を回るのがいいと思うぜ。
 最低限の食料は寄港しなくても問題ないようだが、やっぱ買い物はしたいだろう? 
 顔なじみの港を幾つか持つのもアリじゃないか?」

 「では、船旅をしつつもしも面倒そうな輩に絡まれたら応戦する、というので良いのでは?」

 ――と、話はまとまり。

 港に入港するためだけの帆船を手に入れ。

 母船はフェリーのまま、大海原へと出航した。

 あいにく、天気は出航してすぐに悪化。

 久々に嵐のど真ん中に停泊している、

 「嘘だろ、マジかよ……。こんな嵐に遭遇したら、下っ端水夫は死を覚悟するレベルだってのに、大して揺れもしないとか……」

 またしても納得のいかないルイスがぶつくさ言ってるけど。

 私はもう慣れたもので、ゆっくり大浴場の湯船に浸かり、汗を流した湯上がりにお酒とおつまみを嗜んで満足していた。

 暇だし、何か映画でも観るかな……

 なんて。

 この時までは平和だったんだけどね……。

 まさかまだ一つも港を回らないうちからアルトの提案が実現するとは――

 まして二人目の追手が現れるなんて思ってもみなかったから。

 私は飲みかけの酒と食べかけのツマミを持って一人シアターへと籠もった。

 一応アルトたちも誘ったけど断られたんでね。

 さぁて、何見るかなぁー。あー、最近可愛くないモンスターばっかり見てたしたまにはもふもふ可愛いの見たいなぁ。

 よし、動物モノにしよっ!
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