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第十五章

女帝からのお手紙

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 人が増え、子供が増えて、プレイルームがより賑やかになった。

 ドワーフの奥様方と、人間の難民たちの奥様方、意外に上手くやっていた。

 「ずっと怖いものだって教えられてきたけど……そんな事ないもんねぇ」
 「ドワーフの奥様たちはちょっと無口だけど、皆力持ちだし器用で羨ましいわぁ」
 「ふふふ、私達お喋りはあんまり得意じゃないんだけど、お話聞いてる分には楽しいから」

 と、割と仲良くやってくれてて何よりです。

 「ほらほら、ホコリだらけじゃないの、ちょっとどいて、掃除しちゃうから!」
 「その臭い服脱ぎな! 洗濯してやるよ!」

 不摂生しがちな独り者の研究者達の家事も担ってくれて、不潔な格好する輩が居なくなりました。
 ありがとう、オバチャン達。

 そんな中、奴は降り立った。……見覚えのありすぎる鳥が。

 「女帝はなんて?」

 あれからまだそう時間も経っていないのにね。

 「……召喚関連の仕事で手を貸してほしいらしい。先日の事については改めて侘びたいと」

 「――詫びは置いとくとして。今度は何処だって?」

 この問いに答える前に、アルトは舞の顔をちらりと見た。

 「……まさか」
 「その、まさかだ。神国が次のターゲットだ」

 「そんな!」

 また……面倒臭そうな国を指定されたもんだ。

 「だからこそこちらにお鉢が回ってくるんだろう。楽な案件なら国の組織でどうにかしてるさ」

 ……ですよねー!

 しかし、ターゲットと言われた舞は顔色を悪くしていた。

 「舞……」

 勇者が気遣っているけど……。

 勇者と賢者はともかく、舞に関してはまだ全面的には信頼出来ていない。 

 関係者の協力があれば仕事も楽に終わるけど、敵方と通じられては上手く行くものもいかなくなる。

 しかし、本船に待機させても……扉作っちゃったからなぁ……。

 扉をは便利だけどこういう時に困るとは思わなかった。
 最悪彼女を軟禁する事も考えないとかなぁ……。

 早速帆船を向かわせつつ本船でのんびり過ごしつつ頭を働かせる。

 農家のおばちゃんたちの手作りパンを、もぐもぐしつつ、
 ……最近の船の流行りなんだよ、手作りパン。

 レストランのパンには及ばないものの、売店の菓子パン惣菜パンより美味しいと評判なんだ。
 実際、小麦と基本的な材料しか使ってないから素朴な味になる。
 それが逆に良いと言うか……。

 朝ごはんの主食にするにはこれが合うんだよね。

 ……なんて。
 明確な答えが出ないまま。

 帆船はかの国のシルエットが見える所まで近づいていた。

 舞は未だうじうじと部屋にこもっている。

 ……いい加減、答えを出す時だろう。
 私は覚悟を決め、皆を集めた。
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